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第6章「龍とうさぎとマッポと勇者」②

「ごめんね、ミーアちゃん。わたしの用事に付き合わせちゃって」

「えっと、大丈夫です。わたしにできることなら頑張ります! もう全力ですよ!」

「ありがと。それは頼もしいわ」


 三日後。魔王城の龍小屋の前。

 わたしとミーアちゃんは出掛ける支度を整えて、グランドラゴンを選ぶためにここに来ていた。


 ミーアちゃんの服装は、わたしが徹夜で仕上げた、黒地に白いレースとフリルがついたゴシックドレス! 俗に言うゴスロリである。一言で言うと超かわいい!


 人間の国で活動するのだからという名目で着てもらったそれは、想像以上に似合っていて、ああもう、今だけは自分を盛大に褒めてやりたい気分である!


「でも、今回はそんなに危ないことにはならないはずよ。ちょっと知り合いに話を聞きに行くだけだから」

「お話を聞きに?」

「ええ」


 聖武具の調査と言っても、取り分けて難しいことをするつもりもない。

 知っていそうな人物に心当たりがあったので、話を聞きに行くだけだ。

 ワイト大司教か、もしくは聖槍の使い手であるアルベルトならば、何か情報を持っているかもしれないと思ったのだ。

「調査って聞いたんですけれど、何について調べるんです?」

「これよ。エウカリスティアっていうの」

 そしてわたしは、鞄から取り出したエウカリスティアをミーアちゃんに見せる。

「えっ? これって食パン……」

「エウカリスティアよ」

「エウカリスティアって名前の食パン……」

「人間達が作った唯一無二の武具のひとつ。聖剣や聖槍と並び称される、第七聖武具『エウカリスティア』よ」

「でも、どう見ても食パン……」

「……またの名を、(きらめき)食パンとも言うわ」


 根負けしました。

 もしかしてミーアちゃん、意外と頑固な一面もあるのだろうか?


「それで、どこまで行くのです?」

「マリナト公国の聖都セラフィムよ。まずはシシドの村でグランドラゴンを預けて、そこから近くの町まで徒歩ね。その町で馬を調達できれば、明後日の夜には着けるわよ」

「えっと……三日もかかっちゃうんですよね?」

「まぁ、そうなるわね……ミーアちゃん、何してるの?」


「えっと、もっと早く着く方法を教えてもらったのです。だから、その……それで行ければと思って……」


 そう言いながらミーアちゃんは近くにある木を一本引き抜くと、右手でそれを投げる構えをして、左手でわたしの腕を掴んでいた。


「ねぇ……昔、漫画で『世界一の殺し屋』を名乗る人が、自分が投げた柱に飛び乗って空中を移動するのを読んだことがあるんだけど……まさか、それじゃないよね?」

「その、えっと……投げた木に乗ってセラフィムまで行こうかと」

「そんな無茶な! 誰よ、こんな方法をミーアちゃんに吹き込んだのは!?」

「ミハエル様です。それと、あの……隣のカラド王国には龍が住むと言われてるから、そこに香澄ちゃんだけ捨てて来いとも言ってました」

「あんにゃろぉ……」


「じゃぁ……いきますよ?」


「ちょっと待っ……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 飛んでるっ!

 飛んでる! 飛んでる! 飛んでる! 飛んでるぅぁぁあああああああ!


 高い高い高い高い高い高い死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ落ちたら死んじゃうぅぅぅぅっ!


「あ、その……忘れ物しちゃいましたです」


 えっ、何を?

 そう言おうにも、今のわたしには言葉を出すほどの余裕も無かった。

「リュックの中に、ニンジンいっぱい詰めてきてたんですけど……」

 あ、忘れ物ってニンジンのこと? リュックを置いてきちゃったってことね。

 ニンジンぐらい、無事に生きて着ければ、いくらでも現地で買えばいいわよ。


「そのリュックの中に、パラシュートも一緒に入れてたんでした」


「えぇぇぇっ! ちょっ、嘘ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


 

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