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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第三部
122/122

エピローグ

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!

「…ふぅ」


実家の清掃が終わり、父さんと母さんのお墓の掃除も終わった。

我ながらピッカピカだ、墓石が輝いている。

買った花も添えて…よし。

線香を香炉にいれて…その上に手紙を置く。

届くはずもない、俺からの手紙だ。送り先は天国へ。


「…流石に天国の住所とか知らねぇからな」


両手を合わせて目を閉じる。

聞こえてるかわからないけど僭越ながら手紙の内容を読ませていただきます…。

父さん母さん、俺は今日も元気にIGD学園で頑張っています。

俺も学園が上がり、2年生となり新しい訓練や授業、更にAGの鍛錬と忙しい日々を送っています。

特に二つ、大変なことがあります。

一つ。めっちゃ忙しい…。

しばらく実家の掃除や墓参りが出来なかった理由がもう滅茶苦茶忙しかったからです。

メディアの質疑応答、各研究機関への手紙のお返事、新開発の武装の試しなど…。

更に新一年生からの質問攻めや握手やサインなど本当によく分からないものも様々。

1年生が元気いっぱい過ぎて付いていけねぇ…!


二つ。友人たちからのアタックが激しい。

本当にこれだけは父さんと母さんに助けてほしい。

空から見てたらわかると思うけど、俺は彼女は作りたくなかったし、その影響で異性に対してこれといった反応が出てこなかったが…心境が変わり反応が意図せず出るようになった。

しかも…それを俺に気があるかもしれないと思っていた友人たちにバレた。

それ以降…なんかもう色々と大変だ。

あくまで例として…友人たちを挙げよう。


一人目『フレヤ・アレクサンダー』。

隙あらば俺をイギリスに連れて行こうとする。


『春斗さん、少々よろしくて?』

『ん、どうした?』

『その、私のお父様とお母さまがどうしても春斗さんにお礼がしたいとおっしゃっておりまして…』

『お礼?何かしたか俺』

『私を助けてくれたことと、世界を守ってくれたことですわ!』

『…まぁ、守ったかもしれんがお礼を言われる筋合いはないぞ?フレヤも戦ってくれたしな』

『で、ですが…』

『お礼を言う必要はない…大層な事をやったつもりもないしな。あとそろそろ食堂に行かないと混んでしまうからな』

『むー…』

『…い、一緒に食べるか?』 

『はい!』

『…ま、毎回右腕に抱き着くけどどうした?』

『あら?レディーをエスコートしてくれるのではなくて?』

『はいはい…』

『…いつか絶対春斗さんを手に入れますわ』

『な、何か言ったか?』

『いえ、なにもありませんわ』


その時はめっちゃ聞こえてたけど聞いていないふりをした。

うん…グレイソンさんとマリアさんがお礼をしたい気持ちはわかる。

だが、行ったら最後になりそうなんだよ…!!

すまない…。


二人目『時雨葵』

幼馴染故なのか知らんが…昔、したようなことを迫ってくることが増えた。


『は、春斗…!』

『うぉっ!?び、びっくりした…深夜にどうした?』

『その…い』

『い?』

『一緒に…寝てもいいか?』

『は、はぁっ!?何で急に…』

『…』

『…あの、葵さん?』

『何だ』

『何で…そんなじりじり迫ってくるんだ?』

『…私は知ってしまった。春斗を失う悲しみを失わない為には、いっそのこと無理やりにでも手に入れればいいと』

『め、滅茶苦茶…かっ!?』

『…!!』

『ちょっ…!?葵!?無理やり抱きしめてベッドに倒されると動けないんだが…』

『い、良いから寝ろ!私だって恥ずかしいんだ…』

『恥ずかしいならこんなことするな!てか、何でこんなことを…?』

『む、昔も一緒に寝ただろう…今も大して変わらない。それに…昔と同じような事をすればお前と一緒に居れると思ったんだ』

『…絶妙に断りずらいな』

『わ、悪いか?』

『はぁ…わかったよ』

『…大きくなったのだな、お前も。あの時とは違い手も、身体も』

『…そりゃ成長すればな』


次の日の朝に柊木先生にしこたま怒られた。

そりゃ一緒に寝てればな…。

この日以降、一緒に寝ることを迫って来たり、手をつないで来たり、一緒にふろに入ろうとしてきた。特に一番最後!何が何でも止めたからな!!

もっと自分を大切にしろと…そしたら


『お前なら構わん!』


って仁王立ちした葵に言われた、どうしろと…。


三人目『レベッカ・ブルーノ』


うーん…正直、一番アタックを仕掛けてくる確率は低いといえば低いんだが…。

何というか一番外堀を埋めて来てる気がしてならない。


『や、春斗。隣良い?』

『むぐっ…。あぁ、いいぞ?というよりいいのか?食堂の席は割と空いてるが』

『別にいいよ。それに春斗と話したいしね』

『そ、そうか…』

『あれ、今日はかつ丼じゃないんだね?それにメニューにそれは無かったような…』

『あぁ、食堂のおばちゃんが新メニューを考えたみたいでな。試食って訳で俺が食ってる』

『…春斗って好きな食べ物ってある?』

『まぁ…甘い物だな』

『金平糖とかカステラみたいな』

『そうだな、その辺りが一番好き…ん?俺、言ったことあるか?』

『その…春斗のお婆さんとお爺さんに聞いちゃった』

『き、聞いちゃった!?どうやって…』

『実はさ、前にお婆さんとお爺さんがIGD学園に来てたんだよ?』

『え、マジか…俺に言わずにか』

『春斗には内緒にしたいと言ってたしね。それでちょこっと好物の事とか色々聞いたんだ~』

『そうだったのか』

『…その時に暇があれば家に来ないかって言われたしね~』

『…』


そのさ?外堀の埋め方って色々あるじゃん。

…こう、相手の親と仲良くなって外堀を埋めるって方法あったよな。

まぁ…変に聞くのはやめておこう。


四人目『アナスタシア・アガポフ』


言わずもがな。もう滅茶苦茶俺をMS部隊に入れようとしてくる。


『春斗、今度こそMS部隊入隊について考えてもらうぞ!』

『俺にそこの部隊は無理だって…ハッキングやらなんやらに自信ないし』

『安心しろ。入隊してから訓練を積み、強くなればいい。既にもう強いかもしれないが』

『…それはありがとう』

『それに今、入隊すると我がMS部隊の副隊長の称号と私の婿になれるぞ』

『後半ヤバすぎる!?自分を売るなよ!?』

『は、春斗ならいいぞ…?』

『バカバカ!こんなところで制服を脱ごうとするんじゃねぇ!!』

『ダメなのか?』

『ダメ!!』

『…ふむ、なぁ春斗』

『な、何だ?』

『日本のアニメではお色気シーンというものがあるだろう?』

『どんなアニメを見たか知らんが…まぁあるものはあるな』

『そこで大体の男はその色気に陥落するんだろう?』

『大体というより一部な』

『…わ、私に陥落してもいいんだぞ?』

『アナスタシア…』

『何だ』

『ちょっと俺のおすすめの奴教えるからそれで学んでくれ、それとほいほいと脱ごうとするな…心臓に悪い』

『心臓に悪いということは異性として意識しているのか…なるほど』

『だから脱ぐなって!!』


とまぁ…何が何でも俺をMS部隊に入隊させたいようで。

しかも手段を殆ど選んでねぇ…。アニメのそういうシーンのみを投影し俺にぶつけてくる。

本当に心臓に悪い。女性としての自覚を持ってくれ…頼む!

俺の理性が持たん。


五人目『桐ケ谷水津』


…ものすっごくはっきり言うとボディタッチが多いのと何かしらで距離が近い。


『春斗、どう?私なりに対AG用の強化スーツを改良してみたけど…』

『あぁ…凄く動きやすいぞ。ところで神去がある方向とは別にあるこのホルスターは…?』

『近距離武装だけだと戦いづらいって思ったから…この弓を付ける為』

『弓?』

『春斗の過去のAGのデータを見ると白鉄で弓を使ってたから…作ってみた』

『す、凄いな…作ってみたって軽々しく言う割りにはとんでもねぇクオリティだけど…』

『頑張った…あ、付けてあげる』

『お、おう…って水津!?近いんだが…』

『…近くないと装着できない』

『い、いや付け方を教えてくれればそれで…!』

『…説明が難しい』

『ほ、本当にか?なんか、間があるけど』

『…』

『…』

『…他意は、ない…本当に』

『って言いながら抱き着くなよ!?他意しか感じねぇぞ!?』

『違う、これは他意じゃない。きちんと春斗の身体に強化スーツが合っているかどうかを確認しているだけ。良い匂い、故にちゃんと私が確認しないと』

『今なんか関係ないこと言わなかったか!?』

『言ってない。』

『…』

『…』

『…良い匂い』

『それじゃねぇか!!』


白夜の解析やメンテナンス、対AG用の強化スーツの調整をしてくれるのはうれしいんだが…その都度その都度に超絶近距離まで接近し、身体を触ってくることがある。

まぁ…一部しょうがないときもあるが。


六人目『桐ケ谷雪華』


もうすごいよ本当に。理性が壊れる壊れる。

この後に挙げる友人たちと、先程まで挙げた友人たち以上に距離も詰め方がすごい。


『やぁ、春斗君。覗きはダメだぞ?』

『せ、雪華さん!?またですか!?』

『またって失礼な。前に話したじゃない、ずっと一緒にいるって』

『だからと言って何で俺の部屋の風呂に居るんですか!!一緒って言っても限度がありますよ!』

『あ、シャンプー切れかけてたから替えを買っておいたわ』

『…助かりますけど、最近消耗が激しかったの雪華さんのせいですよね』

『そうね、いつも春斗君の所で入ってるからかしらね』

『十中八九それですよ!!…とにかくどうしようもないので、お風呂から上がったら声かけてください。俺も訓練から帰ってきたので早くシャワー浴びたいんです』

『なら…』

『へ?』

『一緒に入ればいいじゃない!』

『ちょっ!?何してって力強!?』

『いいから…私と一緒にお風呂に入りましょ…?』

『マズいですって!!』

『私は良いから…!』

『合意の元とかじゃないんですから!!だ、誰か助けてぇぇぇぇ!!混浴させられるぅぅぅぅ!!』

『叫んだって無駄よ…!春斗君が訓練している間に部屋の中に氷の膜をはって防音にしておいたから…!』

『いやぁぁぁぁぁぁ!!!』


…二人で風呂に入らされるわ、生徒会室で仕事をしたら俺の首に手を通して抱き着いてくるわ、寝て起きたら雪華さんが俺の上にまたがってたり、訓練後にロッカーを開けたらその中に雪華さんがいたりと色々と心臓に悪く水津に比べて雪華さんの方がぐいぐいくる。

…あの人、自分の身体つきとか気にしてくんねぇかな。色々当たって理性が死にかける。


七人目『アイヴィー・モルドレッド』


一番アタックしてこないと分かるんだが…。



『なぁ春斗』

『ん?どうした?』

『今日も剣の訓練に付き合ってくれないか?』

『良いぞ』

『そ、それでだな…今日は少し罰をつけようと思う』

『罰?』

『あ、あぁ…その…』

『…?』

『ま、負けたほうが勝った方の言う事を何でも聞く、というものだ』

『何か、ありきたりな罰ゲームみたいだな。別にいいけど、何か俺に命令したいことでもあるのか?』

『な、何故そう思う?』

『いやアイヴィーがそういうことを言うのはかなり珍しいからな。何かあると思ったけど、実際何かあるのか?』

『…あるにはある』

『…本当に珍しいな、一応聞くが何だ?』

『は、春斗に…』

『俺に?』

『春斗に…『モルドレッド』と名乗ってほしい』

『…ちょっと待て、俺に?』

『あ、あぁ…春斗は知っての通りモルドレッド家は堕ちた貴族ではあるが今は少しずつ名を取り戻しつつある。そこで…春斗に『モルドレッド』家に来てほしいと考えている』

『ま、まさかとは思うが…俺を』

『だ、旦那様として…迎え入れたい』

『ば、罰ゲームにしては重すぎるし何より罰ゲームの区切りに入れていい罰じゃねぇぞ!?』

『そ、そうなのか?』

『はぁ…罰ゲームっていうのはもう少し軽い。負けたら運命決められるとかならもう罰というより敗者の末路まで行くぞ…』

『なら罰ゲームとは何なんだ?』

『本当に軽い罰が罰ゲーム。学生っぽい物ならそうだな…ジュースを一本奢るとかか?』 

『しかし、私たちには給付金』

『それは…言うな。兎も角もう少し軽いやつを頼む』

『…向か入れられる方法だと思ったのだがな』

『…それはもう少し考えて』


実際、アイヴィーは俺と訓練した影響か確実に強くなってきている。

負けたら俺はモルドレッド家に連れてかれる可能性も十分にある。

…フレヤと手法は違うが、終点は同じだ。


そして八人目、九人目『桐生椿』『桐生青葉』。


はっきりと言えるが、この二人は…アタックというアタックはしてきていない。

だが…その、何というか。


『春斗お兄ちゃん』

『俺は兄じゃないんだが…それとここは二年一組の教室だぞ』

『椿お姉ちゃんからお弁当貰ってなかったので…』

『…じゃあしょうがない』


青葉に至っては俺の事を『兄』と呼び始めた。

血は繋がっていないし、家族でもないはずなんだがなぁ…。


『というか青葉』

『何?』

『何故、俺を兄と?』

『血は繋がってなくても、風格とか私たち姉妹を助けてくれたから?』

『…その理論で行くと俺は数多の人たちの家族になるんだが』

『違うの?』

『違うわぁ!!』

『…青葉、あまり春斗を困らせない』

『はーい』

『椿…』

『はい?どうしました』

『何故後ろから俺にくっつく?』

『相棒ですので』

『いつでもまかり通ると思うなよ』

『では今までの無茶の清算というわけで』

『何も言えねぇ…ッ!』

『あぁ、青葉。これ、お姉ちゃんの弁当よ』

『…』

『青葉?』


この時に青葉は座っている俺に対して正面から抱きついてきた。


『青葉ァ!?』

『青葉、どういうつもり?春斗はお兄ちゃんなんでしょ?』

『確かに春斗はお兄ちゃんのような存在。でも血は繋がっていない、つまり『恋愛』に発展する可能性もある。勿論…『相棒』以上の仲としてね?』

『…!』

『だから…私も春斗お兄ちゃんと過ごしたい』

『言うようになりましたね…青葉』

『俺を挟んでにらみ合うなよ…!!』


そういうわけで俺を板挟みにした状態での戦いが始まっていた。

一応喧嘩等はない。姉妹仲も良好なようだ。

…正直、心配だけどな。


これがあくまで『例』だ。

他にもめっちゃあるぞ。精神が擦り切れそうな出来事が。

…とまぁ確かに忙しいには忙しいけど、心の重りが外れたかのように体が軽くて毎日楽しい。

父さんと母さんのお陰で二人が開発したAGで守れた。

俺は心から二人に感謝する。

あ、そうだ!子供たちについてなんだけど…。

各々が幸せそうに過ごしていた。定期的に学童のボランティアに行ったりしててその時に色々聞いた。満面の笑みで話す子供たちは、あの実験施設で見た顔なんて忘れられるくらい眩しい笑顔だった。

…俺から言えるのはこれくらいかな。


「…」


最後に俺はお供え物として『赤い彼岸花』と『白い彼岸花』を一本ずつ添えた。


「ありがとう、何度でも言うけど…俺は二人の息子で良かった。じゃあ…そろそろ時間だし次は暇が出来たら来る」


そして最後にお辞儀をして、俺は二人が眠る墓を去った。

その時、優しい風が吹き俺を抜けて行った。


「さて…帰るか」


俺は地元からIGD学園への最寄りの電車に乗り込む。

電車はガランとしていた。人っ子一人いない。

席に座り込み、外を見る。

すっかり日も沈み始め、橙色に空が染められている。

…手袋を付けている左手を見る。


「…お前たちはもう少し娘たちを考え、世界を考えればよかったかもな」


別に変革自体を否定しているわけではない。

変化は必要なものでもあるしな。だが、お前たちは変化のやり方を間違えた。

それだけだ。

やり方さえ違っていたらお前たちも名を残せたかもな。


「…?」


電車が止まり、俺が乗っている車両に新しく3人乗ってきた。

まぁ、他人だしどうでもいいがな…と思っていたが。


「こんにちは、ストリーム」

「!!」


その名を言われた瞬間、先程の三人を見る。


「久々ね」

「よぉ」

「服、似合ってるよダーリン♡」


やはりタービュランスだった。

テンペスタ、サイクロン、ハリケーンと三人いる。


「…お前たち」

「あらタービュランスと呼ばないのかしら」

「他に人がいたらどうする…」

「それもそうね、そっちに行っても?」

「どうぞ」 


元々、俺が居た車両は誰一人としていなかったので席は空いていた。

すぐさま俺を囲うように座り込むタービュランスの面々。


「…どうしてここに?」

「ハリケーンが君を見つけたのよ」

「何処で…てか、俺を見つけて何故集まる?」

「お礼してないでしょ?私たちの仇とお金を渡してくれたじゃない」

「…俺のもお礼だよ、タービュランスに所属していた時に色々やってくれたしな。あと前者は記憶が曖昧でちょっと思い出せないけど」

「覚えてないの?」

「あの時は意識朦朧としてたからな。それと丁度いいことに俺もお前たちに会いたかったんだ」

「え、ダーリンが私に!?」

「お前たちって言ってただろうが…」

「これは…」


そうして俺はテンペスタにある物を渡した。

いや、『渡した』というより『返した』だ。

それはペンダントと契約書。


「俺には必要ない物だ、であれば送り主に返すのが道理だ」

「…」

「それと『ストリーム』の名はそっちに返す」

「良いのかしら?」

「何がだ」

「…返してもらっても」

「当たり前だろ、俺の物じゃないし、俺の名前じゃない。それに俺が『ストリーム』の名を持ち続ける理由はない。そっちで供養しているのであれば尚更な」


俺がストリームの名を名乗り続けるのは…死んでしまった元の『ストリーム』にとっても失礼かもしれない。

死者の名を背負うこともいいが、背負うべき人間は俺じゃない。


「…ならありがたく返してもらうわ」


テンペスタは俺が渡したペンダントを大切そうに握りしめ、そのままポケットの中にしまった。


「そういえばさ、ダーリン」

「?」

「…私の『本当の名前』知りたくない?」

「!」


本当の名前…?


「ハリケーン!テメェ…!」

「だっていいじゃん、信頼できるし何よりダーリンがいなかったら敵討ちも出来なかったんだよ?」

「ぐっ…!」

「む、無理に聞くつもりはないから言いたくないならそれでいいぞ?」


確かに本当の名前は気になるが、無理に語らせることでもない。


「えぇ~本当にいいの?」

「別にいい」

「…そうね、九条春斗君」

「ん?」


とテンペスタが言ったと同時に、俺の耳元に近づき呟き始めた。


「私はテンペスタ、本当の名前は『―――』

彼女はハリケーン、本当の名前は『―――』

彼女はサイクロン、本当の名前は『―――』

そして…」


―――亡き彼女は『ストリーム』、彼女の本当の名前は…『―――』。


テンペスタからタービュランス全員の本当の名前を聞いた。

ストリームも含めて。


「あー、テンペスタズルい!」

「い、いいのか!?テンペスタ!」

「いいのよ、九条春斗君。これをお礼にしても?」

「じゅ、十分すぎるが一言言ってからにしてほしかった…普通にびっくりしたぞ」

「それはごめんなさいね。それと私たちはここで降りるわ、また会いましょう」

「…じゃあな」

「また会おうねダーリン」

「あ、あぁ…」


本当の名前を教えてくれてありがとうテンペスタ。

いや…『ジュリアス』。

この場で聞いた会話は誰にも話さないし、明かしもしない。


「また…会える日を楽しみにしてる」


そうして一人で電車に揺られているうちにIGD学園についた。

いつも通りに正門をくぐり、部屋へと向かう。

日も沈み、街灯のようなものに照らされたこの道も…久々に歩く気がする。

…というよりいつも疲れ果てて周りを見て居なかった影響もあるかもな。


「…ん?」


すると人影が目に映った。


「葵?」

「春斗!何処に行ってたんだ?」

「実家の清掃とお墓参り」

「そ、そうだったのか…」

「何か俺に用があったのか?」

「…これを返しに来たんだ」


そういうと葵は俺に何かを渡す。

街灯に反射し、銀色に輝きを放ち、俺の目に光を見せた。

それは…俺の父さんと母さんの形見である『ネックレス』だった。


「すまん、ずっと渡そうとはしていたんだが…お前が忙しそうにしていたからな」

「それに関しては…何も言えねぇ」 

「とにかく、これを」


俺は葵から形見を返してもらい、いつものように首につける。

…落ち着く。

戦いの最中だった時は首に何もつけていないことに対して違和感は無かった。


「…お前に託された物だからな。持ち主に返すべきだと思ったんだ」


ついさっき、俺がジュリアスに言った言葉が俺に返ってくる。

こういう気持ちだったんだな。


「…なぁ葵」

「うん?」

「ありがとう」


そういい、葵と共に私室に向かって歩き出す。


「そういえば春斗、その…ずっと気になっていたんだが左腕は大丈夫なのか?」

「ん?あぁこれか。これと言って不自由はない」

「…本当か?」

「本当、頭の思考と同じように動く義手みたいな感じだしな」

「信じるぞ?」

「え、信頼ないか俺」

「今までの自分の行動を振り返れ。何度私たちに心配をかけた」

「それは…すまん」


◇◇◇


翌日早朝。

左腕が黒い結晶の青年はいつも通り目を覚まし、右手で顔を洗い、タオルで拭き着慣れた制服に袖を通す。


「…よし」


きちんと制服を着て鏡を見て、確認する。

ネックレスに軽く触れた後、左手にのみ手袋を付ける。


「んじゃ、行ってくる」


そして、割れた家族写真を右手で持ち上げて軽く見たのちコトッと机に戻して私室から出て、教室へと向かっていく。

桜が舞い散り、優しい春の息吹が青年の登校を見送る。

日が差し込み、雲一つない快晴。


「あったけぇ…」


息吹に揉まれながらいつも通りの登校の道を歩いていると。


「おはようございます、春斗さん」

「おはよう、春斗」

「おはようございます、春斗」

「フレヤ、葵、アイヴィーおはよう」


フレヤ、葵、アイヴィーが春斗と合流し、共に教室へと歩いていく。


「今日はとても温かいですわね」

「あぁ、快晴だしな。こういう日こそ昼寝とかしたい」

「怒られるぞ」

「…わかってるよ」

「確か日本にはお花見というのがありますよね?」

「桜を見ながら色々食ったり飲んだりするやつだな」

「皆さんでやりませんか?」

「お、いいな!」


そうして4人で話していると。


「おはようみんな!」

「おはよう」

「レベッカとアナスタシアもおはよう」


レベッカとアナスタシアも合流。


「何話してたの?」

「桜がまだ咲いているからお花見しないかって」

「おはなみ…とはなんだ?」

「桜を見ながら食べ物食べたり飲み物飲んだりするやつ。一種の祭りだと思えばいい…のか?」

「趣があるやつか?」

「そ、その質問は初めてされたぞ…?」

「でもいいとおもうな、お花見!」


そこへ。


「その話…」

「聞かせてもらったわ!」

「水津に雪華さん」

「げ、元気ですわね…雪華さん」


死角から眠そうな水津と元気いっぱいな雪華が出て来て合流。

ちなみに、水津は眠い影響なのか分からないが雪華をポコポコと叩いていた。


「…お姉ちゃんに起こされた、許せない」

「い、痛いわ…水津ちゃん」

「水津の方は…少し機嫌が悪そうですね」

「春斗…お姉ちゃんに何か言って」

「お、俺がか!?何言えばいいんだよ…」

「…文句?」

「も、文句!?うーん…強いてあげるなら人使い荒いくらいか?」

「そ、そう思ってたの?お姉さん悲しいわ…よよよ」


悲しそうな声を出しながら、しれっと春斗の腕にすり寄る雪華。

春斗は普通に泣いているフリだと気が付いている。


「いや…なら去年の学園祭や体育祭で俺を景品にしないでくださいよ」

「それはそうね。」

「認めた!?」

「それはそうと…生徒会主催で『お花見』もありだと思わない?」

「大丈夫なんですか?その…先生方は」

「言いくるめておくわ…春斗君が!」


ビシッと春斗に指をさし、やることを丸投げした雪華。


「俺ですか!?」

「春斗君にはこれを何が何でもやらないといけない理由があるからよ」

「何が何でも…?」


と春斗が考えていると。


「おはよう春斗お兄ちゃん」

「おはようございます、皆さん」

「椿と青葉、おはよう…はっ!?」


椿と青葉が合流した瞬間、春斗は雪華の言葉の意図を汲み取った。


「なぁ、二人ともお花見したくないか?」

「お花見?」

「急ですね、何故ですか?」

「まぁしてみたいっていうのもそうだが、何より楽しそうだろ?思い出の一つや二つくらい作らないと」

「青葉、どう?やってみたい?」

「うん!」

「よし!なら俺に任せろ!」

「…やっぱり春斗君は二人に甘いわね」

「…甘い理由はわかりますけど、少しズルい気がしますわ」

「…不平等」


椿と青葉の思い出作りにも出来るし、他の学園や学生との交流の場になると春斗は汲み取った。すぐさま行動に移そうとした姿を見て、不満を出す雪華、フレヤ、水津。

春斗の周りはいつも騒がしく、いつも楽しそう。

普通通り過ごせるのかどうかと入学当初は思っていたが今では見違えるほど普通に過ごし、笑顔だ。


「なぁ、春斗。一つ良いか?」

「うん?」

「お花見するってことを教員に話すのは良いんだが…多分御影先生が対応すると思うんだ」

「多分というか絶対そうだろうな、それが?」

「…何というか春斗と御影先生の一騎打ちが始まる気がする。こう」

「「言いくるめるなら倒してみろ」って…え?」

「花見か良いんじゃないか?」

「み、御影先生!?」


少年、少女たちの後ろにしれっと立っていた御影先生。


「だが…タダでは許せない。…なぁ?九条」

「…ハイ。」


この質問を聞いた瞬間、春斗は悟った。

あぁ…とんでもないことになる、と。


「そうだな…2年1組は訓練があるな?」

「は、はい…2限目に」

「ならそこで戦うとするか。楽しみにしてるぞ、九条春斗」

「ハイ…。」


と春斗の肩に手を置いて先に歩いていく御影先生。


「…」


その場で足を止める全員。


「…助けてくれるか?」

「無理ですわ…」

「すまん…」

「私も御影先生となれば…」

「…増援、無理」

「面白そうだから無視するわ」

「ボコられそう…」

「流石に私も無理です」

「おぉいッ!!」


…波乱万丈な学校生活は続く。

いつまでも。

青年、化け物、英雄。

数々の名を持つ彼はこれからもずっと色々な事に苦労するかもしれない。


――春斗…。


――お前は立派な息子だ…


「!」

「春斗?」

「…いや少しやる気が出てきた!」

「おぉ…春斗が力に満ち溢れている…様に見えるな!」

「全力で御影先生を倒して見せ」

「あ、なら私もいいですか?」

「ひ、柊木先生!?」

「今の春斗君に御影先生と私のタッグマッチは結構いい刺激になると思うんです!」

「い、いや…流石にそれは…!」

「楽しみにしてますね!」

「俺の意見を聞いて…!」

「春斗…」

「な、何?」

「骨は拾ってやる!」

「ならせめて助けてくれよ!?」


でも、それ相応の平和な世界と楽しい学校生活は彼を中心にして今も、そしてこれからも続いていく。



晴天の日照の下で、蝶と共に燃え続けた青年の物語。



それは苦難ありつつ、壁や敵も多かったが。



終点は綺麗で、皆が笑い平和になった、そんな美しい物語。






~完~

皆様、こんにちは。

作者の『雨乃時雨』です。

これにて『インフィニティ・ギア』完結となります。

非常に長い時間をかけ、やっとの思いで作品を完成させることが出来たので達成感がすごいです。

ここまでこの作品を読んでくださった読者の皆様には盛大な感謝を送ります。

本当にありがとうございました!

さて、一応インフィニティ・ギアとしてのお知らせがございます。

これでインフィニティ・ギアのストーリーは完全に終了となりますが、私が書けなかった所や後日談、そして…『タービュランス』と『昔』のお話。

それらはこの作品とは別で『インフィニティ・ギア外伝』と『Episode:TURBULENCE』という物を投稿しようと考えています。なお本作品の1つ目に投稿された設定資料集などは削除し『EpisodeTURBULENCE』にて完全版を投稿しようと考えています。

お楽しみに!

さて、これにて最後になりますが…本当にここまでのご愛読ありがとうございました!

作者の『雨乃時雨』でした。

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