表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/23

閑話~最高の景色~

 今日は学校も聖女としての訓練も無い、久しぶりの完全なお休みの日。目覚めると目の前には愛しきリリー様の寝顔。


 それをみただけで今日が幸せな1日になると確信してしまう。


 まだ眠っているリリー様に美味しい朝食を用意するために先にベッドから抜け出す。ちょっとだけ名残惜しいけどまた夜になれば一緒に眠れるのだから今は我慢。


 今日のメニューは何にしようかなと考えながら買い置きの食パンを焼き始める。両面が綺麗なきつね色になるように気を配ることは忘れない。


 やっぱり朝ごはんといえば目玉焼きかなと思ったので、卵を焼き始める。下にベーコンも敷いた方が食べがいがあって良いと思ったのでベーコンも一緒に焼いておく。


 あとは飲み物。今日はとにかく基本的に行こうと思ったのでコーヒーを用意する。砂糖とミルクも出しておくけど、リリー様は何時もコーヒーはブラックで飲んでいるし多分使わないと思う。


 食卓に綺麗に焼けたパンとベーコンエッグ、そしてコーヒを並べると、なんて理想的な朝ごはんなんだろう。


 匂いに釣られたのか眠そうな目を擦りながらリリー様が起きてくる。


 リリー様はあんまり朝が強くないので、何時もの凛々しさはなくぼーっとしており可愛らしい一面が顔をのぞかせる。


 リリー様のこんな姿を知っている人はどれだけ居るのだろう。数は少ないはずだし、私ほど多くこんなリリー様を見ている人もいないだろう。


 ずっと眺めていても癒されるしいいのだけど、それではリリー様がしっかり起きてくれるまでに朝食が冷めてしまうので、お湯に浸したタオルを洗面所で作って持っていく。


 手渡されたタオルを使って顔を拭き出すとしっかり目が覚めたのか、何時ものリリー様の表情になっていた。


「おはようマリー。」


「おはようございます、リリー様。」


 朝の挨拶を済ませたら、タオルを洗面台に置いてきて、ようやく朝ごはんの時間。


 2人で対面して席につき、私はコーヒーに砂糖とミルクを入れ始め、リリー様は焼いたパンに齧り付く。


 2人で一緒にご飯を食べながら今日の予定を話し合う。


「リリー様。リリー様は今日何か予定はありますか。」


「いや、特には何もないですね。マリーは?」


「なんと!珍しく私も何も予定が無いんです!なので良かったらお弁当作るのでピクニックに行きませんか?あ、勿論外壁から出ない範囲で。」


 聖女である私は王都から外に出ることは出来ない。私が王都から出てしまえば王都を守る加護は外れてしまう。


 だからこそ王都の中で私は自由に生きれるのだ。


 不自由を強制させられる代わりに籠の中の自由を得ることができる。私が、リリー様と居られるのもそのおかげであるから文句も言えないけれど、リリー様と一緒に出かけることの出来る範囲が減ってしまうのはやっぱり残念。


「わかりました。それじゃあお昼は外にいって食べましょうか。」


 にっこり笑ってこちらを見るリリー様についつい見惚れてしまうが、そうと決まったならお弁当を作らなければならない。


 2人だけで、それも2人とも多く食べる方でもないので量はそんなに多くなくていい。ご飯を食べることよりも、リリー様と2人っきりでゆっくりすることが大切なのだ。


 簡単にサンドウィッチを作って、飲み物のお茶を用意して、鞄に詰める。


 行きたいところが少しだけ遠いので時間は早いけどいざ出発。


 リリー様と一緒に学園の寮を出て市街地の方へ向かう。2人で並んで歩くのはいつだって楽しい。こうして手を繋いで2人の仲を見せ付けながら歩くと、多くの人は祝福してくれる。私が聖女だからというのもあるけれど、やっぱり私とのリリー様はお似合いのカップルなのだろう。というかそう思いたい。


 訝しむような目で見てくる人も居るけれどそんなものは気にならない。何故なら私は自由な聖女だから!


 ルンルン気分で歩いていると、市場の中に入り込んだようで辺りにお店が立ち並ぶ。美味しそうなお肉の焼ける匂いやあまーいスポンジケーキのいい匂いが漂ってくるから思わずお腹がなってしまう。


 慌てて空いている手でお腹を抑えるけれど、やっぱりリリー様には聞こえてしまっていたようで、ぷっと少し吹き出している様子が見えた。


ぐいっとリリー様が手を引っ張ると向かった先はさっきのいい匂いのする串焼き肉の出店。


「すみません、2ついただけますか?」


 リリー様は串焼き肉をふたつ買うと、1本を私に押し付けてくる。


「まだお昼までは時間もありますし、もう少し歩くことになるんですから。ここで食べてもお昼を食べられないなんてことはありませんよ。」


「そうですね。」


 せっかく買ってもらったのに食べないなんて選択肢はない。小腹がすいてしまっているのも事実だし。


 さて、串焼きは美味しかったし、お腹も少し満たされたので、改めて目的地に向けて歩く。


 場所は教会の運営する共同墓地。


 長い階段を歩いている丘を登っていくと、墓地とは思えないほどに綺麗に清掃された墓達が現れる。その横にある小さな広場。かなり高い位置にあるこの広場からは城下町が一望出来てとても良い景色なのだ。


 私が聖女となって初めて知ったこの景色。何度かリリー様と2人で見に来ているけれど、何度来てもここは私のお気に入りの場所だ。


そして改めて、リリー様に私と結婚して欲しいとプロポーズし、了承をもらった場所。


 いつまでも、ここから見える風景が平和であることが、きっと私の幸せなんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ