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第2話 今までを思い出す1

女主人公エンディスの心情説明回です。宜しくお願いします。

 結局、レオ王子様と私が婚約を結ばないように出来るギリギリのタイミングで私の前世の記憶が戻ってきたものの、婚約を断る理由がどこにも見当たらなかった()()


 婚約者がすでにいるならともかく、まだその頃は婚約者が決まっていなかった私が、王家から望まれた婚約の打診を断れるでしょうか?


 はい、断れません。


 その断れなかった主な理由として、私がまだ子供であり、私の保護者と言う責任のありかが公爵家当主である父上にあったからなんです。


 お母様と父上を比べても、この国の侯爵家の当主としての権力を持って使用しているのは父上なのですもの。


 お母様が、お父様を退(しりぞ)けてでも私の婚約を無くす為には、それこそ離婚して隣国に帰るような捨て身の状態でなければ、その権力とのつり合いが取れないからなのですわ。

 それも、隣国のお爺様やお婆様と侯爵家の当主となられている伯父様のお力も借りなければならない程なのです。


 そこまでして断れます?


 それに、王家から頼まれての婚約を断る明確な理由、特に王妃になるのに不都合な理由がなければ婚約を断る事は実質、臣下としては無理なんですのよ。


 例えば、身体や知能に(いちじる)しい異常があったり、他人との差異があったりして、王となる王子を支えられないという理由ですとか。

 子を産めないような、王妃として立つ事も出来ないような虚弱体質だったり、王家にとって次代に繋げる血筋の子供を産めないという重大かつ替えが利かないような不都合な理由がない限り、私側からの辞退が出来ないのです。


 うう。今世の私の心身の丈夫さと健康は折り紙付きですわ!頭痛が今はありますけれど、知能も情緒も正常でしてよ!健康だし、知能も普通なのは当たり前だけれど、何だか悔しいですわ!


 ええと、父上が私の婚約を断わらなかった理由ですか?それは王家と縁戚にならなくてもいい公爵家なのに、何故、私が婚約する羽目になったか?って事ですよね。


 大人達(主に陛下と父上の方だけに生じている事情、その2人の間だけで成り立っているような事情なんでしょうけれど)の計算高い打算と利害の一致する何某(なにがし)かがあったようですわね。

 その内容は、仮婚約をした時点では私にも、お母様にも不明でしたけれど。


 当事者である私の方こそ、どうして私と殿下の婚約に至ったのかという本当の理由を仮婚約をした場所で是非、聞きたかったのです。

 けれど、陛下が王家の方の事情で話せないのだと告げるだけで、成人するまで事情は伏せる。内緒だって言うだけ。その事情さえ、まったく教えてもらえませんでしたの!


 そして、そもそもの始まりは、この日のメインな出来事であった第一殿下の誕生日の催しが終わり、その場に留まっていた貴族家の者達の印象に残るかのように、いかにも計算されたタイミングで、我が公爵家だけが陛下の侍従に呼ばれて出て行ったのもあって、噂話が大好きな貴族共にとっては(さえず)るのに丁度良い餌だったようですの。

 たちまち、私と殿下の婚約は(仮婚約の)翌日には城下まで噂で伝わっていたのだそうですわ。

 あとから貴族の流した噂の広がり方の酷さを知って、ショックと恥ずかしさで、3日間、自分の部屋の中に引きこもりましたわよ!恥ずかしーーーーーーーい!!


 その上、婚約をする前提で、王家の方々と私達家族が個室で面会していたのですから、この婚約を阻止出来そうな空気でも、雰囲気でもなかっただけなんです…。

 レオ王子辺りが婚約するのを盛大に嫌がってくれたら、私が仮婚約せずに済んだのに…!!


 王の臣下たる公爵家が、王家の面目を潰す訳にはいかないっていう理由もあったので、馬鹿正直に真正面から、婚約を潰す事が出来なかったのですわ~。


 陛下と父上によって、王家との婚約を私やレオ王子が断わらずにいるように、かつ、子供が逃げ出さないようにと、その逃げ道を丁寧に塞いでくれやがったんですわ!!


 まったく!余計なお世話をしてくれたもんですわ!私は王子との婚約には破滅しかみえなくて、ただただ憂鬱で仕方なかったのに…!!


 なので、本当----に仕方なく、前世の記憶を思い出した時に見たゲームで起きるような、悲惨な結末にならないように、私が冤罪や、ありもしない事で断罪され、不利な立場に追い込まれないようにする為の条件を付けたのですわ!


 この婚約だって、公爵家が勝手な事をしない様にする為の側面があるのだと、予想がついた位ですもの。


 王家にとって、目の上のたんこぶのような公爵家を抑えつけるのに、公爵令嬢である私を王子との婚約で縛り付け、王家に都合の良い人質の役目を負わされたのでしょうね。


 8歳の私を人質にするのに同情されたか、王妃様ご自身が、ご自分の幼少時を思い出して重ねてくださったのでしょうか。王妃様からのご提案がありました。


「何の説明もなく、私のように12を過ぎてから陛下と婚約したのと比べれば、8歳になったばかりのエンディス嬢は、これから先ずっと、王城での教育や社交に追われる立場にされたのですわね!

 私の時よりも低年齢なのに、ご両親から引き離される時間が増えるんですから、とっても不憫で、可哀想に思えるのですわ。」と王妃様が仰って、女性の方にも有利になる婚約条件を提案してくれたのです!


 ()()()()|、()()()()()()()()()()()()()()()()()()|!!


『王子自身に他で好きな女性が出来たら私との婚約を無効にする』って言っていたのをですね、


『レオ王子にエンディス嬢以外の好きな女性が出来たら、エンディス嬢の方からもレオ王子との婚約を無効とするように申し出が出来、かつ、婚約破棄でも無効にでもなった時には、エンディス嬢には何の瑕疵も追わないとする事と、その手続きの際、婚約を速やかに無効とする手続きを王家が責任をもって行う』という旨の条件に変えてくださいましたの!


 そんな有利な条件を王妃様の方から申し出てくださいましたのよ!やったー!!

 うふふっ。お母様もその条件には凄く凄く賛同してくださいましたの!


 その条件と私が提案した3つの条件を含めれば、私の婚約が、婚約破棄をされる未来があって変更が出来なくても、私が婚約で不利にならないと言う一点では、最良の契約が出来たのですっ!!!


 ふぅ。仮婚約として取りあえず、無事に収まって良かったと、自分でも思いましたの。


 王城ではその後、婚約についての説明があると言われ、私達家族だけ、別室に移らされました。


 その部屋には、いかにも偉そうな態度で、王家を(ないがし)ろにするなよと上から目線で話す、お腹周りがまん丸のチョビヒゲのおじさんが、婚約についての説明を私達家族に向かって、一方的に(しゃべ)ってくれやがりましたわ。


 婚約についての詳細が書かれている小冊子を私へ渡すだけの簡単なお仕事だった筈なのになぁ。


 どこでどう間違ったんでしょうか?


 懇切丁寧な上から目線の説明をしてくれなくても、私が渡された小冊子を読むだけで、婚約について理解出来るんですけどねぇ。


 たったそれだけで済む筈なのに、ヒゲおじさんが()()()()私達へ長々と説明してくれていたのは、ご自分が下位貴族で、王家と公爵家への縁を持ちたかったのと、王家へのあからさまなご機嫌取り(ゴマすり)だったみたいです。


 ヒゲおじさんの説明する話が長引けば長引くほど、お母様の笑顔が段々と冷えたものに変化していきましたので、私はそっちの方が怖かったんですよ…。


 私ですか?

 私が小冊子を読めば、婚約についての説明を聞かなくても大丈夫だって、小冊子を受け取る前にお母様が教えてくださいましたわ。


 その上、絶賛、頭痛の真っただ中にいたので、チョビヒゲおじさんの説明を聞いている振りだけをしていましたの。


 話自体を全~部聞かずにスルーしていたらからか、いつの間にか、チョビヒゲおじさんの話も終わってましたし、頭痛を誤魔化すのに眠ってしまおうかと思っていたぐらいです。

 心の中では、チョビヒゲおじさんが余計な事をするから、家にさっさと帰りつけないんですのよ!ってグダグダと文句を言ってましたけど。


 そこから、さほど王城から離れていない場所に建っている公爵家へ、私達が住んでいる屋敷の玄関前へ、うちの馬車がさくっと帰り着きました。


 冷ややかな目をしたままのお母様は、渋々、父上の手を借りて、頭痛継続中の私は、御者の手を借りて、それぞれ馬車から降りましたの。


 家に帰れたら頭痛も治まるのではないかと思っていたのに、その予想を裏切るかのように、未だに治まらない頭痛に悩まされていますわっ!!

 それでも何とか無表情のまま、顔や態度に、頭痛で痛みを堪えていると言う事を出さないようにしていましたから…。


 うちの屋敷の玄関先は公爵家に相応しく、吹き抜けの階段がある広いホールのようになっています。


 そこには、私達家族(留守番の弟は、昼寝の最中でそこにはいませんでしたけれど。)をお出迎えしようと揃っていた使用人一同、メイドや侍女、従僕から執事に至るまでの我が家で勤めている皆がキレイに並んで待っていました。


 その者達がいる前で、お母様が「私が今日、家族で王城へ行ってから起きた出来事を当主である夫に代わって説明しましょう。」と話し始めたのです。


 そんなお母様の態度を見て、また父上が怒鳴ったりするのではないかと、こわごわと、そして、マズいんじゃないかしらと(いぶか)しんでいた私は、ちらっと父上を盗み見ていました。


 何故だか、父上の顔には何の表情も見えず、静かでしたの…。

 王城で私の事を激しくしかりつけた程の怒りを見せていた父上とは違って見えました。


 それに、お母様の話す事についても何にも言わず、邪魔をせずにいましたし、話を止めたりする様子も見受けられなかったのですわ。


 それどころか、ずっと沈黙を保って、お母様の出方を探っているように見えました。

 私には父上が何を考えているのかが全く分からなかったので、どことなく不気味な感じがしましたけれど。


 まぁ、私も生まれてこの方、今世の自分の記憶を振り返ってみても、ほぼ父上とは見事に接触していなかったのです。


 だから、父親である人がどんな性格で、どんな行動をする人なのかというのも、私には全く分かりませんの。


 あぁ、まだ頭痛がとれないわ…。


 使用人の皆も、私の仮婚約が成ったのだと知らされていませんから、不安そうに、お母様の様子を見てました。そして、お母様の話す内容を聞き洩らさずにしようという、真剣な様子がみられましたわ。

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