第6話 クラス代表対抗戦
長らくお待たせいたしました…更新が遅れて申し訳ございません!
葵も合流して全員で食堂の列に並んでいる、俺は相も変わらずかつ丼だ。
「まさかこんな所で会うなんてな」
「こっちのセリフだ…何で春斗がこの学園にいる?」
「それ言われたら何にも言えない」
コイツが時雨葵、俺の幼馴染。
まだ父さんと母さんが生きていた時の地元でよく一緒に過ごした隣人兼幼馴染、出会いのきっかけは…あまり言いたくないが葵がいじめられているところを俺が助けたんだ。
何ていじめられたのかはちょっと覚えてないけど唯一覚えていることはいじめっ子を含めた仲間たち全員殴って蹴って保護者を呼ばれてしこたま怒られた事だ、今でも思ってるけど俺は悪くないだろ。いじめられた方が悪いとかほざき始めた先生に俺の父さんと母さんはブチ切れていじめっ子の親には葵の家族がキレていて…カオスだったのは覚えている。
いやぁあの時は色々あったなと思う…ちなみにあの後担任はどこかに消えた、消えた理由は父さんと母さんがキレた時に他の保護者達の怒りも爆発して夜に総員で職員室へ特攻したから消えた…とか。
それで父さんと母さんが小3の時に亡くなって俺はお爺さんとお婆さんに引き取られたので俺は転校、離れ離れになったがこんなところで巡り合うなんてな。
「そういえば見たぞ」
「何をだ?」
「剣道の大会、日本一に輝いた姿をな」
「そ、そうか…」
そう、何を言おうこの葵は中学で剣道の大会で優勝して日本一に輝いた、流石と言わざる負えない。
確か葵の家には剣道の道場がある。昔からそういう家系だったとか?元は俺も剣道はそこで習ってたしな。あ、ちなみに転校した後でも俺はちゃんとお爺さんに剣道と弓道を教わってたぞ。
「は、春斗は」
「ん、どうした?」
「春斗は…最近どうだったんだ?」
「最近はてんやわんやしてたぞ、そうでもなきゃ俺はここに居ないって」
「確かにそうだな」
「しかし、葵が居たなんてな。もっと早く気が付けばよかった」
もっと早くあっていれば最初の居心地の悪さ問題が解消されたかもしれないのにねぇ!!
「…わ、私も」
「ンン!」
わざとらしく、後ろからフレヤが咳ばらいをする。
「葵さん…でしたか?申し訳ありません、春斗さんは私とランチですの。二人で、そう二人で!」
俺の腕にくっつきながら二人という事を強調しながら言う。
いやそれより後ろにいるクラスメイトたちの目線が何で俺に刺さるんだよ…。
「そうは聞いてなかったが?」
「元よりそのつもりだったので」
「…なぁ春斗」
「ん?」
急に葵が俺を見て質問してくる。
「お前はこういう時どうやって飯を食いたい?」
「えっと?」
「二人で食べるか、みんなで食べるか」
「そりゃみんなだろ、みんなで食った方がその分美味しく感じるとかあるし…」
「と春斗が言っているから私も同行させてもらおう」
「なっ!?」
一瞬驚いた表情をしたのちフレヤは俺のことを睨んできた。
「むー…!」
「あー、また後で二人でな、今日はいっぱい人が居るから」
「まぁ…!本当ですの?」
「これといったことも無いから別に大丈夫だけど」
「…」
今度は葵が俺のことを睨んできた、もうどうしろってんだよ…。
そのあとトレーでかつ丼を頂き席に座ったのだが、両隣がフレヤと葵となっており少し居心地が悪い、ちなみに他のみんなは別の席に座っており『また今度一緒に食べようね』と言われた。
かつ丼は旨くて安心したよ。
「そういえば春斗」
「んむ?…ぁあ、何?」
「春斗は一組何だろう?クラス委員長は誰だ?」
「俺」
「は?」
「俺だよ、推薦されたからな。そういう二組は誰なんだ?」
「私だが…もしかして知らないのか?」
「知らないって?」
どうやらクラス委員長が関係する何か俺が知らないことがあるらしい。なんだろう、すっごい嫌な予感がする。
「今週の土曜日にクラス委員長が戦い合う試合があるんだ、確か『クラス代表対抗戦』だったような」
「なーにそれ」
「聞いてなかったのか?」
「いやまだ聞かされてない」
「…まぁそういう事だ」
クラス委員長が戦いあうのか…確か一年のクラスは全部で4組だっけか。
学年別なのか全てごちゃまぜなのか分からないけど、とりあえず分かったことはその試合が来た時に葵は敵になるってことか…。
「そ、そこでなんだが」
「?」
少し頬を赤らめて緊張した様子で話し始める葵。
「私も専用機を持っているんだ」
「そうなのか!?凄いじゃん」
「す、凄いのは嬉しいが…その、春斗はAGを乗ってから日が経っていないだろう?」
「そうだな、乗ってからやっと一日が経ったくらい」
「そこで、その…わ、私が教えてもいいぞ!」
「へ?」
「だから戦い方を」
「お待ちになって」
葵がAGの戦闘について教えるといったところでフレヤが割り込む。
「な、何だ!?私は今」
「春斗さん」
「な、何…?」
「幼馴染で大変仲がよろしいようですが…試合が始まれば敵ですわよ?」
「…あー、なるほど」
今のフレヤの発言で気が付いた、そうだ…試合が始まれば敵同士になるし、これから敵同士になることが分かり切っているのに教え合うのは、どうなんだと思われそう。
「葵」
「どうした?」
「教えてくれるのは嬉しい、でも俺たちは敵対することが分かり切っているんだ。敵に塩を送る必要は無いんだぞ?」
「し、しかし」
「それと、リベンジがしたい」
「!」
リベンジ。俺の昔のな。
剣道は葵の家の道場『時雨道場』で習ってたからな、戦うこともあったのだが…俺の勝率は低い、というよりほぼない。
結局勝ちこされて俺が転校しちゃったからな、でも今は同じ学園に通い今度は敵同士なんだ、リベンジさせてほしい。
「…」
「だからごめん、遠慮してもいいか?」
「あぁ、だが戦うときが来たら私も本気でお前に挑むぞ」
「もちろん、本気で来なかったらリベンジの意味がないからな」
そうして今度は俺の方から挑戦状を叩きつけた。
…今から楽しみになってきたぞ!
「そ、それとなのですが…!」
「!?」
今度はフレヤが両手を机に叩きつけて立ち上がり俺を指さして
「お、お二人は…つ、付き合っていますの!?」
「なっ!?」
いきなりとんでもないことを聞かれたと同時に今度は葵が立ち上がった。
「わ、私と春斗はまだそのような関係では…」
「まだぁ!?それならその含みのある言い方をやめてくださいまし!」
「あはは…」
付き合う…か。あー、クソ…思い出したくないものを思い出した。
まぁいいか過去は過去だ、さっさと忘れよう。
それにしてもこの二人、妙に仲良くなれそうだと思うのは俺だけか?
犬猿の仲っぽい感じがあるが変なところは意見が一致しそうというか何というか…。
ーーー
それから時間が経ち今は放課後、柊木先生に空いているアリーナを一つ借りさせてもらった。
てか柊木先生から言われたよ、クラス代表対抗戦の事。
忘れていたわけではなく、決まってから話そうとしたときに時間が来て俺がクラスメイト達に囲まれちゃって話しかけづらくなったらしい。
それなら致し方なし。
「黒鉄」
左手のブレスレットが粒子化して俺を包み込み黒色の装甲が身体を包んだ。よし、何事もなく装着できた。
「んでだ」
黒鉄を装着した状態でディスプレイビジョンを立ち上げる、今見ているのは専用AC操縦者のマニュアルだ。
ルールや規則は勿論、各AGの戦闘距離など色々な事が書かれているが…俺が見ているのはそこじゃない。
今見ているのは専用AGの平均装着完了時間、平均的な装着時間は大体3秒から5秒で特に早い人だと1秒もかからないらしい。
そして俺の装着時間は平均的に7秒半くらいかかる、うーん遅い。
「もう少し早くできないものか…」
黒鉄の内部の設定を開く。
所々は黒鉄の自動フォーマットがやってくれているから手間は省けているが細かなところは自分でやらないといけない…らしい。
「黒鉄、装着速度をあげるにはどうすればいい?」
『質問承りました。結論、操縦者自身の認識あるいは黒鉄が操縦者の身体を理解する必要があるため現状では認識でしか速度は上げられません』
「認識か」
あ、そういえば。
この黒鉄には戦闘効率強化AIが搭載されているのだが、他のAGと違ってAIも搭載されているため質疑応答…というより会話が可能なのだ。
最近のAI…というより技術の発展がすごい。勿論このAGとかインフィニティギアもそうだけど他にも色々なものが発展している。例としてAIもそうだ。カウンセリングや受付、対話もそうだけど、最近だと警察や保安官用のAIなら監視カメラの映像の解像度を引き上げAIが顔を認識し犯人の顔が分かりやすくなったり、裁判所とかの冤罪を減らすための取り組みもされているみたい。
「具体的な認識ってどうすれば?」
『回答、様々なデータベースを確認したところ纏うイメージが多いようです』
「纏う?」
『はい、AGは纏う物と認識していることが多いようです』
「なーるほどね」
纏うか…確かに黒鉄も粒子化して俺の身体を包み込むんだよな。
仮で黒鉄は操縦者を包み込む、逆に操縦者は黒鉄を纏うって認識しておこう。とりあえず一度やってみるか、纏うイメージで。
「黒鉄解除」
粒子化してまたブレスレットになったことを確認したのち、もう一度展開。
(纏うイメージ…!)
足先から指先まで纏うイメージで!さっき展開した時よりも粒子は早く動き俺の身体を包み込んだ。
「おぉ…!」
『装着時間6.2秒、約1.3秒短縮されました』
「6秒か、でも早くなった方だ、よし!」
1.3秒も早くなったことに驚きと喜びが混合して喜べばいいのか驚けばいいのか分からなくなったが進歩したことには変わりない。
さて次だ。
「装備装備…あった」
今のところ装備はこの近接ブレードしかない。
「黒鉄、他の武装はないのか?」
『回答、現段階では近接ブレードのみとなっております』
「これ以上はない?」
『いいえ、黒鉄は現在ファーストフォーマットが完了しておりサードフォーマット完了時に操縦者にあった武装が使用可能になります』
「サードか」
ってことはこの間にあるセカンドにも何かがあるのか。
「ちなみにセカンドフォーマットは今どのくらい進んでる?」
『現在76%』
「意外と進んでるんだな、それでセカンドが終わると何が出来るようになるんだ」
『回答、シールドエネルギー及びフライト機能が使用可能になります』
「マジか!?」
まさかの今俺が一番欲しいシールドエネルギーがセカンドにあるのか、しかもフライト機能も。
「ありがとう黒鉄」
ディスプレイビジョンを解除してブレードを構える。
ここからは鍛錬だ。ブレードの振り方、黒鉄の移動速度などなどを知る必要がある。
「まずはスラスター、ブースターの出力からだな」
パワーエネルギーの消費量的に出力を変える必要はない。
ブーストとかしたときの速度は慣れるだろう、ただパワーエネルギーの消費量は少し抑えたい…今の俺の戦い方の都合上空を飛んでいる相手には出力を一気に変えて上に飛んで攻撃するしかない。
「まずは速度に慣れるべきか」
近接ブレードを構えながらアリーナの周りを移動する。
最初は走って、途中からホバー移動に変更。これくらいの出力ならパワーエネルギーは消費しないみたい、これなら走る必要は無いな。
次に出力を変えてブースト、ブレードを構えながら中央から目を離さないようにグルグル周りを回る。
…やっぱりエネルギーの消費が早いな、一度ブーストを止める。
「黒鉄、パワーエネルギー消費ってもう少し抑えられるか?」
『警告、抑えた場合消費量は下がりますがその代わり戦闘効率強化AIの理解度が下がります』
「なるほどね、ならしょうがないか」
理解度が下がるのであればしょうがない、しばらくはパワーエネルギーを見つつ動きや戦い方を考えよう。
次は近接ブレードの戦い方をどうするのか。
一応、剣道を習ったことはあるから剣術には自信があるが…鞘もない剣でしかも両刃、両刃かこれ?前にも言った通り菜切り包丁みたいな形をしているからどうなんだろう。
自信のある抜刀術は出来ないこともないけどAGで出来るのか?ほら動き的な問題で。
「やってみるか」
ブレードの真ん中あたりを左手で握りこみ柄に右手を添えて構える。
ふぅ…っと息を吐いて心を落ち着かせ、柄を握り一気に抜刀。
「出来るといえば出来るけど鞘が無いだけでここまで違和感があるんだな」
しかし戦略としてアリだ、うし!今は練習しながら黒鉄の動きに慣れないと!
「よし、やるぞ!」
俺はブレードを上に掲げて気合を入れ直し、時間いっぱいまで練習して練習しまくった。
ーーー
そうしてクラス代表対抗戦があると説明されてから一週間が経ち、対抗戦当日になった。
俺は三回戦目、対戦相手はまさかの葵。一番戦いたい相手と初戦でぶち当たるなんて運がいいのか悪いのか…。
それはそれとしてあの一週間は色んな意味でも学びになったな…一日目と二日目は一人で練習し、三日目にはフレヤがAGの戦い方について教えてくれた。
『…とこのような戦い方になります』
『ふむふむ』
『ただ距離の取り方については各AGの得意距離がありますのでそこは気を付けたほうがいいですわ』
『そうなるとフレヤが相手なら俺は出来る限り詰めたほうがいいのか』
『そうですわね、正直懐まで入られると戦いづらいですわ』
『なるほど、勉強になる』
基本的な戦い方を教えてもらった後にフレヤが過去に戦った近距離型の話を聞いたのだが…。
スプライトに対して懐に入ってきたAGは俺が初めてらしい、他の機体は近づく前にハチの巣にされてジ・エンドっていうね、良く生きてたな俺。
四日目は模擬戦ってわけで軽くスプライトと戦ったが前のようにはいかなかった。元々の俺の手口はバレているし一方的に撃たれたし善戦とはならなかった。
五日目からは他のクラスメイトも混じって一緒に訓練をした。意外と楽しかったしより仲良くなれるきっかけにもなった。
…フレヤの顔が膨れ俺のことを睨んでいたことは黙っておく。
それで今俺がいるのは前の決闘と同じ第二アリーナのエントリーゲート。
ちなみに黒鉄は装着済みで射出装置にレッグを装着していて葵の機体の概要を見ている。
「近距離型AG『飛脚』か」
青色の装甲に身を包み浮遊シールド二枚にジェット機能が搭載されていて、背にも一個ついているらしいのでジェット機構は計3つ、機動力が高そうだな。そして二本の刀『村雨』と『白露』を携えていて専用アビリティ有り。
しかし二刀流か、葵の剣道は確か一刀流なのだが…何故二刀なのだろう。
『互いの戦闘準備が整いました、20秒後射出します』
「ふぅ…」
射出準備が整ったことを知らされ、少し緊張し始めたが直ぐに落ち着いた。
やっぱりこの身体を預けられるのが良いんだろうな、安心感が良い。
「…とにかく学んだ事をするだけだ」
フライト機能は無いがダッシュやホバーは出来る、それと追加知ったことだけどフレヤ戦でやった瞬間的なダッシュ。
あれには正式名称があったらしく『衝撃加速』とか『IB』とも言うらしい。
『残り10秒』
「ブレード展開」
右手にブレードを展開し姿勢を低くする、フレヤとは違った近距離型AG。
距離感覚もそうだけど、何より葵は日本一に輝いた剣道の武士。下手したらマジで死にそうなのがまた怖い…。
『発射シーケンス完了、射出』
「ッ…!」
ビーッと音が鳴り射出装置に発射され、アリーナに着地。
『春斗』
「よぉ、まさか初戦が葵とはな」
『私も初戦が春斗とは思わなかった』
葵はフレヤと同じように空に飛んでいると思っていたがホバーで地面辺りで鎮座していて、正面から向き合う。
『…あの頃を思い出す』
「一緒に稽古したときか?懐かしいな」
『あの時とは違って春斗は変わったのか?』
「それは…」
ブレードを構える。
「戦いの中で感じてくれ」
『そこは変わらないんだな、では』
葵は腰に携えていた二本の刀、村雨と白露を抜刀し構えた。
『敵AG戦闘態勢へ移行』
『行くぞ…春斗!!』
「来いッ!!葵!!」
お互いに正面からインパクトブラストし、二刀の刀と一本の剣が鍔迫り合い目を合わせる。
金属と金属がぶつかり合う音が目の前に鳴り響き、鍔迫り合いの力の差は一歩も譲らず、互角。
『互角か』
「かもな、ふん!」
『!』
ブレードに力を込めて一歩足を進め二刀の刀を弾き、斜めに斬りかかったが飛脚はバックステップし華麗に回避しながらまた距離を詰め片方の刀を振り下ろしてくるが躱す。
(ーー互角、か)
この互角をどうとらえていいのか俺には分からない、あの剣道時代と違って俺は成長していたのか、もしくはAGを使ってやっと互角になっているのか…いや考えるのは止めよう。
(この戦いに勝ってから考えればそれで済む!)
お互いに少しのダメージも与えず、剣を振り下ろし刀で弾く、刀で斬りかかり剣で防ぐ。
防戦一方とも言えない展開が続く…。
(でも…)
俺には一つ気になっていることがある。
葵の装着している飛脚、その背辺りにある一本の大きな太刀。
刀身なら俺のブレードよりも長い、黒鉄のAIも分析してはいるが不明と返ってきてあれが何なのかが無性に気になってしょうがない。
それに、現状葵は距離は取らず正面から俺と斬り合い、その太刀を抜刀しようとしている雰囲気もない…本当にあの大太刀は何なんだ?
「ん!?」
いきなり葵は一瞬距離を離して刀を振り下ろさず刀身で突いて来た、それを受け流したと同時に飛脚は空に飛び上がり刀をこちらに振り下ろしてきた。
その距離じゃ俺は切れないと思ったのもつかの間、縦の青色の斬撃がこちらに向かってきている。
「そんなのアリか!?」
予想外の攻撃に動き出しが遅れ回避できないと判断し、ブレードの腹でガードするが衝撃が肩に走る。
「ぐっ!?」
『私の斬撃を受けろ!』
飛脚の二刀の刀から縦横斜めと縦横無尽に斬撃が飛んでくる。
あの大量の斬撃を正面から受けると衝撃で吹き飛ばされる可能性もあったのでブラスターでアリーナの外周を飛ぶ…しかし
(まずっ!?)
目の前に斬撃が着弾し、方向転換。
フレヤと違って狙いは甘いが、弾のデカさは大きくて躱しづらいし大量に飛んでくる!
『ライトアームに着弾、ヘルスアーマー60減少、アーマー損傷:低。ヘルスエネルギーの残量:940』
「クソッ!?避けられねぇ…!」
しかもダメージもまあまあ高いのかよ!?回避中に左腕に着弾しただけでこのダメージか…!
そして回避しながら気が付いた。
(砂埃が舞って…って見失った!?)
縦横無尽に飛ばされた斬撃がいたるところに着弾し、砂埃が舞って何処に飛脚が居るのか分からない…俺のブラスターを止めて地面に着地、視界が覆われこの状況で砂埃の外に飛び出すのもありだが、またあの斬撃をくらう可能性が上がる…。
(どうすれば…)
すると俺の後ろ辺りから風を斬る音が聞こえた。振り向くと、青色の斬撃が砂埃を切り裂き飛んできた。
「あっぶな!」
良かった、音が拾えたから何とかギリギリ回避できた。
だがこの状況を打破できたわけじゃない、いつどの方向から斬撃が飛んでくるのか分からない…。
周囲に気を配っていた次の瞬間。
『終わりだ!!』
「!?」
葵の言葉と共に、頭上に青色の光が差し込む。
「しまっ!?」
ーーー
「春斗さん!?」
「声を荒げるな、驚くだろう」
アリーナ管制室のモニターにて春斗対葵の戦いを見ていたフレヤと御影先生など。
なお砂埃の中にいる春斗を目掛けて大量の斬撃が放たれた場面を目撃してしまったフレヤは声を荒げるが、御影先生がそれを止めた。
「しかし…!」
「想い人を思いやる気持ちは分かるが露骨すぎるぞ」
「お、想いっ!?」
「違うのか?」
「それは…」
「御影先生、からかいすぎですよ!」
「おっと、すまない」
御影先生が軽くフレヤをいじったが柊木先生がそれを静止したがフレヤの顔は真っ赤だ、想っていた気持ちがバレてしまったのだ、仕方がない。
「それよりも斬撃砲の改良型か、もう作られていたんだな」
「そうですよね…葵さんの技量もそうですがあの刀の技術はすごいです、刀の周囲にエネルギーを纏わせて斬撃を放つなんて」
元々斬撃砲は過去にも存在していたが今と比べてあまりにも使い勝手が悪く、一人を除いて使いこなす人はいなかったが改良化され今に至ると言うわけだ。
「そうだな…む?」
このタイミングで柊木先生の元に通信が入る。
「どうやら…」
「黒鉄のセカンドフォーマットが完了したようだ」
ーーー
下を見る。
あの砂埃の中には私の初恋、そして今の敵である九条春斗が居る。
「…」
(あの時…)
この状況でふと昔のことを思い出す、春斗との出会いを。
あの頃の私は同級生たちにいじめられていた、いじめられた理由は今思うと笑えて来るが私が他の男子にモテていたかららしい。
昔の容姿なんて思い出せないがそのせいでトイレに行けば水の入ったバケツを被せられ、上履きを捨てられ、机に落書きなど色々ないじめを受けていた。
あの頃の担任の先生は私がされていたいじめに対して見向きもしなかったが…一人だけ私を心配してくれた人がいた。
それが幼馴染である春斗、彼だけは私の味方だった。
『大丈夫、ボクはあおいの味方だから』
『一緒に掃除するよ、ぞうきん取ってくる!』
あの時の春斗の笑顔は今でも変わってない。今日、一緒に食堂でご飯を食べているときも小さく微笑んでいて昔の笑顔を思い出させる。
…そして昔に起きたとある出来事。
私をいじめていた女の子たちが男子を連れて私に対して暴力を振るおうとしていたのだが、その時に助けてくれたのが春斗。私と男子たちの間に入り守ってくれた。
『は、はるとくん!?』
『どけよはると、オレたちにボコボコにされたいのか?』
『黙れ』
…あの後クラスメイトの男子の大半が春斗によって大怪我を負った。
そんな事件が起きた後、幸か不幸かいじめのことが私の親や他の保護者達にも伝わり、更には担任に対する不満が爆発して保護者達が夜の職員室に抗議をしに行った。
その日の夜、春斗と一緒に私の家で過ごしていた…あの時は親が抗議しに行っていたので二人でのお留守番、その間ずっと春斗は私のことを励ましてくれた。
今でもあの優しさには感謝してもしきれない、あの時に私は春斗のことが好きになったのだろう。
だからこそ、春斗が転校したときはこの世の終わりくらいまで絶望したが何とか笑顔で見送った、またいつか会えるだろうと。
残りの小学校生活は特にいじめられず…中学の時は剣道に没頭した。学校生活の中、告白されることもあったが殆どの告白した理由が私の身体目当てだったのは気づいていたので全部断った。良い意味でも悪い意味でも身体は育ち剣道で全国大会で一位になり、IGD学園に合格し…
『葵!?お前、時雨葵か!?』
彼と再開した。本当に会えた。
今でも夢のようだ…でも今は敵同士、昔を思い出すのはここまでにしよう。
「…!」
ふと砂埃を見るとその中から黒い機体が空へ飛び出した。
初撃の剣を交えた時とは違い、背中辺りに黒い翼のような物が増えている。
『…やっぱり葵は強いな、だからこそリベンジしたい』
機体の主は頬に切り傷があり、これから勝てるか分からないのに…彼は笑っている。
道場で一緒に稽古したときも彼はいつも笑っていた。
あぁ、あの目だ。あの笑顔だ。今も昔も変わらない。
(ーー私が好きな顔だ)
ーーー
『セカンドフォーマット完了。フライト機能、シールドエネルギー解放されました』
解放されたと同時に身体中に浮遊感を感じ空に向かって飛ぶ。
これが空を飛ぶ感覚…よく見ると俺の背中にジェット機能が搭載された浮遊物が。これのお陰で空を飛べたのか、にしても夢にも思ったことが実現するなんてな、空を思った以上に心地いい…。
それに飛べたお陰で今の越えるべき人と目線を合わせられたしな。
「…やっぱり葵は強いな、だからこそリベンジしたい」
『春斗?その頬の傷は?』
「あ?」
葵に指摘され、レフトアーマーを部分的に解除して手で頬を拭うと血が付いている。
さっきの大量の斬撃を防いでいる際に切れたようだ、まあこの際どうでもいい。
「気にするな、これからシールドエネルギーが使えるから」
『これから?どういうことだ?』
「あぁ、あとで説明する…それに敵を心配している場合か?」
『…』
ブレードの剣先を飛脚…もとい葵に向ける。
「本番はここからだろ?」
『そうだな…!』
資料集更新
追加内容:時雨葵 『飛脚』
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…