第4章「奇跡の勇者」⑬
「グリード。なにかわたしにできることってある?」
「今のところは特にないな。この人たちが壁から外に出ないようにだけ見張っていて欲しい。 ……えっと」
「あ、名前? わたしは香澄よ。井上香澄。でも、どうしてグリードはこんなところにいたのよ?」
「香澄さんね、よろしく。俺は近くの町に泊っててな、魔力を感じたから来たんだ。要は旅の途中でたまたまってことだ」
「なるほどね……ん?」
ふと、嫌な気配がする。
今まで羽ばたいていただけの朱雀が、大きく口を開いたのだ。
「あれは、火蜥蜴の時と同じ……」
開かれた朱雀の上下の嘴の間に、次第に炎が集まっていく。
それはゆっくりと。しかし確実に大きくなっていく。
「まずいな……突き破られるかもしれない」
グリードの言葉と同じことを、わたしも予感していた。
そしてもうひとつ……
「ねぇ、あの朱雀さ、わたしのこと見てない?」
「ああ、言われてみれば……」
理由は分からないが、朱雀の視線はわたしに注がれていた。
つまりこのあと、炎の球はわたしに降ってくるということだ。
「ああもうっ! おじちゃん、肩かしてっ!」
「なっ……おい、お前っ!」
「急いでるのよ、早くっ!」
わたしは緑の髪の男に肩車をさせる。
直後、炎の塊が朱雀の口から放たれた。
炎球が水の壁を突破するより早く、わたしは盾を展開する。
本当に恐いのは火球じゃない。壁の穴から入ってくる羽根の方だ。
それが一枚でも落ちて壁の下が燃え広がったら、それこそどうしようもないのだ。
わたしは盾で火球を受け止めると、穴よりも大きく、更に大きく、盾の大きさを限界まで広げる。
「ミハエル、盾から漏れた羽根もお願いっ!」
「分かっています。それより、次が来ますよ!」
「分かってる! 二度も死にかけた人間の意地、見せてやるんだからっ!」
再び火球が盾に当たる。
押しつぶされそうな重圧。
弾かれそうな腕を必死に右手で掴む。
そんな、肩車で不安定な状態のわたしの背中を、何人もの集落の人たちが支えてくれていた。
「支えろぉぉっ! 香澄ちゃんが頑張ってくれてんだ!」
「いいか、絶対にこの水の下から出るな! ちゃんと子供も見張っとけよ!」
「ミハエルさんの邪魔になる! なるべく頭を下げて、見逃してる羽根があったら知らせるんだ!」
「グリードさん、十分経ちました。ノノさんが戻るまでもう少しです、頑張ってください!」
こういうのを、力が湧いてくるって言うのだろうか。
もともと運動が苦手なわたしは、ずっと腕を上げてるだけでも苦しくて、だんだんと力が入らなくなってきているのが分かる。
それでも諦めちゃいけないって、踏ん張らなくちゃいけないって、その気持ちがわたしを支えてくれているように思うのだ。
集落の人たちも、グリードも、ミハエルも、村から走ってきてくれているノノも、そしてわたしも含めて、一つになっている。
それがとても、わたしを強くしてくれている気がしていた。
「香澄ちゃん、連れてきたよっ!」
ノノの声。
わたしが振り返ると、そこにはノノと、そしてシシドの村の人たちが大勢来てくれていた。
村の人たちを可能な限り連れてくるよう、わたしがノノに頼んだのだ。
これで、条件は全て整った。
冷静に考えれば、成功するかどうかも分からない作戦。
だけど今のわたしたちなら、どんなことでもできそうな気がするのだ。
基本的に、本作主人公の戦闘能力はポンコツです。
1対1で勝った相手は、今のところウーパールーパーのみ。
これから上がっていくのか、はたまた下がっていくのやら……
まぁ無双させる気も無いんですけどね。(読むのは好きですが)
努力・友情・大団円!!
香澄が盾ではなく武器をもつのは、もう少し先になります。






