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僕らは天才じゃない  作者: 七寒六温
21/31

(庭野 正)

俺と宮城が付き合い始めてから、2か月がたった。早い者でもう2か月か……

本当のカップルだと、2か月記念日なんてものをするみたいだが、俺らは付き合っているわけではないし。まあ彼女の場合、本当に付き合ったとしてもそんなことはくだらないといって、イベント事は毛嫌いしそうだが。

許されるのは、サンタクロースの来日とハッピーニューイヤーくらいか。チョコレート交換会と仮装大会には参加しなさそうだし。


相変わらず彼女は1人で飯を食べているらしい。誰も彼女と食べようとはしない。俺が一緒に食べると言ったが、彼女に断られた そんなことはしてほしくないと。

受けている本人が、いじめじゃないと言い張るため、学校側もこれをいじめとは認定せず、そのことになるべく触れないようにしている。


だけど、最近は、自殺でもされたらマズいと思ったのか、中途半端な正義感か、連絡事項等の必要なことだけは彼女に伝える女子生徒が数名いるらしい。


「1人に慣れてきた。そもそも元々私は1人だったし」

宮城は、あれから2週間ほどで、テニス部を辞めた。本人は経済的な理由で家計を支えるためと言っていたが、本当は部活内に流れる空気感が嫌になり、行くのが嫌になったのだろう。




「おい、何だよ!」

今日は何となく1人でと思い歩いていると、すれ違いざまに、話したことのない男から突然 頬を殴られた。

突然のことでつい 声を荒げてその男を突き飛ばした。彼は簡単にその場に倒れ込んだ。


頭にくるだろう普通。

突然 人に頰を殴られて怒らないやつなんているのか?この時ばかりは、俺も、いい人を演じることは出来なかったが、さいわい誰にも見られていない。


「誰だよ お前!」

そう言って倒れている男の顔を見る。殴ったのはお前の方なのに、彼の方が涙目になっていた。何でお前が泣いているんだよ。


「ああ、君か……」

彼の顔を見て気づいた。

名前は知らないがいつも教室の隅で3人集まって楽しそうに会話している。いわゆる陰キャラと言われるような集団ではあるが、本人たちはいたって楽しそうだ。普通に羨ましい。彼らの笑顔が脳裏によぎる。好きなものを楽しそうに熱く楽しそうに語っている彼らの姿が。


俺に持っていないものを彼が持っている気がして、無性に腹が立った。 

固い結束……友情……

それだよそれ それだよ!それを俺にもくれよ!



倒れている彼の胸ぐらを掴み無理に起こしてから、彼の右頬を1発 さらに左頬を1発強めに殴った。


「イライラするイライラするイライラする」

男を殴ったところで何も解決はしない。

余計にイライラした。床に横たわっている彼は間違いなく泣いているというのに、俺には彼が全てを悟ったうえで半笑いしているように見えた。


「お前のせいだ、お前のせいで」

何なんだ、本当に何なんだ?俺が何でお前に恨まれなければならない。もしかして、宮城か?彼女のことが好きだったのか?


何? なんなら譲ってやろうか?

俺は、別に彼女のことが好きではないし、

彼女も俺のこと好きなわけではない。そもそも付き合っているわけでもないから、今すぐ別れたことにしてやる。それから告白するといい。彼女がOK出すとは思えないが、それで分かるだろう。君が怒る相手は俺ではないということを。


推薦しといてやろうか彼女に。

話ならしといてやるよ。お前のことが好きな男がいるらしいぞって、ただ暴力を振るうやつだから気を付けろって。


「お前のせいだからな!」

「お前のせいで、青木さんは涙を流すことになったんだぞ、お前のせいだ!」

「謝れ……」

「今すぐ僕に、そして青木さんに謝れ!」

青木……何だ? 知らない。

彼に熱く訴えられたが、俺は知らない。誰なんだそいつは?俺の彼女となっているのは、宮城だ。何を勘違いしている?


青木という人は俺の案件ではない。

俺は青木なんて女と付き合ってもいないし、告白もされていないはずだ。そんな俺が何でお前たちに謝らないといけないんだ。 


「青木、それは誰だ? 僕は知らない。話をしたこともないからね」

「君は何か勘違いしているよ。他を当たってくれ」

とりあえず、冷静さを取り戻すことが出来たが、正直 めんどくさいやつに絡まれたもんだ。勘違いで人の頬を殴ってくるなんてとんだ失礼なやつだ。


「勘違いじゃない。お前のせいだ」

「青木さんは、お前のことが好きだったんだ。なのにお前が付き合ったのは別の女だった。そのせいで、そのせいで青木さんは涙を流すことになったんだ」

待てよ、八つ当たりにもほどがあるだろ?

知らねーよ。実際、青木という女は俺に告白すらしてきていないんだぞ。俺にどうしろっていうんだ?どうすることもできないだろ?


面倒くせえ、面倒くせえ、面倒くせえ 

何なんだよ全く。付き合い始めたってなって2か月たってるっていうのに、今さら何で責められなきゃならないんだよ。これだから嫌なんだよ、恋愛ごとに巻き込まれるのは色々と厄介なことになるから。


今のままだと俺自身がモヤモヤしたままになるから、1つずつこの男に確認を取ることにした。


「君は、その人のことが好きだったのか?」


「ああ、僕は青木さんのことが大好きだ現在進行形で!」

「馬鹿にされたっていい。俺は自分の気持ちに嘘はつかないって決めたんだ!」 


「ふん。そうか よかったじゃないか」

青木さんか青山さんか青田さんか、別に誰でもいいけど。

よかったじゃないか、君にとっては?

俺は君が好きな人を奪ったわけではない。彼女はフリーだ。むしろ俺のことが好きだったというのなら、彼女が失恋したであろうタイミング、傷付いていたタイミングがチャンスだったんじゃないのか?そのタイミングで告白してみればよかったろう。告白する勇気もないくせに、告白できなかった自分を責めずに、俺に八つ当たりをするんじゃないよ。


「よくない! 青木さんが悲しんでいるんだ、いいことなわけないだろ?」  


「分からない、何を言ってるかサッパリ分からない。やはり俺が謝ることじゃない」


「なんだと、言い訳するんじゃない!」

「これは、お前が謝るべきことだ、ことなんだよ。だから、謝れよ、早く謝れ!」


「よしいいよ。分かった。そこまで言うのなら謝ってやる。ただ、最後にこちらの質問にあと1つ答えてはくれないか?」


「質問?」

「分かった、質問を受ける」


「君は、青木さんと、どうしたいんだ?」

「付き合いたいのかい? キスしたいのかい? それともただ1回だけ抱きたかったのか?」

「彼女に幸せになって欲しい。それは偽善だから、そんな答えではなく、君の本心を知りたい。それが分かったら謝るよ」


「…………」

彼は黙っている。即答できないものなのか? 恋愛って何だ? 人を好きになるって何だ? 君の好きって気持ちは純粋ではなかったのか?


「イライラする イライラする 」

何だこの沈黙は。

俺に告白してきた女子たちも俺と何がしたかったのだろうか? 俺と付き合っているというステータスが欲しくて告白してきたやつもいるんじゃないのか? 自分ならあの庭野君でも断らないだろうって、俺で試したんじゃないのか?


「知ってたよ、私じゃダメだよね」

と捨て台詞を吐いて泣いたの女がいた。

自分ならOKをもらえると自信を持っていたんだろ? 最初から結果を予想できていたというのならば、断られたとしても泣かないし、そもそも告白なんてしない。


神様も不公平だ、俺にこんな才能くれなくてもよかったのに。貰い手は別にいくらでもいただろ?


結局彼は、俺の質問に答えることができなかった。彼女に幸せになって欲しいという安易な答えを最初に潰しておいたから答えられなかったのだろう。


「答えられないのなら、俺は謝らない」

「じゃあ、交渉決裂だな」


「くっ、ふざけるなー」

「お前が、お前が悪いんだよ!」

また、彼が掴みかかってきた。こいつもどうしていいのか分からなくなったのだろう。


今度こそ、少し強めに殴るか、正当防衛だしと思っていた所、 


「お前ら、何やってる! 喧嘩か?」

彼の出した大きな声をどこかで、聞いていたのだろう。それ以上に大きな声を出して、教師の大本が止めに入る。大本は周囲の教師や生徒たちによく見られたいのか、学園ドラマの見過ぎか知らんが、1つ1つの動作がオーバーで、ただのパフォーマンスに見える。


「お騒がせしてすみません先生。大丈夫ですよ。少し言い争いはありましたが、これは、喧嘩ではありません」


「って、庭野と小野か!!」

「おい、これは誰にやられたんだ?」

「誰だ? 川中か、横山か?」

明らかにこの場には、2人しかいなかったはずなのに、大本は、俺たちが喧嘩したとは、考えなかったようだ。俺も彼も、特段問題児ではないからその様なことをするタイプだとは思わなかったのだろう。全く関係ない2人が、少し素行が悪いという理由だけで、犯人ではないかと疑われた。


「違いますよ、その2人は関係ないです」

「ちょっとした言い争いを僕らでしただけで、喧嘩をしたわけでも、巻き込まれたわけでもありませんよ」

「そうだよね?」

俺がそう言うと、彼も同意したように頷く。


「そっか、それならいい 言い争いもほどほどにな。てか、お前たち仲良かったんだな、先生知らなかったよ!」

とだけ言われて、それ以上 聞かれることはなかった。とりあえずは止めにきたものの、詳しく話を聞いて、大元を探って解決しようとする気はないようだ。


「この方がお互いにとってよかったよね?」

「君も、こんなくだらないことで目立ちたくないだろ?」


「もういいかな、行っても?」

何で俺がこいつにこんな言い方をしないといけないんだ。


「あ、じゃあ 一言だけ、謝っておくよ」

「申し訳なかったね」

全く気持ちはこもっていないが、とりあえず謝っておいた。謝る気はさらさらなかった。むしろ謝って欲しいくらいだったから。


「それと、俺はこのことをチクるつもりはない。君が誰かに言いたいのなら言えばいい」

立場を考えろよ、立場を!

俺とお前に人気の差があるってことを。その差は歴然で、逆転することはおろか、差を縮めることさえ難しいってことを。


俺は言った通りに、このことを誰にも話さなかった。それなのに、このことが、学校中に知れ渡った。自らで噂にしたのか、話した相手にバラされたのか知らんが、全く馬鹿なやつだ。

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