短編エピソード8『ゴンちゃんの好みはクラシック?』
短編エピソード8『ゴンちゃんの好みはクラシック?』
「ゴンちゃんって、音楽とか聴いたりするのかな」
日曜の午後、美沙がふとそんなことを言った。窓の外では風がそよそよと木々を揺らしていて、部屋の中はゆったりした空気に包まれていた。
「どうだろうな。でもテレビの動物番組には反応するし、音にも敏感なのかも」
信吾はそう言いながら、スマホで音楽アプリを開いた。
「じゃあ、ちょっと試してみるか。……まずは、J-POP!」
アップテンポの曲が部屋に流れる。ノリのいいリズムに合わせて、美沙が少し肩を揺らす。ゴンちゃんは……ソファの上で、じーっとしている。無表情。
「……あんまり刺さらなかったみたいだね」
「じゃあ次、ロックいってみよう」
ギターの轟音とドラムの重低音。信吾は軽く首を振るが、ゴンちゃんはそっと耳を伏せて、ソファの隅に移動した。
「あ……ごめん、ごめん。ちょっと刺激強かったか」
そして、3曲目。
「じゃあこれはどうだ……クラシック。モーツァルト!」
穏やかで伸びやかな旋律が流れはじめた瞬間──ゴンちゃんの耳がぴくりと動く。次の瞬間、音の方へとゆっくり歩いてきて、スピーカーのそばにちょこんと座った。
「……お?」
「……聴いてる、よね?」
曲が続く間、ゴンちゃんはじっとその場を動かず、目を細めてうっとりとした顔をしていた。
「……ゴンちゃん、クラシック派か」
「渋いな……」
その横顔はどこか、哲学者のようにも見えた。




