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4日目、戦犯の銃と粗雑な魔物 前半

主人公視点です!


/は会話の途中を中断している時に使ってます!

 15年ぶりの魔物の出現は、全人類を震撼……させなかった。


 情報規制がはられたからだ。


 多くの人がパニックを起こさないためには、必要で正しい判断だったかもしれない。


 でも、全く変わらないわけにはいかなかった。


 テレビでもラジオでも、国からの緊急速報をいつでも聞くことができるように呼びかけ、ほとんどの番組の予定を変更してニュースを流している。


 ニュースの内容は、避難経路の確認と備蓄食料などの見直し、パニックを起こさないための心構えなどだ。


 異常を感じている人も少なくないし、昨日魔物を目撃した人たちの証言だってある程度広まっているから、いつもよりは避難経路の確認などに本気を出してくれると思う。


 でもぶっちゃけ、ちゃんと全人類が避難できる気はしてなかった。


 だから今日は、魔物を3体同時に別々の地区で出現させる予定だ。


 遠くの人だって見えるような巨大な魔物にはする予定だし、出現場所はもう決めてある。


 避難にどのくらいの時間がかかるのかや、避難できなかった人達の特徴を知ることができれば、対策をとれる。


 今後魔物のスピードや数、大きさを決めるためにも重要なデータになるし、避難させるためのAIロボや、けが人を治すための救護テントの数と配置場所なんかも大まかでいいから決めていきたい。


 今日の持ち物はいつにもましてパンパンだった。入らないものはドローンで学校の技科舎屋上へ運ばせてある。


「今日、昼間に国から重大発表あるらしいな。」


 ニケの言葉に、そうだねと短く返す。


 情報規制とは、情報操作でもある。


 “魔物が急に現れた”よりも、“魔物が現れるとこを予測していた”の方が、絶対数全人類の支持度が違ってくる。


 だから今日、国から重大発表として“”聖女が神から授かったお告げの発表“”があると通達されたし、ニュースで何度も繰り返されている。


 全人類見ることをほぼ強制されているので、どの学校や施設も一時授業や業務を止め、見ることが決まっていた。


「イーラって、別に夢でお告げとかあったことねぇよな?」


「無かったし、これからも無いよ。」


 神なんてこの世にいない。


 お告げの内容は、この前俺がしてきた“第二次魔王戦の開幕宣言”でまず間違いない。


 きっと、人類が必ず勝利する確信を持てるように発表されるだろう。


 最初はそれでいい。


 だから今日は、魔物がまたこの国に出現し始めること、魔王の息子が二代目魔王として攻めてくること、


 この2つを、最低でも人類に現実として受け止めさせる事ができれば上出来だ。


 人類は、希望がないと動けない。


 俺達の目標は魔王戦での死者数0だから、生きる希望を捨てられるのは困る。


 魔物や魔王が怖くても、生きるために避難所へ逃げるを習慣化させ、誰でもできるようになってもらう。


「でもなぁ。」


 俺は携帯のマップを起動した。飛び出るホログラムで立体的に見える町並みは今はまだきれいだ。


「今日は絶対に、避難所への誘導員とか足りてないだろうなぁ。」


「技科の奴らが救護施設や仮設テントの案出してても、後回しにされてるんだっけ?」


「そーなんだよ!絶対にもっとっ、あと三年は早く手をつけてたら違った事が山程っ、武器ばっかり補助金とか賞とかもらってて馬鹿だべや!今日直ぐに国がギブさん達の案を実行し始めてもギリッ!本当に今日全人類の避難意識を変えて国を動かす!」


「お前は前から避難誘導できるアンドロイドとプログラム作ってあったろ。今日試しに使えば?」


「国の許可が降りてなくて使えないんだよ。いいけど?今日はまずデータ集めるから。本来アンドロイド使ってデータ取りたかったけどね?データとって改善してを繰り返してこそだからね?」


「今日緊急速報って魔物のことだろうし、ハリーさん来るらしいから直談判すれば?」

 

「直談判は流石にやめとくよ。」


「なんで?」


 流石に魔王から避難経路や避難施設の直談判はできない。


 でも、そんな事はニケには言えないから言葉を濁した。


 気がつけば、もう通学の終盤まできていたのでPCを閉じて前を向く。


 街に植えられている桜達に、葉っぱが目立っていて驚いた。


 ついこの前満開だったのに、今年は本当に暖かいからか桜吹雪が最後と言わんばかりに舞い散っている。


 その桜の花びらが地面に溜まっているところを見て、魔物の砂を思い起こした。


 自分で作っているから、あの砂は安全だとわかっている。


 でも、そうじゃなかったらどれだけ不安だっただろう。


 目に見えない力とは、そういうものだ。


 大切なものがある人こそ怖い。


 人類が、魔族を恐れるのはしょうがない事でもあった。


 だけど、怖いなら怖いから近づかない選択を取らなかったことは腹が立つ。


 人類は、大陸だった頃よく動物を殺していた。


 肉のためのものでないゾウやトラなどは、強さの象徴や、富の証として殺され飾られていた。


 魔族にだって、できていたらしてただろう。


 魔力が身につくわけでも無いのに、殺しても充実感と興奮を覚えられるらしい。


 魔力を宿すると本当に信じて肉を食らうやつが出て当たり前だくらいだと母さん達は言っていた。


 本当に理解できないし、したくもない。


 そんなこと考え付きもしないニケの方が、ずっと強くてかっこいい事を、今回全人類学んでほしい。


「お前なんで眉間にシワ寄ってんの?今日、全学科が魔族の座学やることになったから?」


「あぁ、そんなメッセージも学校からきてたね。魔物の砂より価値のない情報だよ本当。」


「あの砂の事なら、お前が直ぐに成分調べたから安心できたやつ、きっと多かったぞ。」


 どんなに嫌な気分もモヤモヤも、ニケの一言でぶっ飛んでいく。


 やっぱり、ニケはすごいし奇跡的だ。


 ありがとうと言おうとしてニケの方を向くと、予想外にもニケも俺を見ていた。


「お前も、魔石解析とかしたい?」


「いや、俺は人工的に動力を開発するよ。昨日まかみさんの魔物たちはケーブルや電池がなくてあのパワーと馬力を出せてた。よく知ることができれば、本当にバリアを実現できそうなんだ。」


 魔物用の魔石を作るのも、バリアをはるのも、魔力で簡単にできるのに、1から手で作るとなると難しい。


 どうにか動力を確保したいけど、開発は今日明日なんて期間でできそうにはなかった。


「先にニケの靴と避難用アンドロイドを完璧にして、あと…できれば救護を手伝えるアンドロイドも作りたいんだよね。怪我人を運べるようなタイプとか、瓦礫を楽にどかせる感じの。」


「どうせ座学中も“内職”してんだろ?」


 ニケの言う“内職”は、授業とは関係のない作業のことだし、多分図星になるので思わずゔっと唸ってしまう。


「したっけ、ニケや避難シェルターなんかのこと考えてたほうが、絶対に人類の生存率は上がるしょ。真偽の確かじゃない魔族の話なんか聞いたって生産性が無いよ。」


「まぁな。」


 ニケが止まるから、俺も自然と止まった。


 どうしたのかとニケを見上げる。


「多分、授業のあとか発表のあと、ハリーさんがお前も呼んで話し合いすると思う。」


 なんとか、うんとだけ返事を返した。


 正直緊張するし、あの人の能力の高さはまだ底を見れてない気がしてならない。


 それに、“ナッツ”が居ないことにもずっと引っかかっていた。


 “いない”事に、あのハリアモンド先生が関わっているとしたら。


 聖女スズさんよりも、国の事を大切にする人だったとしたら。


 最悪のパターンを考えそうになり、とっさに下を向いてしまった。


「別に、無理して喋んなくてもいいべや。はいかいいえだけくらいでも。」


 ニケは心を読めてないはずなのに、いつも俺がこんな気持になっている時は絶対に優しい。


 なるべくありがとうと大丈夫を伝えるために、ニケの顔を見て笑ってうんと言ったけど、うまく笑えてる気はしなかった。


「マスクしててもいいし。サングラスとかしとく?」


「そ、そこまでは、うん。大丈夫。」


 サングラス発言は予想外でびっくりしたけど、だんだん面白くなって気分が明るくなっていく。


(やっぱり、ニケはすごいなぁ。)


「やっぱり、ニケが最強だよ。」



 今度は、ちゃんと心から笑うことができた。



「めちゃくちゃ青い春してる!!!!!!」


 そう大声で叫ばれて、ビクリと身体が跳ねる。


 声の主は勇者科の“ソウ”君で、隣にはコーラル君もいた。


(勝手に春ってピンクのイメージだった。)


 なんてバカみたいなこと思うほど思考回路が働いてない俺は、挨拶もしないままぼーっと止まって2人を見てしまっていた。


 ソウ君がこっちへ来ながら、明るく話しかけてくれる。


「君がイーラ君だべ!?良かったら一緒に登校/」


「\ライラだこのストーカー野郎が!!」


 多分、ニケがイーラと呼んでいたから勘違いしてしまっただけのソウ君が、わりとキレてるニケにふっとばされてしまった。


 しかも、吹っ飛んだソウ君はコーラル君にヒットして、二人してぐえっとうめいて地面に倒れ込んでしまう。


 起こしに行こうとしたけど、ニケに服の首元をがっしり掴まれてそのまま登校してしまった。


 そのまま大人しく教室へ行くと、たきちゃんとギブさんがいて、挨拶すると返ってくる幸せを噛み締める。


 今日のギブさんのマスクは、ピンクのウサギモチーフで可愛いのにオシャレな凄いモノだった。


 マスクをしないといけないのは俺の方なのに、今日も忘れて目の前にあるウサギのマスクと作ったギブさんを称賛しまくっていたら、たきちゃんに笑われた。


 マシンガントークを謝り反省中、なんだかわざとらしく椅子をギシギシさせる音がして意識が少しだけそっちに向いた。


「今日も来てるわ。悲劇の主人公。」


 そっちから聞こえた言葉に、まさかたきギブのどちらかに悲劇が!?と慌てたけど、ギブさんが言った相手と俺の間に入って睨んだのを見て、俺のことだったのかと理解した。


「でもおかしいよなぁ?調べたけど、そんな悲劇的な死に方したお前の両親?見つかんなかったわ。」


「あぁ、そりゃその程度の調べたで何かわかったよって言われたほうが引くし、時間使うことでもなくない?ひましてないでしょ?」


 もう話は終わったなと思って、ギブさんとたきちゃんにお礼を言ってから机に向かって歩き出す。


 ほとんど同時に、ガラッと教室のドアが開いて入ってきたのは、あの“まかみ”さんだった。


 俺は、彼に会ったら聞きたかったことが逆に多すぎるし、それを伝えるボキャブラリーは足りなさすぎるしでプチパニックになり、逆に全く喋ることもできず、彼が目の前に歩いて来ても全く動けなかった。


「おい。」


 ここまで目の前で喋られたら、この“”おい“”と声をかけられた対象は俺のはずだ。


 わかっていても、本当に俺なのか自信を持てないほどパニクっていた。


「俺!?僕!?」


「どっちもライラ君やなぁ。」


 そんな緊張せんでもと言ってくれるたきちゃんの優しさで、30%くらい落ち着きを取り戻しかけた。


 でも、その30%を軽く消し去る発言をまかみさんにくらわされる。


「お前、色以外似んかったな。」


 思わず、えっと聞き返した。


 その発言は、俺の両親どちらか、もしくは両方を知っていないと出ない発言だ。


 でも、まかみさんの顔からも声からも憎悪や嫌悪などが無く、余計に俺を混乱させていく。


 彼じゃなかったら、人違いしてるんだろうと笑い飛ばせた。


 でも、彼は何処か確信を持ったような口ぶりだ。


 嫌悪を持っていないとすれば、母さんを知っている可能性が一番高いけど、彼は今年18歳なので、母さんを知らないはずだし、母さんの国の人でもないから、彼の両親と母さんが知り合いの可能性だって極めて低い。


 何も言えず固まる俺に、まかみさんはやっぱり怒りもしないし、疑うとかカマをかけることすらしなかった。


「そんな顔しろと思ってへん。」


 まかみさんは、俺の頭をワシワシとなでて教室から出ていった。


「ライラ君、気にせんでえぇよ。その……サルやから、常人と感性が違うとこがあって。」


「ライラ君の両親を暴いて晒そうとかではないと思うよ!!」


「あいつも的を外す時あるから。」


「そう…、だね。」


 たきちゃんとギブさんの言葉に、なんとか頷いた。


 バレていたら、殺されないなんてことありえないだろう。


 特に、彼の大切な人達のそばに首輪もつけずに野放しはありえない。


 彼に殺されることはできないから、絶対にバレることは避けようと改めて心に刻んで、ゆっくり息を吐いた。


「切り替えよう。チャンスくらいに思って、まずバリアの動力を…。」


「今日は先に座学やってぇ。たきさん何年ぶりかの座学や。」


「マジでめんどくせぇ。雑学にすらならないものにたきちゃん達の時間を食いつぶさせんなよぉ。」


 思わず本音が出てしまった俺に、わかるぞちび!!と窓際から声がした。


「技科に座学なんかいらねぇ!!一緒にばっくれるべや!」


 ガスっと音がして、声をかけてくれた彼は痛そうにしゃがみこんでしまう。


 昨日も同じ友人に叩かれてた人だと気がついた。


 友人らしき人達は、ほっといていいとか、重いけど縛っとくとか言って、彼を椅子に無理やり座らせていた。


「アレで重いとなると…、魔物から身を守る武器はもっと軽量させるべきか?だとすると威力面でどうすれば…。」


「ライラ君、もしかして身体動かすの好き?」


「え?う、うん。座学よりは。」


 たきちゃんに答えていると、後ろでイスギシギシ野郎が何か言ってきたけど、ギブさんが俺用のマスクをくれてそれどころではなかった。


 シンプルな白のマスクだけど、長方形じゃないかっこいい形のもので、ワンポイントに黒いうさぎがちょこんと左端で座っている。


  ガラリと音がなり、座学用の教員が教室へ入ってきても、俺はマスクを掲げてすげぇと見入っていたので、ギブさんに引っ張られて席についた。





「全員知っていると思うが、人類と魔王の戦いで人類は勝利をおさめた。その背景には…」


(今日は豚の角煮か…トンテキ?でも、ニケが食べるなら生姜焼きも喜んでくれるしな。)


 ギブさんにもらったマスクは、自分がつけて汚れるのが嫌だったから、手で生地の感触や細部の裁縫を確かめ、全てに感謝を込め何度も撫でた。


 うさぎの目が大きくてつぶらなのに、ハイライトがないところがたまらなくかわいい。


 ニケにも早く見せたいなと、携帯の時計を見たけど、まだ10分しかたって無くて舌打ちをしかけた。


「人類の魔王と呼ばれたこの人物は、恥も誇りもなく人類を裏切り、魔族のしもべとなった事により、」


 そう説明されながら映るホログラムの映像は、実際の人類の魔王である母さんとかけ離れていて、むしろ女性ですらない。誰それ状態だ。ゴリラとヒグマを足して二で割った様なものだから、人類かも怪しい。


「この人類の魔王により、多くの人達が犠牲になり、人類の勝利を大幅に遅らせた原因であった。」


 人類の教育とは、国の一部のキモオヤジレベルでもこき使える“無脳”を作り出すための洗脳行為だと、母さんが言っていた。


 その無脳の代表格が、教師であるとまで言い切るほどだった。


「この人類の魔王を討ち取った、神の武器である聖銃D2は、今もこの国に保管されており、二代目魔王にも驚異的な力を発揮するとされており、人類の勝利は揺るがぬものとして」


(聖銃?戦犯の間違いだろ。)


 忘れもしない、母さんが銃撃を受け続けたあの場面。


 何もできずに、魔力だけが体中を暴走し、バチバチと痛みとして現実を突きつけていたあの時間。


 誰も、何も守れない無力な俺。


 それでも助けてほしくて叫んだあの日の声は、誰にも届かなかった。


『たすけてっ、母さんが死んじゃう!!』


「イーラ!!!!!!」


 その声に、過去の僕までびっくりした気がした。


 考えるより早く、足が、目が、心が、ニケの声に向かって走る。


 教室の窓から上半身を乗り出すと、グラウンドにニケがいた。


 座学のはずなのに、勇者科の人達も続々とグラウンドへ出てきて、空を見ている。


「アレ、お前や技科の奴らのじゃないな?」


 上空に何体かの黒い影、小型の魔物のようなモノたちが近づいてきていた。


「機械の音するけど、サルの?」


「違う!まかみさんがあんなザツなもの作ったりしない!」


 思わず叫んでしまう。


 手にも力が入りそうになり、ギブさんのマスクに気がついて冷静さを取り戻すことができた。


 大切に胸ポケットにしまってから、ドローンを5台投げPCを立ち上げる。


 ドローンがスキャンした粗雑な魔物たちは、やっぱり人工的なものだった。


「ニケの言う通り、間違いなく機械だよ。魔物じゃない。誰か人類が作って操ってる。」


 ニケは、冷静に剣を抜いた。


「なら、ちゃちゃっと終わらすか。」


「待って!!」


 ニケを止めたのは、一体のハチ型の魔物がいたからだった。


「あいつ!あの左から2番目のハチっぽいのに針かなんか入ってる!!」


 毒でも塗ってあったら、ニケに何かあったら、俺は何をしてしまうかわからない。


 でも、俺の中の魔王を封印するのが世界最速記録保持者であるニケは、


「わかった、アレな。」


 とだけ言って走っていき、


「コーラル!!」


「急!?」


 コーラル君と力を会わせて空を飛んで、ハチを真っ二つに切り裂いた。


 不安が、希望に変わっていく。


 もう今マジで救護科のあの子に見てほしかった。かっこいいを軽々と飛び越えてくる。勇者でしかない。


 他の人工魔物達も、勇者科の人達が次々倒していく中、なんと針を持ったハチ型のやつが5体遅れてやってきた。


「ソウ!!あのキモいハチみたいなやつだけどうにかできねぇか⁉」


「どうにかって!?」


「中に針があるらしい!!」


 俺の話を聞いてくれていたらしいコーラル君が、ソウ君に大声で呼びかけてくれたことにより、グラウンド中の人達もハチに警戒してくれた。


 コーラル君が武器を持っていないことを確認した俺は、直ぐにカバンを漁りに戻り、試作のバズーカを持って、そのまま走って窓から飛び出した。


「コーラル君!!」


「バズーカ!?俺が!?」


 困惑するコーラル君をほとんど無視する形で、俺は彼にバズーカを押し付ける。


 口だけで軽くごめんと言ってから、早口でバズーカの使い方を説明しながら持ち方なども指導いく。


「コレが標準の合わせるやつ!動くやつにはちょうど真ん中じゃなくて行く方向に合わせて!あとこれ押すだけだけどっ、肩に置いて!そう!」


 本当は、コーラル君用じゃなかった。


 でも、彼なら使いこなせる気もしていた。


「反動が大きいかもっ、手を痛めたりしたらすぐ撃つのはやめていいからっ、」


「んなこと言ってる場合じゃないべや!!」


 コーラル君はそう怒ったあと、小さく


「サンキュ。」


 と言った。


 前を向いていた彼の顔を、俺は見ることができなかった。


「ソウ!!避けろよ!」


「俺を撃たないでよ!!」


 ソウ君とニケが、ハチを守るようにして飛んでくる魔物たちを薙ぎ払い、コーラル君をアシストする。


 コーラル君は初めての武器なのに、しっかりと使いこなし、見事に一体のハチを撃ち落とす。


 バズーカの玉である巨大なピンクのトリモチは、ハチをくるんで地面に叩き落とした。


「ピンク!?」


「うわぁお!どぎつぅい!」


 色だけでもポップにと思ってピンクにしたけど、何だかあまり周りの反応がよくなさそうだったので少し反省した。


 残っていた4匹のハチたちが、自分達を標的とされてると気がついたように、いっせいに針を発射してきたけれど、誰も怪我一つしなかった。


 一本はコウデンさんの方へ発射され、彼に完璧に叩き割られる。


 二本目はグラウンドの木に刺さる。


 三本目は、いつの間にかグラウンドにいたまかみさんが、なんと素手でキャッチした。主人公かあの人。


 最後の一本は、コーラル君へ発射されていたけど、ニケに弾き飛ばされ、木に刺さっていた針の3センチ下へ突き刺さった。


 その後すぐ、コーラル君は一体ずつ確実に撃ち落としていく。


 他の勇者科の人達のおかげもあり、全部で38体いた魔物モドキ達は、再起不能でグラウンドのあちこちに転がることとなった。


 コーラル君がドサッとバズーカをおろし、少しビクついたように見えて、慌てて彼のもとへ駆け寄る。


「コーラル君手を見せて!火傷っまさか折れてない!?」


「そこまでやわじゃねぇわ!」


 治癒も使えないのに、俺はコーラル君の手をとって確認していく。


 ホモっぽかったかと気がついて、ごめんと謝ったら左手でぽんぽんと頭を軽く撫でられた。


「どうせお前、このバズーカも自分で使って試してんだろ?」


「本当にあって良かったよね。針がいっぱい降ってきてたら、きっと刺さってた人もいたし。」


 そう言ってくれる優しい2人や、ニケ達に刺さったかもしれない針が、木の幹でキラリと光った。


 俺は自分でも何を考えてるか分からないほど無音で針に近づき、一本抜いて、その針が何か液体を注射する針であることを確認してしまう。


 調べる前なのに、その液体に嫌悪感しか無かった。


 憎しみにも似た、どす黒い感情が湧き上がってくる。


 その気持ちを魔力にして出してしまわないよう、全てを声に変えて叫んだ。


「ドラァ!!」


 ビーッと音を鳴らし、俺の声に反応した銀の箱が屋上から走ってくる。


 叫んでいくらか落ち着いた俺は、ドラにむかい指示を出す。


「針の薬品を調べろ。」


 俺の声を正しく認識した合図を音にしてだし、ドラは針を回収して自分の中で分析を始めた。


 ゴツンと後から後頭部に衝撃がくる。


「いった!?」


「何キレてんだお前。誰も怪我してねぇよ、落ち着け。」


 ニケに言われ、何も言い返せない。


 コーラル君達もそばに来てくれていて、殴らなくてもいいだろとニケを嗜めるように言ってくれて驚愕した。


 コーラル君達に何か言うより早く、ピーとドラから音がなって、解析が終わったことを告げる。


 吐き出した紙を手にとり、顔をしかめた。


「そんなやばいやつだったわけ?」


 ニケに答えようと顔を上げたその時、後から足音が聞こえてきた。


 ただそれだけなのに、びっくりして思わず紙をくしゃりと握ってばっと振り返る。


 足音が、母さんそっくりだった気がしたからだ。


 でも、そこに立っているのはハリアモンド先生だった。


「そんな怖がんないで?」


 優しげな声も、笑顔も、母さんと全く似てなくて、もしかしたら体重的なものが同じかもしれないと1人納得した。


「その紙、俺にも見せてほしいなぁ?」


 はいと声に出したつもりだったけど、ニケに紙を取られてえ!?って言っちゃったから、え!?って言っただけに聞こえたかもしれない。


 ニケは紙を先生へ渡すと、


「アレ、ハリーさん達の?」


 と目線だけでピンクの塊になっているハチたちをさした。


 先生はしっかりと首を横に降って、いつの間にか透明な袋を取り出していた。


 中には、コウデンさんが折った針が入っている。


 先生は、木に刺さっていたもう一つの針も抜いて、その袋へと入れた。


「俺は、嫌いだよ。」


 針にむかい言い放つ先生は、成分だけであの薬品の危険さを理解しているんだろう。


 それとも、俺と同じで何か嫌な思い出でもあるのかもしれないと思えるほど、彼は嫌悪を隠していなかった。


 この薬品は、昔母さんから聞かされていたものと同じ。


 あまりのことに、いまだに俺のトラウマとして残ってしまったもの。


「どうしたの?具合い悪い?座って話そっか。」


 近づいてくる先生に、大丈夫ですと言おうと思ったけど、先にニケの低い声が響いた。


「人類の誰かが、薬まで使ってココを襲撃してきたらショックはデケェ。しかも、魔物に見立てるとか小賢しいことしやがって。」


 ニケの怒りが、俺の体の冷たいものを溶かしてくれるようだった。


 先生も、そうだよねと言ってその場で頷いていた。


「魔王が作らせた可能性が低いって確信がある?良かったら根拠になるものがあると、俺も上に報告しやすくて嬉しいんだけど。」


「根拠もなにも、こんなガラクタいらへんのや。」


 俺達の後ろから歩いてきたまかみさんの声は、怒りを押し殺しているような低い声で、ニケと同じ熱を感じた。


 まかみさんは、さっきキャッチした針をこの場で握力だけで粉々に砕いてしまう。


「こんなもん魔物の、」


「手が!!まかみさんの大切な手に破片が!!薬品が!!」


 まかみさんのセリフともろかぶりしてしまったけど、それどころべはなかった。


 慌てふためいてパニックをおこし、まかみさんの手を引っ掴もうとする俺を、俺より俺に詳しいニケは、完璧に動きを読んでいて、一発デコピンをいれることで落ち着かせ、ドラに破片全部綺麗にしてと指示を出した。


 ドラは素早くニケの命令を聞き入れ、まかみさんの手から周りから全てにおいて、針の破片一つも残さず回収した。


 その後、ニケはドラの横を開け、ウエットティシュをちゃんと2枚ほど出してまかみさんの顔へ投げつけた。


 あまりの手際の良さに、全俺がスタンディングオベーション待ったなしだ。


 綺麗に手を拭いたまかみさんが、先生に思い切りティッシュを投げつけだけど、先生は怒ったりしないで、にこやかにそれも袋の中に入れた。


「まかみの言う通り、砂で作るほうが強いしコスパも良さそうだよね。」


 俺のせいで全て聞こえてなかったはずのまかみさんのセリフを、先生は正確に汲み取ることのできていたらしい。まかみさんは、当たり前やろと言い放った。


「こんなガラクタで遊ぶやつやったら、苦労なんかしてへん。」


 まかみさんは、ギロリと先生の後ろにいる奴らを睨みつけた。


 あまりの迫力にたじろぐ奴らは、ここの学校の奴らじゃない。


 今日、魔族の座学を教えるためという名目で来ていた教員たちだった。


 そいつらを睨みつけるまかみさんは、サルよりもっと凶暴で、巨大な、母さんが聞かせてくれた昔話の神獣のようで、とても18歳の気迫じゃない。わけてほしい。


「無用な奴らのお遊びに付き合うほど、ヒマやない。」


 そんなまかみさんに対して、なんとか威厳を保ちたかったのか、1人一番偉そうなやつが咳払いする。ダセェなと思った。


「試させてもらった。」


 そいつはわざとらしくニケ達を見渡し、下手すぎて痒くなる芝居のように頷いた。


「ここにいるのが新入生達だな。ちょうど良かった、お前たちの腕前を国の目である俺達が」


「舐め腐ってんのか?ドタマかち/」


 心の声が出てしまったようで、ニケに親指と人差指で両頬をむにっとされ黙らされる。


 口をタコみたいにしてるであろう俺に、威厳などない。


 先生が盛大にため息をついた。


 彼も自然なため息というより、芝居がかったものなのに、全く嫌な感じも不自然過ぎる感じもしなくてすごい。


「試したって言ったけど、」


 先生は、針とドラが出した紙をそいつ等に見せる。


「コレが本当なら、人体にどんな影響が出るか知っていて使える量じゃない。」


 まかみさんと違い、怒りを全面に出したりしない自然な声と入り方だった。


 でも、先生の目が捉えられた誰一人として、体を一ミリも動かせないほどの強いものだった。


 まさに、空の王者の様な鋭さのそれに、彼の眼鏡が曲っていることなど忘れるほどだ。


「もう一度聞くけど、この薬品を使われることを知っていたんだな?」


 偉そうにしていた面影もほとんどないほどの奴らは、何とか口を開けるみたいに話しだした。


「く、国から、正式に…、実行も、別の、人たちで、薬品も、ただの麻酔だから、危険性は低く、」


「この麻酔は、本来人体に使われていいものじゃない。量も、致死量になりうるものだ。」


 知っていたことなのに、紙以外から脳へ伝えられる情報が、また冷たいものを体の奥底から湧き上がらせるような感覚がする。


「聖女スズに誓って、正しい行いだったと言えるやつは前に出ろ。」


 先生のしっかりした声と言葉に、やっと事の重大さを把握した奴らは、誰一人前に出ることをしなかった。


「もし、今回のことを反省して、もう二度と同じ過ちをしないと謝れるなら、許してあげるよ。」


 あっけなく、教員だった奴らが皆頭を下げて申し訳ありませんでしたと告げた。


 先生は、ニッコリと笑って頭を上げなさいと告げる。


「今の気持ちを忘れないでね?人類同士で争ってるヒマないし。」


 そんな先生を見て、本当に許されたと思ったのか、そいつ等は明るい顔を見せる。


 先生は、何も言ってないはずの俺を見て、また近づいてこようとした。


「ごめんね?怖がらせた?」


「ハリーさんに怖がってねぇ。危険な薬品なのわかってて嫌なんだよ。」


 そう言ってまたニケが少し前に出てくれるけど、今度は先生の足はとまらなかった。


「優しい子だなぁ。髪もサラッサラだし、おめめもパッチリで、よく見せてくれると」


 一歩ずつ確実に近づく先生を、ブオンと音のなるほど強く回し蹴りしたのは、まさかのまかみさんだった。


 先生は当たり前に避けたけど、まかみさんからの蹴りには驚いていたようだった。


「まかみどうしたの!?かまってほしかった!?」


「キモい。今後一切近づくなや。」


「え!?やだ!!!」


 ニケも先生と対峙するように移動し、完全に俺からは先生が見えないくらい壁が出来上がる。


「ハリアモンドてめぇ、結婚してんだろ。ホモしようとしてくんな。」


「してないってぇ。妻一筋30年だし、まかみも照れてるだけで仲いいんだってほんとに。」


 まかみさんの顔を確認したニケは、剣の鞘を使いガリガリとグラウンドに線を引いた。


 先生は、ちゃんとその線を超えずにさみしいからこれやだ!と騒いでいる。


 先生は、まかみさんからの攻撃(そばにある石なんかを投げられる)をすべて避けながら、ほら見て仲良し!とニケにアピールしていた。


 まるで360度視界に入っているかのような動きに、思わず左手が無意識にデータを取ろうと動き始める。


 「ついでに転がってる邪魔な奴らを掃除するか。」


 PCでもう一つの箱である“”パン“”の方を呼び出し、片付ける対象を教え袋詰めさせていく。


 そのまま先生の動きをよく観察して、やっぱり動体視力がすこぶる良いなと感心した。


「視力が悪いわけじゃない気がする。逆にあの眼鏡はそれほど何かあるんだろうな。似合ってるし、逆に元々あのデザインだと言われても俺には」


 ウエットティシュが顔面に投げつけられ、また1人で喋っていた事を自覚した。


 投げつけ方でニケが怒ってる気がしたので、すぐさますいませんと謝って、そのままテイッシュで口を封印する。


「コレね、片目だけ視力低いのを補ってるだけなんだよ。気に入ってるし、似合ってるって言ってもらえるのは嬉しいな。」


 先生の目が、次は俺を標的とする。


「こんないい子のバースデー写真が、なんで国に提出されてないの?俺探しちゃったよ。」


 この質問が来たなと思い、答える気でいた。


 でも、自然に、当たり前に、答えたのはニケだった。


「形見だから、国に渡す気がねぇんだよ。」


 思わず、俺がニケを凝視してしまう。


 ニケの群青色の瞳が、俺をまっすぐ見つめ返すから、鼓動の様な、海の波のようなものを生み出すみたいに揺らがせる。


「僕、ニケにもあの写真の事話せてなかった。」


「それでもわかってた。お前隠してたわけじゃないだろ。」


 安心なのか、後悔なのか、懺悔なのか、尊敬なのか、


 もう何もわからないコレを、感情とよんでいいものなのかすらわからなかった。


「形見に思わんでえぇやろ。国に渡す必要も無いけどな。」


 まかみさんの言葉だけなら否定的に思えるものだけど、声色は優しさしか詰まっていなくて驚くことしかできない。


 反射的に彼を見たけど、やっぱり彼の顔もマイナスの感情を読み取れないものだった。


 ニケは少し怒ったような声色で、形見は人それぞれだろと言ってくれて、それも嬉しかったけど、


「わしは生きとるし、生き続ける。たまき達と楽園を作るんや。」


 そのまかみさんのセリフも、心から嬉しいものだった。


 きっと、彼は俺達の目指しているハッピーエンドと近いものを目指してくれている。


「もしかして、まかみの親戚とか?産まれた時国に写真提出できないほどの大恋愛の末、駆け落ちとかしちゃった?」


 まかみさんを身内だと思われるのは絶対にあってはならないことだったので、俺は精一杯違いますと叫んで、首を横に振り続けた。


「写真はあるってことだべ?提出を先延ばしちまうとかあったかもだろ。」


 コーラル君がそう言いながら、俺の首振りをやんわり止めてくれる。


 先生はうんうん頷いて、にっこり笑った。


「本来提出を先延ばしちゃうとペナルティ食らっちゃうけど、何か事情がありそうだし、明日にでも俺に渡してくれればペナルティにならないように国に掛け合っておくよ!!」


 形見を奪ったりしないしね?と念を押すハリアモンドさんは、有無を言わさぬつもりだ。


 先生ではない一面なんだろう。


 俺だって、母さんがあの母さんじゃなかったら、飲み込まれて全て要求通りに動いていたかもしれないほどだった。


 ここは、一日でも写真の提出を伸ばすべく、“”ペナルティ覚悟で写真すら渡さない、マザコンでかわいそうな心弱いやつ“”を演じるため、少し目線を下げて泣きそうな顔を作った。


 でも、タイミングを図れていなかったらしく、また先にニケが先生と話し始めてしまう。


「アンタが嘘つかねぇ確信を、俺達は持ってねぇ。信頼関係を築けてねぇんだよ。」


「嘘なんてつかないよ!それに、ペナルティが怖いなら早めのほうがずっといいじゃんね?」


「それが怖かったら、こいつはこんなに腹くくってねぇ。」


 本当に俺が会話に入れる隙がない。何だか本当に不甲斐なく感じてきて、演技じゃなく落ち込んできた。


「そこまで国を信じられない何かあったの?」


「誰がガラクタなんか信じんねん。」


 まかみさんは、パンが袋詰したガラクタを踏みしめた。


「わしを殺そうとしとる、お前ら国を。」


 思わず顔を上げ、先生を見る。


「させないよ。聖女スズに誓って。」


 先生は、演技してるようには見えなかった。


 でも、人生経験でも、対人関係面でもレベルの低すぎる俺では、それが本心なのかはわからない。


「その誓いがどんだけのもんなんや言う話や言うとんねん!!口だけの男なんてガラクタより価値なんかあるか!!」


 まるで咆哮の様なまかみの怒りに、先生は敵意はないと見せるように微笑んだ。


「わかったよ。先に信頼関係だね。」


 先生はニケの書いた線を飛び越えて入ってきた。


「大丈夫。俺、まかみに信頼される自信あるんだ。」


 そう言って笑う先生の笑顔は、やっぱり演技がかったものではなかった。


 でも、まかみさんは逆に?もっと?先生から引いていき、ニケの後ろへ隠れるように移動する。


 ニケも心なしか先生とまかみの壁になるように立ち直した。


 先生は、二人は仲良くていいなぁと言ったけど、二人とも先生をガン無視する。


「お前、もしかしてわしのこと好きなん?」


 喧嘩が勃発してしまわないか焦ったけど、ニケは殴ることも蹴ることもしなかった。


「ぁ゙?お前好きなやついるだろ?浮気か?」


「すまん。わし、たまきが嫁なんや。」


 ニケは、何処か満足げだ。まかみさんはそんなニケを不思議そうに見ていたけど、俺はこれこそニケです!と、心の中で、まかみさんにニケの素晴らしさが伝わる可能性に歓喜していた。


「それでいいんだよ。俺を巻き込むな。あいつも大事にしてやれ。失ったら知らねぇぞ。」


「そぉら大事に決まっとる。でもめちゃくちゃに抱きたいんや。ぐっちゃんぐちゃんに食い尽くしたい。」


「はぁ⁉」


 先生の携帯が音を鳴らし、ナイスタイミング!ニケには流石に刺激が強すぎるかもしれないからね!とか思ってたのに、まさかの先生がそばを離れただけで、元々先生を無視していた二人は会話をやめたりしなかった。俺が止めるタイミングも逃してしまう。


「えぇ?お前ちゃうんか?」


「食ったらこの世からなくなるべや!それでもいいのか!」


「嫌やで我慢しとる。我慢やけどな。」


「食欲は肉に向けろ肉に。バナナでもいいけど。」


「はよたまきのバナナに食いつきたい。」


「え?あの黒メガネバナナ育ててんの?」


(絶妙にニケとまかみさんの会話が噛み合っていない!!)


 純愛ドラマばっかり見て育ったニケにとって、学生の恋は一番過激なシーンなんかキスとかまでだから、予想すらしてなかったまかみさんの直球な欲に追いつけていない。


 でも、この会話に俺が割って入っていったって好転する気がしないからこそ、焦ってコーラル君たちの方を見た。


 ソウ君はアレいいの?みたいなジェスチャーをコーラル君にしているけど、コーラル君は見て見ぬふりを貫くと決めてしまったのか、バズーカを触って明後日の方角を向いてしまっている。


 もしかしたら、彼もうぶなのかもしれない。


 まかみさんが、たまきさんのどこを食らいつきたいのか、具体的に話そうとしてしまったその瞬間、大きな鐘の音が響き渡ると同時に、巨大なホログラムのスクリーンが上空に出現した。


 この国全土に鳴り渡る鐘の音は、今から始まる“神のお告げ”を国民へ発表するための合図だ。


 俺のPC画面よりかなり画素数が荒いホログラムに映るスズさんは、気を張っているのか、この前会った時とぜんぜん違って見えた。


「あ、ちょうど始まるね。」


 電話を終えた先生が、こちらに戻ってくる。


 俺は、深呼吸をしてホログラムに向き合った。


「イーラ、何考えてんの。」



「ニケの、幸せな未来の事しか考えてないよ。」


 それ以外、俺は考えてはいけない。


 この鐘の音は、魔王である俺の活動を開始する合図でもあった。







聖銃D2 分類(レーザー銃)


量産型のただのレーザー銃。

キョウの強さに発狂した男が、たまたま持っていて乱射したかなり古い型の粗悪品。

キョウは撃たれた瞬間から治癒をするを繰り返し、妹の盾になっていたので、最終的に出血多量で心肺を停止させたが、弾切れまで撃たれ続けても立ち続け、その後も何分か生きていたので、実際はこの銃が殺したとすら言えない。

殺傷能力が低い訳では無いが、本来ならキョウを殺すことは不可能だった。

ケイが魔王だという事実を知る戦犯達だけが、キョウを殺したこの武器を使う者に、二代目魔王が挑みに来ることを予想して、大切に保管されていた。

愚かで思い違いをしたい能無しが多いので、本当にスズの力が神の力で、この銃でも魔王を討伐できると思い込んでいるわけのわからない奴らもいるが、それほど精神的にキョウが追い詰めた証拠でもあり、そのキョウを殺せた銃が神具扱いされるのは馬鹿らしくも当然と言えるかもしれなかった。

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