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第6章「龍とうさぎとマッポと勇者」①

「もしかしたら、香澄さん。今のあなたなら使いこなすことができるかもしれない」

「……わたしが?」


 魔王の部屋に呼び出されたかと思えば、真剣な表情でシモンはわたしに言った。


「この世界には、七つの聖武具がある。

聖剣(せいけん)。聖槍(せいそう)。天鎌(てんれん)。天盾(てんしゅん)。宝鉞(ほうえつ)。麗水晶(れいすいしょう)。そして煌(きらめき)食パンだ」

 え? 今、真面目な顔で何て言った?

「そのうち、魔王城では聖剣のほかにもう一つ聖武具を保管していて……」


「いやいやいやいや、ちょっと待って。待って! 今、食パンって言った? かっこいい名前が六個出てきた後に、食パンって言った!?」


「ああ。事実なのだから仕方ないだろう?」

「いや、意味わかんないし! 聖なる食パンって何!? 食パンが武具って何!? 煌(きらめき)食パンって、馬鹿にしてんの!? どんな武具か想像もつかないんだけどっ!!」

「こんなのだが」

「――ガッデム!! 何でよりにもよって、『聖剣のほかのもう一つ』が食パンなのよ!!」


 しかも、見た目は本当に食パンだし!

 黄金の輝きを放つ、実物大の八枚切り食パンじゃないのよっ!


「用途も、製作者の意図も不明。謎の秘められた聖装だ」

「そりゃそうでしょうよ。黄金の食パンを作る時点で理解不能だし」

「そのせいで、過去に使いこなせた者は皆無とまで言われている」

「食べる以外の食パンの使い道なんて、そもそも誰も知らないわよ……」


「そこで、これを香澄さんに託そうと思うんだ」


「いらねぇぇぇぇぇぇぇ!」




 そして、十分後。


「香澄ちゃん」

「質問があるのです」

「この金ピカな食パンは」

「何なんですか?」

「食べれないですよね?」

「飾るのも微妙ですよね?」

「これを作った人は馬鹿ですか?」


「さすがはプチなわたし達……わたしも今ちょうどそんな気持ちよ」


 結局押し付けられて、食パンは部屋に持って帰ってきてしまった。


「どうしよう。貴重な物なはずだけど、全くそう思えないんだよね……ちなみに、この世界に同じものは二つとない聖なる武具で、煌(きらめき)食パンって言うらしいわ」


「つまりそれを作った人が、他の追随を許さないほどの馬鹿だったということですね?」

 そう言ったのは、プチ達に金平糖をあげているクリスだった。

「それで、これからどうするのですか?」


「うーん。本当に不本意だし、全くもってやる気が湧かないんだけど……先のことも考えたら、調べておいた方がいいんだよね?」

「それはまぁ、聖剣や聖槍と並ぶ食パンですから……くくくくっ」

「クリス、いま自分の言葉にツボったでしょ?」

「笑ってない……ツボってません……くくくくっ」

「はぁ………………」


 渡されたときに、シモンから食パンの調査をする許可は貰っておいた。

 数人であれば調査団として人員を裂くこともしてくれるそうだ。


 聖武具である以上、人間の国での調査になってしまうから、クリスを誘ってもあらん限りの罵詈雑言と共に拒絶されることは目に見えてるし……どうしよっかなぁ。




 そして、更に二日後。


「で、とりあえずできる範囲で調べてみたけど……」

 まぁはっきり言って、大した成果は無かった。

「食パンだから……って思ったんだけど、焼いてみたんだけど変化なし。バターやジャムを塗っても変化なし。切ろうとしても、包丁どころか、この空間ごと斬れる刃でも傷一つつかなかったのよね」


 だから今わたしは、ミハエルの部屋を訪れている。

 小馬鹿にされるのを覚悟で「ねぇ、どう思う?」と聞いたところ、ミハエルは珍しく真剣な面持ちで答えてくれた。


「斬れなかった、と言いましたね。ならばそれは間違いなく聖武具のひとつなのでしょう。 ……えっと、何といいましたか、それは」

「エウカリスティアよ」

「エウカリ……いえ、何とか食パンという名前だった気がするのですが」

「駄目よ。これは今日から『エウカリスティア』なの。わたしの世界には、神の子が最後の晩餐で、自分の身体として弟子達にパンを配ったって話があるの。それになぞらえて行われている聖体祭儀をそう呼ぶのよ」

「なるほど……宗教的な意味合いを持つ聖武具の可能性を、香澄さんは考えているのですね」

「え? ううん、全然。だって、『煌(きらめき)食パン』とか、口にするたびに笑っちゃうじゃない?」

「………………」


 あ、なんか呆れたような顔をされた。

 いい名前だと思ったんだけどなぁ……


「まぁとりあえず、調査団の編成には僕も賛成です。ですが、人間の国に入るとなると人選が難しそうですね……ミーアさんに声を掛けてみてはいかがですか?」

「えっ、ミーアちゃんに?」

 ミハエルは頷くと、それから自分の耳を指差して言った。

「彼女は少し特殊でしてね。ウサギの耳が出ている間は、頭の横についた耳が人間と同じ形になるんですよ」


 それはつまり、ミーアちゃんは人間の耳を装うことができるということだ。

 作戦行動中は必然的にそうなるわけだから……


「ケモみみ少女と旅行ができるっ!」


「真面目に相談に乗ろうとしたことを後悔しそうなのですが、そろそろ蹴り飛ばしてもよろしいですか?」

随分と長く、間が空いてしまい、すみませんでした。

見捨てないでくださった皆様、本当にありがとうございます。


6章はまだまだ書き途中ですが、少しずつ書けた部分を更新していきます。

よろしくお願いします。

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風変わりな恋愛小説はじめました。
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