第5話 今までを思い出す4
私の発熱が治まってからも、私が自分の部屋から屋敷内でも出歩かないように!と公爵家で雇っている侍医とお母様の両方に言いつけられていましたので、私は部屋の中にいますわ。
私付きの侍女のベルとリンダは、私が部屋から出ないようにと、私の部屋の扉の外側に、2人が交代しながら見張ってます。
彼女達が部屋の中に入ってこない状態をこれ幸いにと、真新しいノートへゲームの内容で思い出せた事を端から書き出していきました。
ここで生きていくのに、覚える事が沢山あるんですもの。思い出したばかりの前世での記憶を時間の経過とともに少しづつ忘れていく可能性があるからこそ、今なんですわ。
思い出してすぐの今ならば、細かい所まで覚えているでしょうし、まだ忘れていないのですから。
まぁ、それも、熱が下がって元気になったのにも係わらず、安静を言い渡されて暇だったっていうのもあるんですけどね。あ・は・は!
前世の私は、20代半ばで、働き盛りの会社員だったようです…。
その中で、通勤のお供であり、暇つぶしにと楽しみにしてプレイしていた携帯(電話の中の)アプリの中にあった乙女ゲームが、この世界にいて実在している人物の名前と容姿(まだ、私とレオ王子だけでしたけど)が全く一緒だったんです。
その乙女ゲームの中、レオ王子ルートで出てくる悪役令嬢と言われていたのが、この私、エンディス・キャトルフィーユ公爵令嬢なのでした…。とほほ。
王子ルートのエンディングを思い出したのが一番最初だったから、インパクトは充分でしたけどね。
レオ王子を含む攻略対象として、まずはこの国の第一殿下のレオ王子。レオ王子と仲の良い従兄弟の公爵令息。宰相家の次男である侯爵令息。将軍の子息である伯爵家の嫡男。子爵家の子息で、商売人の気質の強い嫡男。
レオ王子以外の攻略対象者達の容姿は思い出せたけど、その名前が思い出せないという奇妙な状態なんだけど、どうしよう?
思い出せない所は、仕方ないと割り切って、名前以外の覚えている事を書き出していった。
その攻略対象ごとに起きる事柄を書きだして、どんな結末を迎えたかも書いた。
乙女ゲームによくいる、ありがちなメンバー構成だったけど、ゲームをやっている時は楽しかったなぁ。
近日発表予定のシークレット攻略対象が追加されるとのお知らせで、そのシルエットと簡単なプロフィールを見た所で、ワクワクして嬉しくなって、つい、注意力散漫になってしまったんだよね。
うん、その時点でもう日頃の過労と寝不足がプラスされていた私だったし、注意力散漫が足されて、通勤途中のどこかにあった、多分、駅かな?その階段の上段からあっさりと落ちたんだっけ。
そのせいで、多分、命の灯が尽きたのでしょうね。南無~。
思い出した、この乙女ゲームの中で、攻略対象になってないのは、私の弟と第二殿下であるリオン王子。
レオ王子と同父母で、その下には側妃様方の産んだ姫が妹として何人もいる状態。
殺されなかったのも、王妃様の子供で、レオ王子のスペアだからと言う理由から。ゲームの中でも神出鬼没で、身軽に動ける立場だったなぁ。
それと、私の住む隣国にあるお母様の生家にいる、伯父様の子である従兄弟達。ええと、3人だったっけ?
乙女ゲームの中では、私には、隣国に従兄弟がいるって一言だけ、書いてあっただけだから、登場人物でなかった筈。
実際は、我が家に訪れるってお母様から聞いた時に、男の子だって聞いてガッカリしたっけなぁ。それ以降は、従兄弟達に興味が無かったし、伯父様にはご挨拶したけれど、我が家に滞在中も従兄弟達とはすれ違っていたし、うろ覚えなんだよね。存在自体をなかった事にして、すっかり忘れちゃってたなぁ。
ポラディスに聞けば、従兄弟達の事を教えてくれるかな?
それに、我が家の筆頭執事のアロンゾもイケメンだけど、年齢は大分、年上だし、乙女ゲームの中には登場していなかったから、大丈夫よね?
そうして書きあがったノートを改めて読んでみると、攻略対象者ごとの結末にはどれも私が関わっている上に、どのルートになっても、私の最期は「悲惨」と言う一言で、言い表わせるかのように酷かった。
国外追放後に森で飢え死にとか、獣の餌になるとか、山賊に襲われて殺されるだとか。
やってもいない事を捏造されての冤罪や、他の人のやったり、起こした罪を着せられてーからーの、みせしめの為だけに行われた処刑だった。
その処刑も、民衆にとってはある種の娯楽で、ね、王家や貴族への鬱憤をレオ王子や陛下が、私にぜーんぶ色々と押し付けての処刑だったの。
民衆の不満や鬱憤を晴らす為だけの見世物にする為にだけ、わざわざ私を火あぶりにしたり、ギロチンで処刑したりしたんだから!怖っ!
ゲームの中の悪役令嬢だった私は、密かに好きだったレオ王子に婚約破棄を告げられ、振られたショックで、私が下町を彷徨うルートもあるのよ。どこまで、私を使いまわしたシナリオよ!最低!
フラフラと彷徨う私を見ていた者達に貴族の令嬢を売ると高い金になるのだと娼館に売られてしまうとか、奴隷としてどこかの国に連れていかれてから死んでしまう結末もあった…。
同じく私が彷徨っている最中に、攻略対象者達から送られた物をヒロインが売り払って作った金で、ヒロインから取り巻き子息経由で雇った暗殺者に、私が殺されてしまう結末もあったのよ。使い回しもいい所よ!最低でしょ?!
この乙女ゲームは、差別化を明確にするってコンセプトで、攻略対象者には見せないヒロインの裏の顔があって、時折、ヒロインが見せるそのゲスい所が不評だったっけなぁ。
でも、普通のゲームだったら、ヒロインにそんな所があるのは変だよね。ヒロインがゲスな面を見せる乙女ゲームが他にはなかったので、そういうヒロインは珍しいと言われ、ヒロインを支持する人達も結構いたんだっけ。良い面しか見せないヒロイン達よりもよっぽど人間らしいヒロインだって。
そんな人達は親しみを込めて、ヒロインをゲスヒロイン、略してゲスロインって名付けて、親しんでその呼び名で呼んでいたわね。
今、考えると、凄く変だわ。呼び名もそんなヒロインも本当に。
悪役令嬢である私から見ても、ゲーム内でのヒロインの言動や行動自体がゲスくて最低だったと今でも思うわ。
まさか、ヒロインも転生者だったりしないわよね?
…これも乙女ゲームの世界に転生した世界では、ありがちなお約束ちか設定でありえそうね…。
ヒロインの名前は、自分で名前を付けないデフォルトの時の名前は、オレイヌ・ダットン男爵令嬢だったな。
アロンゾとお母様には、私が前世で読んでいた物語だと話さなければならないわかしら?それとも、寝ている間に、何度も同じ夢を見せられている。どうやら将来起きる出来事みたいだと話せばいいかしら?
ゲームの中で起きる出来事が実際に起きそうなのは、レオ王子と私の婚約でも実証されたのだし、この先に起きる事を阻止するためにも、私の話を信じてもらえるようにするには、どうすればいいかしら?
まずは、ヒロインの監視をする人員を最初に手配しなくちゃ!ゲスいんですもの!あのヒロインが実在するなら、私はヒロイン相手に気が抜けないんだからねっ!
うーーん、国内外で起きていた出来事に関連していた事も併せて、書いていった方がいいわよね。そうしたら、私の言う事の信憑性も増すでしょうし。
私が悲惨な結末を回避する為には、色々とすることが多いのだと、今、気付きましたわ。
***
安静が解かれてからの私の毎日は、王家から派遣された(王妃様の息がかかった)専属執事のアンソニーに色々と教えてもらいながら、面倒もみてもらってますの。
私も、歯を食いしばりながら、精力的に学んで、お母様方に悪夢を見るので怖いと言って相談を始めた所よ。だから、私は夜中もこっそりと本を読んで、知識を増やしていったのです。
ほら、そこは、悪夢で寝不足になったという設定に合わせて、私が根不足になるのが丁度いいでしょう?
時間も勿体ないから、一石二鳥を狙って、頑張っているんですのよ。
それと、元々がお母様付きだった我が家の筆頭執事のアロンゾも、お母様と一緒に出て行くのに備えて、この家の執事達を日々、鍛えていますわ。
弟のポラディスからは隣国にいる従兄弟達の話を聞いて、従兄弟達が3人だったとの確認が取れましたし、ポラディス自身も、私と父上の交流がほぼなかった事実や、お母様からの話をもう一度聞いたそうで、「僕の大好きな姉上を大事に出来ない父上とは、僕自身からも会う気も話す気にもなりません。」と言って、会うのも話すのも避けているんですって。
父上の自業自得ですわね。ざまぁですわ!
そんな生活をしていた私は、うん、分かっていたけど、倒れました。無理を重ねたので、いつかはそうなるだろうって思ってたー。
そこで、倒れた私が目覚めた時に、お母様とアロンゾとポラディスを呼んで、前世で知っていたゲームの中身を私が見た悪夢として、語ったのでした。
レオ王子と婚約してから見るようになったと言う悪夢のような結末を。だから、この国から私も出て行きたいのだと。
3人は、私の話を聞いたばかりの時は怪訝そうにしていたけれど、夢の続きだとして、これから起きるであろう事を語っておきました。
「近々、大規模な水害が南のサウス領で起き、その援助で貴族からの寄付金を王家から各家に出すように言われるでしょう。
それと、大規模な水害ではないかもしれませんが、我が公爵家以外での領地でも、水害が起きるのです。それに備えれるように、援助出来るように、用意をお願いします。」
お母様は半信半疑で、王妃様へ個人的な手紙を出してくれたそうです。水害が起きる可能性があるのだと。アロンゾは、公爵家の領地への援助や支援が出来るようにと動いてくれました。
ポラディスは、姉上の言う事を信じたいけれど、まだどうしていいのかが分かりません。と言って、いつも通りに過ごしていました。




