序章
これから、始まります。
“死にたくない”“死にたくない”“死にたくない”“死にたくない”“死にたくない”
一直線に切り添えられた前髪、とっても可愛い容姿、線の細い身体つきの高校1年生、桃崎翔。
“アイツ”は泣きながら火の着いた煙草を投げた。
撒かれたガソリンに引火、たちまち炎は家全体に広がり、翔を家族を包み込む。
燃え上がる業火に身を焼かれ、死が間近に迫った時、翔は思った、強く思い、強く願った。
“死にたくない”と、ただそれだけを。
ハッと翔が気が付くと、今までいたはずの燃え上がる家の中ではなく、荒涼とした大地のど真ん中にいた。
物心着く前から住んでいた家も無ければ慣れ親しんだ町も無く、代わりに広がるのは見たこともない風景。
「父さんは母さんは友香は」
何故、ここは何処と疑問を持つよりも、家族のことに思いがいたる。どこにも父親の姿も母親の姿も妹の姿も見当たらない。
次に自分の体が無傷なことに気が付く、体のどこにも火傷の跡もなければ痛みもない、ところどころ、焼け焦げたパジャマが炎の中にいたことを教えてくれる。
「どうして、僕は死んだんじゃないの……」
でも生きている、ピンピンしている。
周囲を見渡し、もしかしたら死後の世界なのかと思い始めた時、下卑た笑い声が聞こえてきた。
某世紀末を舞台にした漫画、もう世紀末は過ぎてしまったけど、その漫画に出てくる雑魚敵のような男2人に取り囲まれる。
「可愛い女の子がいるぜ」
「俺たちと楽しいことしようぜ」
いやらしさ丸出しで舌なめずり。
「うん?」
1人が敗れた翔のパジャマに気が付く、そこにあるのは平らな胸。
「何だよ、こいつ、男じゃねぇか」
「まぁ、これだけ可愛けりゃ、男でもいいか」
近づいてくる男たち、身の危険を感じた翔は、とっさに近くにあった石を拾い上げ、投げた。
「うげぇ!」
石はクリーンヒット、抑えた男の額から流れ落ちる血。
「このガキがぁぁっ!」
流れ落ちた血とは別の血が男の頭に上り、剣を抜く。
逃げる間なんか無かった、右肩から脇まで切り裂かれ、炎とは違った熱い痛みと吹き出す血を感じながら、翔は思った。
『やっぱり、僕は死ぬんだ……』
それでも“死にたくない”と強く思った……。
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