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第22話 ご令嬢、夜会デビューする

 …拷問のようなコルセットの締め付けに耐え、髪を結うとか化粧をするとかを経て、夜会へ行ける支度が整って、自室から待ち合わせをしていた玄関ホールへ降りてゆくと、ポラディスが貴公子に見えるような装いで、私を待っていました。


「姉上、素敵ですね。」

「ポラディスもカッコいいわ。」


 姉弟で褒め合っていると、お婆様とお爺様もいらっしゃいました。


「最初のダンスをポラディスにお願いするわね。」

「いいですよ。私も、獲物を狙うようなご令嬢達に囲まれたくないので、姉上の側にいますよ。」


「私も今日が夜会デビューだから余裕がないのよ、助かるわ。」

「姉上も緊張するんですね。」

「ひどいわ。私も普通なんだから!」

「はい、はい。」


「ふふっ、仲のいい姉弟ね。」


 お母様がいらっしゃいました。お母様は、お爺様やお婆様とご一緒に入場するのだそうですわ。初恋の君は、王城での警備の仕事だそうですので。



「では、皆で行こうか。」


 お爺様の声掛けで、べ・ネラン家の大きい馬車に乗って、王城へ向かいました。


 王城は、貴族の方達でごった返していましたわ。


 こんなに貴族の人達がいるのね、なんてお上りさんの様に呑気に見ていたけれど、夜会会場に着くと、どこからか私を見る視線が幾つもあったのに気付きました。


「姉上は、モテますね。すれ違う若いご子息達が振り返ってまで姉上を見ていましたよ。」


 こそこそと私にそう言ってきたポラディスにも、私の方からも言い返しましたの。


「ポラディスを見て、頬を染めているご令嬢がここに来るまでに何人もいましたわ。肉食系でないように祈りますわ。」


「姉上こそ、気付かないうちに、ぱっくりと喰われないようにしてくださいよ。」


 そんな私達ですが、お婆様とお爺様の後ろに付いて歩いていたので、お爺様やお婆様の知り合いに紹介され、雑談をしていました。


 お爺様やお婆様の知り合いでも、良くない噂のある者や、異性の間を遊び歩いている者達には、挨拶しただけで済ませ、私達を紹介しないでにこやかに笑ってスルーして、気にしないように(かわ)してくれました。


 私達には、どこの誰それかの説明と、どうして紹介しなかったかの短い説明をしてくれたので、分かり易かったです。


 そうしているうちに、王家の皆様のご登場です。


 公爵家から順番に陛下と王妃様へご挨拶をするように、順番に並んで、静かに待っていました。


 私達の家は侯爵家ですので、すぐに順番が回ってきました。


 お爺様が伯父様が外交で不在だと告げ、娘の産んだ孫を今回、養子にしたのだと言って、私達を紹介しました。


「侯爵家の養女として初にお目にかかります。エンディス・べ・ネランと申します。」

「同じく、侯爵家の養子となりました、ポラディス・べ・ネランと申します。」


「そちらが隣国のロンデリン国へ行った娘の子か。娘が離縁をして戻って来たのだと聞いたぞ。済まないな。苦労させただけになってしまったようだ。」

「いえいえ、陛下の為、国の為と理解していましたので、娘の再婚は、娘の希望通りにしようと思っております。」


「ふむ。では、新たに養子にした孫達の婚約は、まだ未定であると?」

「はい。エンディスの方は、孫娘ですので、早く良い方と婚約させたいと思っています。

 孫息子の方は、(しがらみ)がなくなったので、自由にさせようと思っていますので、結婚するしないも本人に任せています。」


「では、第3王子がまだ婚約していないのだ。ダンスをするように勧めておこう。」

「有りがたきご配慮を承りまして、ありがとうございます。

 孫娘の環境が良くなかったせいで、沢山の苦労をしたのだと聞いていますので、王子方と話を孫娘がすれば、孫娘も気が紛れますでしょう。」


 お爺様は、レオ王子は私を大事にしなかったし、馬鹿だったと言った。王子達との話も充分に出来る娘だと、私も会話を楽しめるでしょうからと勧めたのだ。


「得難き大輪に咲くだろう鮮やかな花をみずから手放したのだ。勿体ないと思う。

 その花さえ良ければ、3番目の花瓶でなくとも構わない。1番目でも、2番目の花瓶でもいいのだぞ。花瓶に生ける花は、まだどれも決まっていないのでな。」


 この国の王様もタヌキやキツネなんだろうな。私を王子妃候補にしたいんだ。


「そうでしたな。花瓶にも生けたい花の好みもありましょう。ダンスをするにも、誰と孫娘が踊るのかも決まっておりませんので、エンディスも助かりましょう。最初は、肉親である弟と踊ると決まってはいますが。」


 あわわ!私、王子方と踊らなくちゃならないの?!お爺様!勝手に決めてしまうなんて!


 お婆様に目線で助けを求めたけれど、ニッコリと拒絶されました。はい、王子様方と踊りますわよ!


 ポラディスと踊り終えた所に、きらびやかな衣装の青年がやってきました。この方が王子様だろうと思ったの。


「では、エンディス嬢、はじめまして。私が第3王子のレンドルミンです。まずは、陛下のご紹介に(あず)りましたので、私とダンスをお願いします。」


「こちらこそ、お願いしますわ。」


 レンドルミン様のダンスは、滑らかな動きで、私の負担にならない様に動いて下さって、踊り易かったわ。ダンスの合間に、少しづつ、政治の話もしたんだけど、変じゃなかったわ。


 第1王子のハイドルミン様は、大胆かつ大きな動きをしても、動じない踊りで、安心して、身を任せて踊り易かったわ。ダンスの合間に、特産品の話をしたの。楽しかったわ。


 第2王子のガザドルミン様は、機械のような、ダンスの教本にあるような正確な動きで踊る方で、鍛錬についての話をしたわ。面白かった。


 どの王子様も聡明で、個性的だと思ったわ。どっかの国の王子様とは、大違い。あ!リオン元殿下はそうじゃなかったけどね、年下は私の好みでないから、ね。


 4人と踊ったので、喉が渇いたわ。シャンパンの入ったグラスを給仕から受け取ってから、それを持って、バルコニーへと休憩しに行ったの。


 そこには、3人の王子様方がいて、私を待ってました…。やられたわ!待ち伏せされたのね!


 仕方なく、3人の王子様方と話をしたわ。最初は義務だったけど、話しているうちに楽しくなってきて、前世の知識を活用して、三権分立や、裁判の方法まで、思いつくだけ、前世で得た知識での話までしてしまったわ。


 お爺様が呼びに来たので、夜会会場から引き揚げて、お爺様とお婆様と私で馬車に乗って、家に向かって帰っていたんだけど、ね、お爺様から、王子妃になって欲しいとの打診が陛下からされたのを告げられたの。


 やっぱり!と思う気持ちと、ロンデリンのレオ王子から逃げるには、同じくらいの地位を持つ相手でないと、私の身が危険だと理解していたので、その場では、すぐの返事が出来ないとだけ告げたのよ。


 レオ王子のような失言大王では嫌だけど、アレよりマシだと、誰もかれもが素敵に見えてしまうので、どうしようかと悩みますわ。とお婆様に言ったら、「その位がイイのよ。求め過ぎるのは相手にも自分にも段々と窮屈になるから、それ位でいいの。」と笑い飛ばされたのよ。


「馬車にあの子がいないのはね、初恋の君の所へ、差し入れに行って、そのまま向こうへ行くって言っていたからよ。

 ポラディスがいないのはね、王子方との交流にポラディスが呼ばれたからよ。側近候補なんですって。酒盛りだから、帰ってくるのは明日の昼過ぎでしょうね。」


 いつの間に!私の知らない間に、皆、動いていたのね。


 お婆様の助言を胸に、家に帰ってからは、すぐ眠ったわ。疲れたままじゃ、正しい考えにもならないじゃない?


 夜会の翌日の昼に、お婆様から、私とポラディスに話があったの。

 ポラディスは、王城から帰って来たばかりだったから、辛そうだったけどね。


「初恋の君が娘に陥落したので、今朝、籍を入れたんですって。結婚式は身内だけで、こじんまりと行うそうよ。」


「お母様が!だって、まだ、初恋の方の所に行って、10日ぐらいでしたでしょう?」


「娘を諦めきれなくて、再婚していなかったんですって。そこに、娘が戻って来たから、逃さない様に外側から囲っていたそうよ。びっくりだわ。両片思いだったそうよ。」


 うわー!うわー!お母様!凄いわ!と私が喜んでいても、ポラディスは、ふーん。って感じだったの。


 冷たいんじゃない?と聞いたら、結婚にも、母上の再婚にも興味がないんだって言うのよ。

 その上、母上を取られて騒ぐような年齢でもないんだけど。と冷静に言われたら、何も言えなかったわ。


 私が弟のポラディスよりも幼稚なのかしら?と思ったぐらいなの。姉としては、キャーキャー騒いでいただけに、反省するばかりよ。

 男の子って、愛想がなくって可愛くないわ。小さい頃は、姉上、姉上、って言って、私の後ろをくっ付いて来たのに。つまんないわ。

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