第六話 〜兄様の悲しみ〜
お稽古の時間です。
今日はカイン師匠との手合わせですが
「見る事も大切な学びです!」
とか何とか言って、兄様の手合わせを見に来ました!
カイン師匠も一緒なので、本当は見たかったんでしょうね。
なんと行っても、3ヶ月に1回の兄様と父様の手合わせです。
稽古場に行くともう始まっていました。
うぅ、最初から見たかったです!!
えっ!?もう4本目!?聞いてませんよそんなの!!
「兄様頑張ってください」
小さい声で祈ります。
それにしても、剣を正眼に構える姿が凛々しくてカッコイイです!!
ハァ…ハァ…ハァ
ハッ!いけないいけない…
「…動くぞ……」
鋭い踏み込みに合わせて剣を引いてます。剣先がブレないのに体が移動するので、相手は間合いを掴みづらいです。
一歩の踏み込みに凄い技術が詰まってます!
ホント12歳ですか!?
「ヒュ!」
一瞬の踏み込みの後、一気に刺突として剣を突き出します!
カッコイイです!
剣先が音速超えてます!
たぶん……
父様は剣先で兄様の剣の腹を撫でて軌道をそらします。
あのスピードをいなせるってあなた何者ですか!
ただのエロ親父ではないです。
「フッ!」
兄様も想定内です。
父様を越した所で左足を踏ん張って、剣を右手で横に薙ぎます!
これは相当な筋力がないとできません!
それでも父様は薙いだ勢いで体を回して、難なく受け止めてしまいました。
その後も何度か刺突を基本に攻撃を仕掛けますが、躱す、薙ぐ、受け止めるで一本は入りません。
「はぁ!!」
兄様が剣速を上げました!
カッコイイです!
剣の残像が残ってます!
剣が9本見えます!
「アイツ…また速くなったな」
「ですよねですよね!カイン師匠!兄様すごいです!!」
兄様が押してます!
父様の顔が引きつってます!
こんな父様見たことがありません!
あと一歩ですよ!!
カキィィン!
「え?」
宙に舞う剣。
大きな弧を描いて地面に刺さります。
「一本!それまで!」
父様の剣先が兄様の首筋で止まっています。
飛んだのは兄様の剣でした。
その後も何本も模擬戦をしましたが、兄様が一本を取ることはありませんでした。
「ノア、また強くなったな!」
「……ありがとうございました」
兄様…なんでそんな顔をするんですか?
父様をあんなに追い詰める人なんて他にいません。
なのに……そんな悲しい顔をしないでください。
ーーーーーー
パコーン
「痛!」
「なんだぁ?今日は上の空じゃぁねぇか」
その後のカイン師匠との模擬戦は身が入りませんでした。
「……兄様はなんであんなに強いのに、悲しい顔をするんでしょうか」
「あぁん?そりゃ男だしなぁ、より強く有りたいって思うんじゃぁねぇか?」
「でも!あんなに強いんですよ!?兄様が勝てないのは父様くらいです!」
「そうだなぁ…目の前の目標が高すぎるってぇところかぁ?……まぁアイツもあと五年もしたらレオンを超えられるんじゃねぇか?」
そうです。毎日強くなってる兄様。
でも…なにか焦ってるようにも見えるんです……
兄様……
兄様……
兄様……
好きです!
はっ!兄様の顔を思い浮かべていたら違うことを考えていました。
はぁ、でも…
やっぱり気になります。
あんなに強い兄様はなんで、あんな悲しそうな顔をするんでしょうか……
とりあえず、父様は焼いておきましょう。




