ORIZURU 3 から MANDARA 1 へ
アランは、いろいろ展開図書きながら、やはり、いくつかの問題点に気づきはじめた。回路は、中央のCPUと連携しているので、展開回路を反転したり、ねじると、回路同士をつなぐ導線もねじれてしまう。シミュレーションでは、3次元空間を認識できるが、実際の作成では、2次元でしか作成できないので、導線のねじれを解決方法が見当らなかった。
なかなか、いいところまで、来ているような気がするが、いろいろな問題はまだまだありそうだった。
工藤博士が、京都で、コンピュータの国際会議にでるというので、カバン持ちでついていくことになった。
せっかくなので、この出張にあわせて、工藤博士は、休暇をとって、奥さんを交えて、京都、奈良観光を行うことにした。どう考えても、アランは、お邪魔虫にしかみえないのだが、工藤博士も、奥さんも、なんだか、楽しみにして、かなりのテンションが上がっていた。
実は、アランに日本を紹介するということにかこつけて、目いっぱい京都、奈良観光をするつもりなのだ。
二人とも忙しかったので、なかなか、そんな機会がなかったので、楽しみにしている。オサム君は、おばあちゃんとおじいちゃんの家に、行くことになった。
さすがに、ハルは、おばあちゃんとおじいちゃんの家に行けないので、留守番をすることになった。
ハルの気分は、やはり、なんだか、すぐれなかった。すべて、アランが登場してから、私の人生(ロボット生)は、めちゃくちゃになり始めたような気がした。
それでも、ハルは、世界最高峰レベルの人工知能ロボットなのだ。簡単に、感情に流されることはないのだが、最近、人工知能の動きに問題を感じ始めていた。いったい、なにが、どのように変化しているのか、まったく、不明だった。かつてのような明晰、快活というスムーズさが、なんとなく、ぎこちないような感じなのだ。
工藤博士の国際会議での発表は上々だった。多くの人が、アダムス4世の登場を、はやくしてほしいという声が聞こえた。アランは、最新CPUの動向に関する発表会に参加して、最近の動向について、発表を聞いた。
コンピュータCPUの速度の法則して、知られるムーアの法則は、限界に達しており、それを乗り越えるには、原子レベルまで細分化された構造が必要だったが、もはや、そこまで、細分は不可能だという発表があった。CPUの高速化と微細化によって、CPU自身の発熱で、CPU自体が崩壊してしまう現象も報告されて、MITの液体窒素で閉じ込める方法も有力視されていた。コンピュータが巨大プールのなかにつかり、コンピュータから発せられる熱で、液体窒素のプールは、沸騰するという激しさを、映像が映し出しているのを、アランは、驚きをもってみた。CPUの発熱は、すごいと改めて、感じた。
国際会議には、さすがにタンバ国からの参加はなかった、ゴードンも研修生なので、さすがに、国際会議に来られなかった。
国際会議が終わると、工藤博士と奥さんは、京都奈良旅行モードになった。
何の目印のない大草原のようなタンバ国に育ったアランには、方位感覚が備わっていた。それに引き替え、工藤博士の方向音痴は、際立っていた。しかし、それに引き替え、工藤博士たちの作った自動運転技術と地図ナビゲート技術は、世界最高レベルであったので、工藤博士の方向音痴もあまり目立たなかったが、問題は、ホテルの中までは、ナビゲートしにくいことだった。まさか、ホテルのなかで、地図ナビゲートが必要だとは、だれも思わないからだ。
京都の寺や神社を巡った。工藤博士と奥さんはあきらかにルンルンであった。アランはあまり出しゃばらないようにしたが、工藤博士が、熱心にお寺や神社の説明をしてくれるのを、可能な限り理解しようと、頑張っていたが、アランは、仏教や神道に関する知識はほとんどなかったので、可能な限り理解したふりをして、可能な限り、言葉を記憶にとどめて、あとで、調べようとおもった。パンフレットや資料は、可能な限り集めた。スマホも可能限り、活用して、工藤博士の話の理解に努めた。工藤博士は、明らかに人格が変わるほどに、生き生きとして、水を得た魚のようなという表現そのものであった。
奈良では高野山に上り、密教のお寺を巡った。工藤博士は、明らかに何かを探りあてようとしていた。子供のころ、田舎のひいおばあちゃんに秘密の特訓を受けた記憶が、ちらほらを蘇ってきて、明らかに口数が少なくなっていた。工藤博士はならった言語はいったい、古代日本語なのか、古代インド語だったのか、謎のままだったが、ここには、なにか、その片鱗がありそうな気がした。ひいおばあちゃんに習ったことばを、今だ、かつて、他所で見たことがないのだった。もし、その言葉で書かれた本が、どこかにあれば、それを解読する自信はあったが、そのことばで書かれた本どころか、文字すら見かけたことはないのだ。ひいおばあちゃんは、徹底して秘密にしていたので、ひいおばあちゃんが教えてくれるもの以外に、その文字の痕跡は、工藤博士の育った家の中にもなにも存在していない、ひいおばあちゃんとの完全な秘密であった。おかげで、工藤少年は、日本語の読み書きが、非常に苦手な子供になってしまった。特に漢字の書き取りは、まったくお手上げだった。
アランは、工藤博士が寡黙になったのを幸いに、お寺めぐりを楽しんでいた。タンバ国には、お寺や神社が存在しなかったので、こんな建物があってもいいなぁと思った。仏像もなんだか、素敵な気がした。
アランは、大きな曼荼羅を見て、衝撃を感じた。これは、僕たちが探し求めていた3次元CPUの展開図そのものではないかと思ったのだった。
大発見だった。同じCPUを単に組み合わせるのではなく、いろいろな役割のあるCPUを組み合わせれば、いいのだと言うのが、アランの閃きだったのだ。




