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スズの幸せな日

聖女スズの、幸せな1日。

「キョウちゃん、会いに来てくれたの?」


 返事は、無かった。


「母さん?」


 もう15年近く会えていない、大好きなお姉ちゃんに会えた気がして、ずっと塔の中の空を見ていたら、いつの間にか息子たちが私の後ろに来ていた。


「今ね……、幸せな幻を見たよ。」


 息子と、息子の一番の理解者である幼馴染は、まるで兄弟のようにいっつもくっついている。


 その距離は、普通の兄弟よりずっと近いかもしれない。


 息子は、ボーッとしていた私を心配してくれている顔をしてるし、息子の理解者兼、息子の唯一の騎士であるマッスーは、朗らかに笑ってくれていた。


 二人共、全くタイプが違うのに、ずっと仲良く育ってくれてとても嬉しい。


「スズさんが幸せだと思える幻なんて、嬉しいこともあるねぇ。どんな幻だったか教えてもらってもい―い?」


 どこまでも優しい話し方のマッスーに、どうやって今見たことを伝えようかなと少し迷った。


 私は、お姉ちゃんと違って何かを人に伝えるのが上手じゃない。


 特に、さっき見たことは夢みたいな一瞬の出来事だった。


 でも、言わなかったら言わなかったで息子達が心配することもわかっていたから、あったことをそのまま話すことにする。


「キョウちゃんがね、会いに来てくれた気がしたの。あそこに、キョウちゃんとそっくりな女の人が浮いてた気がして。」


 私が指を指すところは、何も無い空中で、自分で言っていて現実味がないなと思った。


 それに、キョウちゃんと目の色が違った。まるで、キョウちゃんの娘が会いに来てくれたような………。


 でも、もしそうなら、挨拶も無かったし……


 嫌われてるとか、もっと悲しいことになりそうで、考えることをやめた。


 私は、幸せじゃないといけない。


「幻でもね、幸せだったの。キョウちゃんは人類だから、パって…消えないと、思うし。」


「“会える前触れ”とかかもねぇ?」


 だったらいいなと思う。ありがとうの気持ちを込めてマッスーを見た。マッスーはお世辞じゃなく、ほんとに優しく私を見てくれていた。


 マッスーは、マッスーのお父さんそっくりでとても背が高い。知っていたはずなのに、大きくなったなぁと今更すごく実感した。


「きっと、ホントのお姉さんだったら会いたかったって抱きしめてくれるよぉ。」


 マッスーの優しすぎる言葉に、本当に?という考えも消そうと必死になった。  


 あの幻を見れただけで、昨日より絶対幸せなはずだ。昨日の私だったら羨ましい!って叫ぶほど。


「やっぱり私は、世界一幸せものやね。」


 それなのに、私が“幸せを感じている間は使える”と言われている不思議な力は、手をかざしても、願っても、でてこなかった。


 息子たちが赤ちゃんだったときは、ちゃんとでていたのに。


「なのに、今日も力は使えないなぁ。」


「俺が、全部受け継いだだけや。」


 16歳になる息子は、私と違って夫の故郷の方言で話すからもあるけど、どんどん夫に似てきた気がする。


「俺が、全人類守るから。」


 頼もしいと思うけど、少しだけさみしい。


「コルトキノス、大きくなったね。」


 大好きなお姉ちゃんに守ってもらった、私達の命。


 私と違って、とっても強かったキョウちゃん。


 そんなキョウちゃんみたいな強い子にと思って、キョウちゃんが昔話してくれた物語に出てくる、大きなカニの名前を可愛くアレンジしてつけた。


 最初は長いかな?と思ったけど、今はとっても愛しい。普段は短くコルトって呼ぶけど、それも可愛くて気に入っている。


 私の息子なのに、コルトはキョウちゃんとの共通点がとても多い。ムキムキにはならなかったけど、項にあるホクロも、蟹や海老の甲殻類が好きなとこも、髪質も、目も、とてもよくにてる気がする。


「その、心が強いところも、目も、キョウちゃんとそっくりでかっこいいよ。」


「うん。母さんはなんにも心配いらへんから。」


 髪の色は私に似てて、でも、項あたりの毛は旦那の紫が入っていて、なんだが2色ってかっこいいから羨ましい。


 平和になったら、私もインナーカラーを入れてみようかな。聖女じゃなくなったら、染めてもいい気がする。


 キョウちゃんに見せて、なんて言われるかな。キョウちゃんがびっくりする色にしてみようかな。


 頑張って、良い方へ良い方へと考える。


 何かあって、守られるだけはもう嫌だから。


 息子達の顔を見ると、不思議となんだが頑張れる気がする。


 なんだか、無性にぎゅーってしたくなったのに、コルトはもう16!!とさせてくれなかった。


 お母さんさみしい。


 さっきの子が、キョウちゃんの娘だったらすごく嬉しいな。


 もしそうだったら、今度あったときは絶対思いっきりぎゅーってする。


「コルトがぎゅーってさせてくれないから、マッスーにしよぉ。」


「母さん、マッスーは俺の騎士や。」


「けぇーち。」


 こんな幸せなやり取りを、また家族だけでできる日がくると…信じてる。


 私が、守りきってみせる。


 私は、お母さんなんだから。

スズ 31歳 職業 聖女


好きなモノ (家族 お姉ちゃんの料理 魚介類特にサーモン おつまみ お酒 歌 ゲーム ショッピング 寝ること)

嫌いなモノ (楽しくないこと 字が多い本を読むこと 嫌いな人といること 家族が大切にされないこと なすび しいたけ)


15歳の終わりに妊娠し、そこから人生がガラッと変わってしまった聖女になった女性。


姉と体つきから何から正反対なことが多く、いつも比べられて生きてきたが、姉妹はお互いシスコンと言って過言でないほど大切に想い合っている。

実の親が親と呼べるものではなかったので、姉と姉が拾ってきた幼馴染によって育てられた。

天真爛漫で、誰にでも優しく、暴力的な事が嫌いだが、辛いことや困難を乗り越えるタフさとポジティブさがある。

本人に自覚は薄いがいたずらっ子なところがあり、妊娠もサプライズ報告しよう!くらいに気軽に考えていたので、幼馴染と姉は何度かその性格に振り回された。

魔王の正体も、なぜ自分がバリアと治癒を使えるようになったかも、その力がケイの力であることも知らない。

でも、目が覚めたら世界に魔王が攻めてきていて、お姉ちゃんがどこにいるか分からないから、国一つ全部守っちゃう!くらいにメンタルがパワー系。

根本に、姉は自分の味方で、きっとそばに居てくれているという思いがある。

最近息子が反抗期気味でさみしい。



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