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ナロハ国防大臣室での出来事

ナロハ国防大臣には、その役職と冷淡さに関わらず、時々見せる満面の笑みと器用なウインクがある。

タンバ国の国民の殆どが、ウインクをすると、両目を閉じてしまうか、動いてしまうのに、ナロハ国防大臣のウインクは、乱れなくウインクができるのだった。ナロハ国防大臣の奥さんがとても美人なので有名なのだが、ナロハ国防大臣のウインクで、結婚できたに違いないと、タンバ国の国防軍では、信じられていた。


ナロハ国防大臣の最近の心配事は、白人系のロジャーたちが、活躍していることだ。フランスや中国の企業もどんどん進出して、西洋系、東洋系などいろんな民族の人たちが増えてきたことだ。もちろん、男性だけではなく、女性も当然、増えてきている。色白で、美人の女性を町で見かけることも、珍しくなくなってきた。もちろん、イケメン男性も、見かけるようになった。

ナロハ国防大臣には、奥さんが、自分を愛していることに絶対の自信があるのだが、と、いっても、人の心の中は、伺いしれないので、不安もないわけでない。なぜなら、自分も白人の美人を町でみかけると、この人を結婚したら、どんな人生がおきるだろうと想像することも、無い訳でないのだから、妻も、イケメンをみかけて、いろいろ考えることもあるだろうと、思うのだった。


バージルが、ネットワークセキュリティの検査に、国防大臣室を見回したとき、盗聴器を2つ見つけた。どうして、見つけたのかは、やはり、魔法か妖術のようであった。バージルは、たしかに、盗聴器発見器をもっていたし、その機械は、たしかに反応をしていたが、その発見器より先にその場所を特定していた。バージル自身が、盗聴器の電波を感知しているかのようだ。発見器は、自分の確信を念のため、確認するという役割しか無いようだった。しかも、バージルは、既に機能を停止した盗聴器を3つも発見していたのだ。それは、寿命がつきて、電波を出すことはなかったので、発見器では絶対に見つけられないものであった。


バージルは、5個のうち、4個は、前大統領時代のもので、取り付けて、大分時間がたってしまっているといった。前大統領時代の動きを、フランスや中国が盗聴していたに違いないといった。のこりの一つは、最近ものので、誰が取り付けたのかは、解らないといった。バージルには珍しいことだった。だいたいの残留思念のようなものがどんなものにも残っているはずだが、これには、それが見当たらないのだ。バージルはそれ以上、わからなかった。


でも、この国防大臣室の盗聴器は、これ以上ないということは、確信があった。

作業を終了して、テーブルの上に並べられた5個の盗聴器の残骸をみて、ナロハ大臣が、ご苦労といって、ご自慢の紅茶をいれて、バージルの差し出した。

ナロハ国防大臣は、若い時に、イギリスの軍隊に研修生として2年ほどいったことがあり、イギリス風の文化をどこかに、身につけていた。

ナロハ国防大臣は、あまり、自分のことはしゃべらないのに、ぽろり、僕がウインクを上手にできるのは、イギリス軍隊仲間に、ウインクができないと馬鹿にされたので、鏡をみながら、必死で、練習したのだと、バージルに話した。めずらしいことだった。そして、バージルに向かってウインクをしてみせた。

すると、バージルは、ゾクリと、体のなかをなにかが通り過ぎた。

奇妙な感じが、残っていた。なんだろう。


バージルは紅茶を飲み終えると、大統領執務室に大統領の奥さんが2つの盗聴器をしかけていたと、笑って話した。ナロハ国防大臣の入れた紅茶はとてもおいしく、気分をリラックス効果があった。こんなにおいしい紅茶を飲んだのは初めてだった。


バージルは、盗聴器の残骸を、捨てるために持ち帰ろうとすると、ナロハ国防大臣が、自分が処分するので、そこに置いておけといった。

そして、かわりに、戸棚から取って置きのウイスキーの瓶を取り出して、ご苦労だった。盗聴器を見つけたくれたお礼といって、その瓶をくれた。


バージルは、その瓶をもって、部屋をでると、スコットとジョンを呼んで、このウイスキーを飲もうと考えていた。なにかツマミが必要だな。帰り道になにか、買って行こうとぼんやり考えた。



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