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ゴードンの実験

エバの用意したレンタカーに乗って、三人は、北欧の旅に出かけた。北欧の城巡りをして楽しかった。夜になると、ホテルの外に出て、オーロラを眺めた。


ゴードンは、雷打たれた。いや、オーロラに打たれた。

何かが、通り過ぎた。ムーミンやノンノンが走り抜けた。

ムンクの叫びが、響き渡った。

でも、ゴードンは何かを認識したわけでなかった。何かが、走り抜けただけだった。


ゴードンには、オーロラが、電磁現象に気がついた。しかし、それは、誰も、知っている事実に、ゴードンが気がついただけだった。だから、どうだというのだ。

ノンキア社の社員なら、誰でも、知っていることだし、世界中の人間の知っていることだ。

しかし、ゴードンは、何かを感じたのだ。

未来の響きのようなもの。ドラゴンの遠吠えのようなもの。


ゴードンの衝撃が、旅の初日ではなく、5日目の夜だったのは、この楽しい旅行を台無しにするのをかろうじて食い止めていた。ゴードンの関心は、オーロラの不思議さにとらわれしまい、すっかり、寡黙なった。けれども、そんなゴードンをよそに、エバとミンミンは、弾けるほどの若さで、旅行を楽しんでいた。


エバは、不死身のように、自動車を運転した。自動運転をするには、北欧の道は、まだ、十分な整備がされていなかったので、自動運転任せとは行かない事情があった。エバは、カーナビを巧み操りながら、長時間運転を一手に引き受けてくれたのだった。途中で、ガソリンも切れてしまうことも考慮して、予備タンクも持って行った。電気自動車で、駆け抜けるのは、まだ、いろいろ無理があったのだ。


ヘルシンキに戻り、エバは、疲れた体をようやく休めた。エバは不死身だった。ミンミンも陸上選手だけあって、やはり、不死身だった。誰かが、この三人のなした旅行を、真似しようとしても、きっと、4分の1も実行できなかったかもしれないほどの旅行をやってのけたのだ。


ゴードンは、寮の部屋に戻ると、フランクリンのように、凧を作り始めて、実験をした。北欧の空の電磁力を電気に変えるのは、どうすればいいのか。それを、蓄える方法が必要だった。しかも、多くの人に害を与えない方法が必要だった。


翌朝、いつもの湖に潜ってみると、大ザリガニが、ゴードンを見つけて、大きなハサミをふりたてていた。やはり、大ザリガニは、宇宙生物だとやはり思う。


ゴードンは、いくつか凧を作り、空中から電気を取り出す方法を研究し始めた。

ミンミンは、予定通り、タンバ国に戻った。エバは、ゴードンの様子を見ていたが、何も言わなかった。ゴードンが何か、考え始めると、会話が成り立たなくなってしまう。


MIT で、3次元CPU のアイデアを考えついた時も、タンバ国の人には、理解してもらうことができたが、MIT の先生や学生に全く、理解してもらえなかったのは、説明下手すぎたのだ。一体、何をしようとしているのは、順序立てて話すことができかったからにすぎないのだ。それに、アランなどからにアイデアがどんどんきたので、ゴードンの話は、どんどん変化して、一貫性のない、ホラ話にしか聞こえなかったのだ。エバは、ゴードンのアイデアを理解できたわけではない。今でも、どうなっているのかは、全く不明だ。エバは、MITで起きている情報を彼女の仕事として、TEI社に送っていたにすぎない。その情報をTEI社が分析して、ゴードンの発想のユニークさを見つけたTEI社の技師が、実現可能性を見出したにすぎないのだ。


ゴードンは、凧の糸を見つめていた。その向こうの電磁力を見つめていた、地球という磁石を見つめてた。太陽光や太陽風を見つめていた。フレミングが鳥のように、パタパタを飛び回り、マックスエルが、猫のように走り周っていた。もちろん、ゴードンの頭の中だけの出来事だった。


フランクリンの凧のように、ゴードンの凧も電気を、手元の蓄電池に蓄えようとしていたが、まだ、上手くいかないようだった。



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