表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/284

ゴードンの新たな実験 大ザリガニをやっつけろ

ゴードンが、空気中から電気取り出す実験は、行き詰まっていた。空気中から電力を回収するためには、巨大なアンテナがケーブルが必要になり、その巨大なアンテナやケーブルを維持管理することは実現不可能と思われた。現実的には、太陽電池や風力発電のほうが、よいように思われた。


いつものように早起きをして、湖に潜った。夏を過ぎたフィンランドの湖を潜るのは、そろそろ限界に近づいていた。ところが、ノンキアの社員にそれを話すと、会社のプールで泳いでもいいんだぞと教えてくれた。温水機能で、冬もそんなに冷たくないとのことだった。驚いたことに、フィンランドの人たちは、真冬でも、湖で水泳をすると言い出した。ゴードンには、信じがたいことだが、ノンキアの社員は、冬になったら、フィンランド人が湖で泳ぐのをみせてくれるという。健康にいいとのことだ。

ただただ、ゴードンの理解を超えていた。


ノンキアの社員は、エバのために、ノンノをつくって、エバにあげた。どうみても、ムーミンの頭に小さな赤いリボンをつけただけにしか、みえなかった。もしかすると、ノンキアの社員は、その赤いリボンをマジックで書いたのかもしれなかった。ゴードンには、それ以外の違いを見つけられなかった。


エバは、とても喜んで、いつも持ち歩くといった。ゴードンが、ムーミン人形をだして、エバのノンノ人形の前並べると、ムーミンとノンノはまるで、マンガのように、もしくは、生き物のように、会話をしだしたのだ。その様子は、どうみても、自立的に生きて、会話しているとしか思えなかった。


しかし、ゴードンやエバは気づくことはできなかったが、ムーミンとノンノは、見かけの会話以上に、小電力無線通信機能を介して、膨大な情報のやりとりをしていたのだった。

この機能は、まだ、公開されておらず、その実態は不明だが、ノンキアの新製品の世界戦略の一つとして、研究をし続けていた。


ゴードンは、1mほどの大きさの魚ロボットをつくっていた。エバが面白がって、なにに使うのかと聞くと、ゴードンは、これで、湖の底にいる大ザリガニをやっつけるのさと、すごくまじめにいった。

エバが、そのことばに、吹き出して、大笑いをすると、ゴードンも、笑い転げていた。


どうも、ゴードンは、海洋汚染対策を考えているようだった。魚やウミガメが、海に浮かぶビニールやプラスチックを食べてしまうのなら、同じように動く魚やウミガメのロボットをつくって、そのビニールやプラスチックをたべてもらうのがいいというのが、ゴードンの主張だ。


このロボットが食べたビニールやプラスチックは、ロボット内の仕込まれたビニール袋の中に蓄えられ、一定の大きななると、体外に排出される。そのとき、その袋は、ローブで繋がっており、あとで、そのロープを引き上げれば、たくさんのビニールやプラスチックが回収できるという構想だ。

エバは、それを聞いて、イスラエルのTEI社に報告すべきか、迷っていた。問題が多すぎると思う。

だいたい、効率が悪い。たくさんの魚ロボットを海に放していいのか?もし、魚と間違えられて、網にかかってしまったら、どうするのか。1mとかなり大きいので、他の魚がたべることはないと思うが、どうなのだろうか?

自立航行しても、このロボット自体がゴミになる可能性も大きい。長いローブに繋がったビニール袋も、舟のスクリューに絡まってしまうかもしれないし、いろいろ問題だらけだな。


それより、100m、500mという巨大な船をつくって、海のゴミを一挙に回収するほうがよいかもしれない。


まあ、ゴードンのアイデアも、今度も実現しそうもなかった。アランにいうと面白いアイデアをくれるかもしれないが。


エバが、「このアイデアは、実現むずかしそうだね」というと、ゴードンも、「難しいかもしれないな」と、いった。


「ところで」と、ゴードンは、「この魚ロボットには、秘密兵器があるんだ」といって、魚ロボットを持ち上げて、なにか、操作すると、魚ロボットの口から、鉛筆ほどのものが飛び出して、エバの胸の膨らみの中心にぶつかった。

ゴードンが、これが、大ザリガニをやっつけるために秘密兵器さと、言おうとする口を開く前に、エバの右手が、ゴードンの頰をひっぱたいていた。

ゴードンの手から、魚ロボットは、空中に跳ね上がり、床の上に落ちて、壊れてしまった。


エバは、すでに、ドアの向こうに消えていた。

落ちた魚ロボットは、力なくピク、ピクと尾びれを動かしていた。


大ザリガニをやっつける作戦は、難しそうだ。

ゴードンの頰には、エバの手形のあとが、しばらく残っていた。


机の上の置かれたムーミン人形とノンノ人形は、首が動いて、互いの顔を見つけて、無言で、ニッと笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ