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軽口ひとつで、人は死ぬ  作者: みやび68


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5/5

5話

最初は、ただのからかいだと思っていた⋯


「お前、足遅くね?」


そんな一言から始まった。


自分に向けられる笑い声。

それが、日に日に増えていった。

どこにいても、笑い声が聞こえてくる。

それでも、笑われるだけならまだ良かったのに⋯


「ウザい」「キモい」

日々向けられる笑い声と言葉。

まだ耐えられる⋯


落書きされた机や教科書。

破られたノートや体操着。

靴に入れられた画鋲。

大丈夫、まだ耐えられる⋯


「早く死ねよ」「まだ生きてんの?」

笑い声と心無い言葉。

自分の中で何かが壊れた⋯

もう、限界だった⋯


翌日から、学校に行けなくなった。

外にも出られなくなった。

一日中布団に潜り込む。

笑うことも、声を出すこともない。

僕の心は、殺された⋯




「おはよう。今夜、時間ある?」

「おう、おはよう!お前から誘うなんて珍しいな?」

「お前だけに聞かせたい話があって⋯」

「俺だけに?何だよ、気になるじゃん!」

「ここじゃ話しにくいから⋯詳しい時間と場所は、後でメールする。」

「わかった!じゃあ、また後でな!」


仕事終わり、僕は同僚を路地裏に呼び出した。


「お待たせ!で、話って何だよ?」

「⋯お前、恨まれるような事してないって⋯言ってたよね?」

「ああ、言ったけど⋯それがどうした?」

「⋯本当か?」

「何が言いたいんだよ?」

「⋯わからないんだな⋯」

「わからないって、何が⋯」

「お前が俺にしたことだよ⋯」

「は!?俺がお前に何したって?っていうか⋯お前、いつもと雰囲気違わねぇ?」

「⋯お前のせいだろ⋯」

「俺のせい?⋯お前、さっきから何言って⋯」

「学生時代、同じクラスに不登校になったやつ⋯いなかったか?」

「⋯それが何だよ?不登校なんて、珍しくないだろ?」

「不登校の原因は?」

「⋯そんなの、知らねぇよ⋯」

「お前が⋯イジメたからだろ?」

「は!?イジメ!?俺が!?」

「⋯足が遅いって、笑っただろ?」

「そんなの⋯イジメじゃねぇだろ?単なる軽口じゃん」

「お前にとっては、軽口だったんだろうな⋯でも、それで周りが笑い出した⋯」

「⋯そんなの、周りのやつらが悪いんだろ!?」

「本当に、そうか?悪くないと?」

「悪くないだろ!?」

「じゃあ、何で止めなかった?自分の軽口がキッカケで、イジメが激しくなったのに⋯」

「っ⋯!⋯それは⋯」

「理由なんて、どうでもいい⋯お前の軽口がキッカケだった⋯それが事実だ」

「っ⋯お前、まさか⋯?」

「⋯やっと気付いたのか?」

「でも、あいつは⋯人付き合いが下手で⋯」

「あの時、俺は死んだんだよ⋯お前に、殺された。」

「は!?殺した!?イジメただけだろ!?」

「⋯そうだ、お前にとっては⋯それだけだ⋯でも、俺にとっては⋯」


静かに、隠していた鎌を手に取る。


「っ⋯!?な、何だよ⋯それ⋯」

「⋯お前で最後だ⋯」

「⋯最後?まさか⋯!」


何も言わず、鎌を振り上げた。

静まり返った路地裏⋯


「⋯終わった」


俺は、その場に崩れ落ちる。


ただ、普通に暮らしたいだけだった⋯

なのに⋯どうして⋯

普通じゃなくなったんだろう⋯


今では、どうでもいいことだ。


次は、普通に生きられたらいい⋯

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