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第16話 ご令嬢は思案する

 お母様の話を聞いた私とポラディスは、2人で聞かされた話を整理して頭の中ですっきりと理解する為にも、2人でひそひそと話し合って、個人個人で頭の中の情報をまとめようって話になりました。


 その前に、ポラディスをチラッと見ると、ポラディスも私と同じように、目を閉じて、頭の中の情報をまとめるみたいですわ。私もポラディスもお母様の子ですから、同じような癖があるのですわね。


 私は自分の頭の中で、今までの事をまとめ始めました。


 頭の中でここまでの事を整理整頓しないと、家を出れた安心感やらなにやらと一緒に、諸々のー、色々でー、私の頭の中が混乱したままになりそうだったんですもの!混乱したままの頭じゃ、ごちゃごちゃ余計な事を考えそうで、新しい生活を楽しめないじゃない!


 だ・か・ら!まとめるの!


 こほん!ええと、まずは元王妃様の事よ、ね。


 王妃様が()王妃様になれたのには、驚いたわ。離縁の準備をしていても、無理かもしれないってどこかで思っていたんだもの。


 王妃様は、陛下からの愛情はとっくに尽きているんだと思っていらっしゃるけれど、元王妃様の近くに王妃業とは関係のない男性を近付けないように、元王妃様の周りから徹底的に関係ない男性を排除をするようにと通達されていたんですって。


 私も最初にその話を聞いた時には、陛下が元王妃様との新婚時代に通達して、いつの間にか解除し忘れたんでしょう?と、思ったわ。


 でもね、陛下と元王妃様の結婚十年を超える頃には、お二人の間には冷えた空気があったそうで、離縁も間近だと噂されていたそうです。陛下のお渡りが元王妃様の所には、もうこの時点で何年もなかったし、側妃達の所へは毎夜、通う程の陛下だったから。


 元王妃様は、素晴らしい方ですもの!離縁されるか、臣下に降嫁されるのではとの噂に、その王妃様のお眼鏡に叶いたいと思う男性が何人もいたんだそうで、しまいには、元王妃様専用の愛人でもいいからと、元王妃様を手に入れたいと望んでいたんですって。


 情熱的だわ。元王妃様ってモテていたんだけど、陛下のせいで、こんなオバさんがモテる筈ないって思いこまされていたのよ。酷いでしょ。陛下って男性としては最低よね。


 その元王妃様を慕う男性達は、元王妃様の外見だけでなく内面にも惹かれていて、生半可では諦めない程、元王妃様に忠誠を誓っていた上、恋人も妻も婚約者もいなかったんですって。

 だからこそ、元王妃様に飽きている陛下が元王妃様を臣下に降嫁させるのだと思い、その時を待ち構えていそうよ。


 その男性達一人一人と陛下が話し合いをして、陛下の説得で、男性達に元王妃様を諦めさせたんですって。

「私はまだ王妃を好ましいと思っているので、手放す気はない」と。


 身勝手よね!自分は城下にいる愛人やら側妃やらの相手をしていたのに、元王妃様の所には、元王妃様の失脚を狙う暗殺者や、間者が訪れるだけなんですもの。本当に最低な男ですわ!陛下って!


 それらの理由もあって、王妃だった頃の名前のままだと、陛下や父上、身勝手な理由を付けた貴族共や犯罪者共にも目をつけられる可能性があるので、元王妃様は改名したんだと言う理由が…。


 その上で、元王妃様は、ご実家からの謝罪もあって、結局は女伯爵様になったのだと聞いたのよ、ね。

 元王妃様の新しいお名前は、お母様のご実家で教えてもらえる予定であると。


 それと、第二殿下だったリオン様は、元王妃様のご実家の叔父様の養子となったのだわ。


 当主になる予定の嫡男や、嫡男のスペア替わり、またはその補佐をするのが決まっている次男でもなく、気楽な三男としての身分を与えられ、王族から臣下の家に移られ、ただの貴族子息になられたという事ね。


 もし後継ぎを欲するような事態が王家の方で起こっても、第一殿下であるレオ王子が成人まであと2年。種馬としても使えそうに、王家に存在しているから、何かあっても王家は大丈夫でしょう。


 そして、陛下もまだまだ王様業も男性としても現役で、病気もなく元気だから、まだまだ心配もなく平気っと。


 今までは、無駄に王の血を引く庶子やら子供を増やさないように、それで、国家予算を王家の出費で圧迫しないようにって目を光らせて見張っていた王妃様を、ただ五月蠅く言って邪魔をしていただけだと思っていた陛下ですもの。


 あの失言大王(レオおうじ)の親で、レオ王子よりも男女間での失言を平気でする、レオ王子の上位互換のような無神経さのある陛下だものね。


 それ以外は有能な王様なんだけど、偏りが凄くて、大変だわと、よく元王妃様からの愚痴を聞かされたっけ。

 でも、もう、その愚痴を聞かなくてもよくなったのよね。


 その五月蠅く言っていたと思われていた王妃様と陛下はもう離縁したんだわ!

 陛下に向かって真正面から諫言をするような貴重な人が、陛下の元からいなくなった事に、あの陛下が気付くかしら?


 まぁ、元王妃様がいなくなっても、あの亡き第三殿下と第四殿下をお産みになった寵妃様が陛下の元にいますから、大丈夫でしょうね。


 でも、あの寵妃様、病弱だって言われているのに、子をお二人も安産で産んでいるのよ、不思議だわ。

 それに王城にある寵妃様の自室へと、陛下が毎日のように通われているし、欠かさずにご一緒に過ごしているんですって。


 それで、よく病弱と言われている側妃様が、陛下からの寵愛を浴びるほどに受けて、安産で子を2人も産んでいるのよね。


 その状態が不思議だとしか言えないわ。

 寵妃様も風邪をひかないようにと気を付けていて、他の側妃様よりも健康に過ごされているし、風邪もひかないのよ。私よりも健康に見えるのよねと、元王妃様がどこかで言ってましたわね。


 あら?もしかして?

 ただ単に出不精で社交嫌いの、仮病を使ってサボっているだけの、面倒臭がりな側妃様だったりして…。あは、まさか、よ、ね。

 え?!病弱なのは、それを誤魔化す為の理由なの?うわ?!それはなんて王家の裏事情なのかしら!やば!黙っておこうっと。


 そんな図々しい女に、どこも素晴らしくて、どの側妃様達よりキレイで、妖艶な元王妃様が負けたなんて…!!!陛下の目は節穴かっ!すごーーーーーく最低だわ!!


 それなのに、元王妃様の所へ訪れるのは、正妃になろうという欲望を隠す事もしない側妃様方から送られてくる暗殺者達で、しょっちゅう、そんな者達がウロウロしているし、元王妃様を毒殺しようとする者達にも、いつでもどこでも狙われていらしたのよ!


 そんな中でも、陛下からの愛が元王妃様にあればよかったのに、それさえももう、十五年単位でお渡りもなかったんだって聞いていたのよ!だから元王妃様も呆れてしまって、離縁をしたくなったんだわ!愛想も情けも尽きて!ひとつも無くなると言うものよ!!


 そんな不思議状態の寵妃様や命を狙う側妃様達もいるし、ストッパーだった元王妃様を失った勢いで、陛下は、これから際限なく、側妃様を増やされるでしょうね。


 元王妃様が離縁して空いた正妃の座を狙って、側妃様方同士で勝手に争って、殺し合えばいいんだわ。

 そうすれば、側妃様方の数も増減があれど、一定数で抑えられるんでしょうね。


 うん!元王妃様もリオン元殿下も、隣国へ来ても何の問題もないわ。うん、うん。


 いざとなれば、先代公爵だったお爺様や、元王妃様のご実家の公爵家もいるし、心配ないわよね。


 私の専属執事のアンソニー様も、王妃様の親戚筋で、もっと新しい知識を増やしたいと言う気持ちで、隣国まで付いてきてくれたし、その仕事も継続してくれるって言っていたし、私も大丈夫よね。


 お母様も私もポラディスも、各種書類を提出されて受理されているから、隣国であるこの地では、何も問題は無い筈。


 レオ王子も婚約無効になったんだから、新しい婚約者を陛下や臣下との楽しい楽しいお話し合い(貴族達の水面下の醜い争いとご令嬢方のみっともない小競り合いと言う名)の末に、新しい婚約者が決められるでしょう。


 …はぁ、商会はこの先、どうしようかしら?


 お母様の名を借りて、隣国であるこの地で商会を立ててすぐは、私の商才がなくて、何度か危ない時があったの。


 危なかった理由?


 私に商人に必要な貪欲さと商いの嗅覚がなかったので、商会を立ち上げた時から今まで、何度も商会を潰しそうになったわ。それが理由ね。


 でもね、アンソニー様の弟さんで、商会に勤めている方をうちの商会に引き抜けたの!アンソニー様からのご紹介で。


 それからは、実質、その方が商会の責任者で、私の代わりに会頭になってくれたので、多少の赤字が出ても、立て直して黒字にするまでの時間が短縮されたのよ。凄いわよね。


 その方は、ハイドと名乗っていて、アンソニー様よりも、私に年齢が近いの。ちなみに、アンソニー様は私よりも15歳も年上で、ハイド様は、5歳年上なの。


 それでも、レオ王子のような無神経な失言を言ったりしないで、普通に話せるのよ!うん!私が求めていた普通の会話が出来るの!


 あの仮婚約をしていた時点では、普通の会話が出来る青年に出会えるのも話すのも、不可能な生活だったわ!レオ殿下の婚約者だったから!それが実現して、泣いてしまったのは、私の黒歴史よ…。

 それでも、ハイド様はね、笑わずに黙ってハンカチを差し出してくれたのよ!本当に、あの失言大王よりは凄ーーーーくマシな男性だって理解しているわ!


 …考えが脱線してしまったわ、ええと、商会の事だったわよね。


 私がこの世界に合うように前世で便利だった物をいかにも私が考えたように、絵に描いて説明を書き添えて、私が商品開発者のような事をしているの。


 私が書いた紙を提出するとね、ハイド様の方で試作品を作る所まで進めてくれるのよ。

 凄く助かったわ。


 隣国であるこの地に来るまでは、私が次期王妃教育の実践だと言う実務が多くて、その仕事が多忙だったから。本当にとても忙しかったのよ。


 私に仕事を押し付けて、サボっていた者達は、今頃、焦っているでしょうね。どれもこれも途中で止めてしまっているもの。


 途中だって言ってもね、元王妃様の書き付けと署名付きの紙を添付してあるのよ。

『この仕事は次期王妃の仕事ではありませんので、王妃である私の権限で止めさせました。この決定に不服があるなら、陛下にお願いしますわ。きっと、王妃の仕事ではないと言い切ってくださいますから。』と言う内容の紙を添付してあるので、私や元王妃様の所まで、苦情や不満が来ないようにしてあるけどね。


 移住する方が、私の中でも一番優先順位が高かったんですわ!


 自分が仕事をサボる為に、私に次期王妃の仕事だと言って、レオ王子の仕事やご自分の仕事を押し付けて来ていた事務官達よりも、私個人の幸せの方が大事でしたもの!他人の仕事を勝手な理由を付けて、私に押し付けてこられるのは、非常に迷惑でしたわ!


 あ!レオ王子の仕事は、一切、代わりにしたことは無いのよ。

「間違って私の所に来ていましたわ。」って、突っ返してましたので。

 レオ王子は、「どっちがしても同じだろうに。代わってくれないのか。」って寝言を言ったので、ビックリして何も言えずに、書類だけは無理やりお返ししたの。

 その足で、元王妃様に相談と言う風に私から話しましたわ。その後すぐ、レオ王子には、たっぷりと元王妃様からレオ王子への説教をしてもらえましたけれど。


 今、思い出しても、腹が立つ出来事ですわ!


 ええと、私が立ち上げて出来た商会で売る予定の新製品の開発が、思うように出来ていないの。

 隣国に移るのに忙しくて、そこまで気が回らなかったっていうのが理由なんだけど、ハイド様からの催促が来ているから、焦っているのよ。


 私の今、一番の悩みは、これなの。


「………え、姉上、もうすぐだそうですよ。母上のご実家近くだそうです。ご夫人やご令嬢は、馬車から降りる準備があるのではないのですか?」

「え!もうすぐなの!ありがとう、ポラディス。」


 馬車の中で眠ったから、髪や服に乱れがないか確かめて、直す時間が必要なの。ポラディスが声をかけてくれたので、助かったわ。

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