表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/32

第13話 今までを思い出す7

ここから、エンディスが動き出します。

 そうやって、過ごしていた平凡な日々が崩れたのは、レオ王子が婚約破棄を叫ぶ予定の1年前でしたわね。


 私が学園に入学したのです。

 16から18になる貴族の子息令嬢は、学園で学んで、人脈を作らなければなりません。


 私やレオ王子は、王家の派遣した教師陣に学んでいたので、学園で学ぶよりは、人脈づくりの為に学園に通っていたのでした。


 私が入学して半年は何もありませんでしたわ。

 でも、秋口の初めに、レオ王子やその側近候補の男性陣の所へ近付く女生徒が居ましたの。


 その女性とは、私が婚約破棄を告げられる元凶であるオレイヌ・ダットン男爵令嬢と名乗る女性でした。


 見た目は鮮やかなオレンジ色の髪に、茶色いくりくりとした瞳の可愛くて、守ってあげたくなるような、丸みの少ないご令嬢で、あざと可愛いという女性から見れば、けっ!と言いたくなるような、可愛さを装う、男女の前では喋り方も態度も違う、ぶりっこご令嬢でしたわ。ゲーム上では。


 実際はそうではないんですけれど、おおざっぱで、明るい性格の気を抜くと、あたしって言ってしまう可愛らしいご令嬢でしたけれど。

 この攻略対象者達をヒロインであるオレンが友人のままで、攻略する匙加減が大変でしたわ。オレンも私も苦労しましたもの。


 私は、黒い髪の若草色の瞳の釣り目がちな、美人な母と美男子な父の子であるので、美人顔のボンキュッボンのスタイルの良いご令嬢ですのよ。貴族ではありがちですけれど。


 ふふっ。実際とゲーム上が同じ見た目ですけれど、前世を覚えているので、孤高の狼のような、オレン以外には友人が居ない、ボッチなご令嬢でしたわ。


 だけど、ゲームのような面倒な取り巻き令嬢達も必要としませんでしたので、気楽でしたの。


 それでも、お世辞でも「可愛い」と形容されなくて悔しかったですのよ。

 あくまで「大人っぽくて色気がある」ご令嬢なのが私でしたわ。残念ですけどね。それをオレンに言えば、贅沢だって言われるのですわ。

 私だって、オレンが羨ましいと言うと、お互い様だねと笑ってくれる優しいオレンです。


 弟のポラディスは私より1つ年下ですので、レオ王子の同母弟のリオン殿下の側近候補で、来年、第二殿下のリオン王子と一緒に入学する予定ですけれど。あくまで予定だけですけどね。


 だから、レオ王子を諫められるような立場にいる人は、レオ王子の側近候補の方々か、婚約者の私しかいませんでした。


 貴族達には私が婚約者だと知られていますし、対外的にも、私は学園の中でも、レオ王子の婚約者の立場で、上げ足を取られないように気を遣い、自身の立場を守ろうと過ごさせていただいておりましたので。


 だから、側近候補達が軒並みダットン男爵令嬢に(ゲームとは違い表面上だけでも私の指示通りに動いているオレンに)骨抜きにされている報告を聞いてからは、急ぎで王妃様や母にこの事態を報告しておきましたの。


 私は皆の目がある所だけで、矢面(やおもて)に出て、「婚約者の居る男性が故意に一人の女性に近付く行為は、婚約者を無視して、その女性が周りに軽く見られる行為だと思われ、ロクでもない男性だと言う勘違いをされますわ。王子達は女性にその様な勘違いされる噂をさせないような行動をされてくださいまし。」とか、


「男性から女性へ不用意な身体への接触をするのは、娼婦のようだと彼女が揶揄されますし、男性方が男娼のようだと勘違いされますわ。皆様方もお気をつけて。」と、ダットン男爵令嬢であるオレン以外のご子息方達にも、周りに勘違いされるような行動をしないで下さいと忠告していましたのよ。


 ゲームの中での私は、側近候補達の婚約者達の愚痴を聞き回り、私や彼女達への冤罪を生まないように、女生徒達を厳しく律し、いじめは恥で、自分達の価値を下げるだけなのだと律していましたし、裏では悪事に手を染めていたのですわ。

 実際とは違いましたけど。


 そんな風にゲームの大筋通りに婚約破棄を行なわれるようにと、事を進めていったのです。


 ゲームの中では、私、悪事を幾つも行なっていた悪役令嬢でしたけれど、この現実では、良心のある悪役令嬢として動きましたのよ。

 ここはゲームとは違い、私達が生きている現実ですもの。それに、犯罪を起こす気も無かったですわ。


 だから、ゲームと似たように、外からはそう見えるようにと、ゲームの強制力が働かないようにするようにと、オレンと私で考えて、大筋はゲーム通りでも詳細は違うようにと、出来るだけゲームに似たような動きをするようにしていましたわ。


 私はオレンの友人ではあるけれど、私の暇つぶしにオレンを突き合わせているのだという風に誰が見てもそう見えるように、装いました。


 私が王妃教育で忙しいから、私と一番仲の良いオレンに、私の代わりをさせて、王子や側近候補の話し相手をさせているのだと。


 オレンもそれを望んで、進んで動いているのではないとの印象を女生徒達に植え付けましたから。


 女生徒達の前で、私が王子達の話し相手をオレンに「忙しくて話し相手も出来ないから、友人のオレンに頼むわ。」と頼んでいる所を見せたのです。


 オレンは、「面倒だからしたくない。」などと、散々嫌がって断るのですが、私が「公爵令嬢である私からのお願いですわ。」と家の力をチラ見せしながら頼むと、渋々ながら、オレンが了承すると言うのを何度か繰り返し、あえて、オレンがしたくてしている訳ではないのを見せていたんですの。


 側近候補達の仮婚約者達(こちらも、他に好きな人が出来たら、婚約無効の条件を付けた仮婚約で彼女達の立場を悪くしないようにと、王妃様の方から手をまわしていただき、最低限の被害で済むように留めたのですわ。)の愚痴を聞き回り、私や彼女達への冤罪を生まないようにしましたわよ。


 女生徒達にはオレンが嫌がりながら私の代わりをしているのだから、間違えていじめないように、いじめは恥で、自分達の価値を下げるだけなのだと律しておきましたわ。


 その合間に、第二殿下のリオン王子も私の弟のポラディスも、そして、王妃様も母も、私と一緒にこの国から出て、自由気ままに暮らす準備をこそこそと整えていましたのよ。忙しいのはそのせいですから。

 王妃教育は終えていましたもの。実践教育と銘打って、王妃様からの呼び出しで王城に通っていただけですわ。


 そうそう、これがこの国では大事な事でしたわね。

 あの、弱くて病気がちだった側妃様の産んだ第3王子様は、いえ、10歳にならずに亡くなってしまわれたのでした。

 それで、悲しんだ側妃様を陛下がひたすらに慰めていたら、また側妃様が懐妊して、お産みになった第4王子様がいらっしゃるのですわ。

 たしか、今は4、5才でしたかしら?この国の後継ぎとしては問題ないですわよね。


 そもそも、オレンジ・ダットン男爵令嬢の事については、私が夢で婚約破棄されるとの夢を何度も見たので、お告げがあったのだと訴え、仮婚約後すぐに、王妃様や母や弟、リオン王子だけへ根回しと言う証拠を作る為にも、その内容を告げてありましたので。


 母も弟も最初は半信半疑で私の話を聞いていましたが、国内や国外で起こる大きな出来事を夢で見たと告げたら、その告げた通りになって信じてくれるようになりましたから。


 王家でも、第3王子が10歳のデビュー前に亡くなり、第4王子が生まれるのだと告げた現実が本当になった所で、母や弟だけでなく、王妃様もリオン殿下も本当に、私の言う事を信じて下さるようになりました。


 ただ、私が婚約破棄される頃までしか、将来を夢で見れていないのだと。

 その先を見る事が出来ないようだとの、夢に関する事への注釈を告げておきましたので大丈夫でしょう。


 その件について、私が申し訳ありませんと王妃様とリオン殿下に謝罪すると、王妃様には「いいのよ。この国の重大な事を一つでも教えてもらえたもの。」と慰めていただきました。


 そのまま、私を含めた国外脱出の準備をしていた者達は、国外へ出る準備を事態の進みが早まってもいいようにと、その準備を加速させたのでした。本当に忙しかったんですのよ!


 学園を退学になろうとも、王家から派遣されていた教師陣からは王妃になれるだけの勉学を修了していますとのお墨付きの書状をもらえていますので、私自身には何の問題もないのですわ。


 あくまで、王妃になる予定だった私の人脈作りだけを目的に、学園には入学したのですから。


 その人脈作りが、婚約破棄を叫ぶ王子のせいで必要なくなってしまう私は、今いる学園を退学しても痛くも痒くもないのですから。


 この国から出れさえすれば、隣国の母の実家の侯爵家でしばらくの間だけ暮らし、祖父母孝行する予定ですの。


 それに、隣国には、前世の知識で私が作った品物を売っている商会がありますのよ。


 お母様がご実家の後見で立ち上げた商会でして、隣国で暮らしていける生活費をもう何年間も稼いでいるのですから、私達が生活するだけの基盤も隣国に揃っているのです。


 あとは、私達が隣国へ移動するだけですのよ。


 それでも、騒がしく、女生徒陣の冷ややかな目線で男性陣の寒気の絶えなかった冬が過ぎ、もうすぐ入学してから1年が過ぎる頃に、王妃様の発案で、王家と我が公爵家の者だけで開く、春を祝う趣旨の私的な茶会が(もよお)されたのです。


 それに、遅れて出席してきたレオ王子様は、王妃様の読み通りに、まんまと私への婚約破棄を宣言してくれましたの。


 本当にレオ王子は馬鹿だったんだわ。

 あんなに王妃様もこの日を迎えないようにと、レオ王子の再教育を頑張ったのに。残念過ぎますわね。


 ()()()()()()()()()()()()()は、王妃様と私の証言と、学園に通う女生徒達の証言もあって、無事に、冤罪で一緒に閉じ込められただけで、彼女には何も落ち度はなかったとのお墨付きと、その宣言を王家からしてもらえて、公爵家で保護しました。


 私の観察日誌からも、私の護衛からも、私やオレンが何も関与していないと、その証拠が出てきましたし、王子や側近候補達の仮婚約者達も、新しい婚約を結ぶように動き出したのですわ。

 彼女達にゲーム通りの被害が広がらなくて良かったと思ったわ!


 国内では、結婚や婚約適齢期の男性の方が女性よりも多いのですもの。

 側近候補だった方達の仮婚約者達の婚約も無事に解除されて、彼女達の経歴には何も傷が付きませんでしたし、傷がなければ、堂々と、彼女達は新しい婚約者をみつけられるでしょう。


 レオ王子は、謹慎を陛下から命じられ、王城の自室で監視する人員を増員した上での軟禁状態だそうですわ。


 ただ、婚約がどうなっているのかの情報だけが届かず、お母様もポラディスも私もヤキモキしていましたの。オレンも気を失った状態で、我が家の客室で滞在中ですし。


 ヤキモキする中でも、オレンが目を覚ましたと侍女から知らせがあったわ。だから、私はオレンと会ったの。


 オレンが私にゲームの事で何かを隠しているのを知っているけれど、気付かない振りをして、今日までの事を説明したわ。


 婚約無効に出来る条件を満たしているのに、反対派と名乗る怪しい者達が動いているのだとオレンに教えて、ご家族ごと、公爵家で保護している事も告げ、私なりのお別れの言葉も言えたんだしね。


 これで、心残りもなくなったわ。


 お母様は離縁状を署名して出すだけにして、ポラディスは、公爵家継承を破棄する書類に署名を済ませて出すだけに、私も継承破棄と婚約無効と、公爵家の名を返上し、名称変更に署名をした各種の書類を揃えて出すだけに、それぞれが必要になるであろう各種の書類を用意してあるのですわ。


 必要な荷物は、最低限の物以外は、既に隣国へと殆んどを運び込んであるのですから。一人に付き、大きいトランク一つずつの荷物だけにまとめてあるのですわ。

 アロンゾなんて、小さいトランクが2つ分だけですって。


 移動に使う馬車は、外見はボロボロで、中はね、豪華で広いのよ。金を持っていそうだとバレない様にしたのよ。余計な争いをして、この国から出るのが遅くなるのは、愚策でしょ?


 これ以上の日数がかかるような事態は、出奔する予定であった私達の計画が漏れるかもしれないし、明日以降も公爵家にいれば、何かしらの妨害工作をされるかもしれないとの情報を掴んでいるそうです。

 お母様とアロンゾと私とポラディスの4人で、今晩、公爵家から出て行くのを即座に決断したのでした。


だって、父上がご自分の専属執事や侍従達を動かして、何だか怪しく、不審な動きをしているのだとも、信頼出来る何人かの使用人達からも聞いて、私達の方でその情報が本当の事だとも耳にしていたのですから。


 善は急げなのですわ!


 荷物を詰め込んで、今夜にでも闇夜に紛れて強制的に移動しようと決めたのもあって、トランクも、国外へ出る許可証も王妃様経由で手に入れてあるので、移動準備を済ませて、暗くなるまで夜間の行程に備えて、仮眠をしたのです。


 その夜、公爵家の裏手から、何台かのボロボロな馬車が出て行きました。


 公爵家で働く使用人達がそれを見ても、何かを運んできたり出したりする搬入用の馬車だと思うように準備したので、案の定、不審に思われなかったようです。


 公爵家のご当主様が、家族に縁切りをされ家から出て行かれたのだと発覚したのは、翌日の昼過ぎであった。


 起きてこない家族の様子を不審に思った公爵家ご当主様が、鍵がかかって開かない家族の自室を蹴破ってまで、その室内へ入り込んだのである。

 そうまでして入り込んだ部屋内では、署名まで済ませて、ただ提出すれば手続きが済むようになって置かれていた各種の書類を見つけたのだから。

宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ