第四十一話「イガサ」
「お前は日本で生きるべきだ」
そう聞こえた途端アイは気を失った。
それから何時間経ったであろうか。
気を失ってる間はまるで寝ているようで、時間がどれくらい経ったか分からない。
ピトピトと鼻の先に湿った物が触れる。
その衝撃に気づきアイは目を覚ました。
「っ、私はどうしてここに」
周囲を見渡すとそこは何やら神殿のような迷路のように入り組んでいるのが見える。
後ろを振り向くとアイがそこを通ってきたと思われる水面が広がっている。
ここがその入り口だということが理解できた。
「確か私はあの時……カリマ! みんな!」
以前の記憶を思い出そうとするが首元に痛みが走る。
そうだ、確か湖の中からドラゴンが飛び出してきて自分を引きずり込んだのだ。
そのことを思い出した、それから続けて気を失う最後に日本で生きるべきだと言ったはず。
何のことか理解できずアイはその場で座り込んだままだった。
「何がなんだか」
生憎怪我は首元だけなので足は歩くことが出来た。
前方には入り組んだ迷宮の入り口。
後方には水面。
どちらを進むかとなったら前方しかないだろう。
水の中では呼吸が出来ないからだ。
目的の入り口に進もうと足を動かすと何処からか音が聞こえてきていた。
しゃんしゃんと大きい鈴の音色が響き、そこから棒で地面を叩く乾いた音。
何事かと思いアイは耳を澄ます。
そして、その者が現れた途端、アイは驚いた。
そこにはドラゴンの姿でシンプルに羊毛の布で覆われた衣服を着ていた。
色的には黄土色だが、よく見ると金色にも見られる。
まるで神様にも思える服装だ。
「お主、起きたのだな」
ドラゴンはそう言うと、1回棒を地面に叩き鈴を鳴らす。
「あなたは誰なの? どうして私はここに」
「我が名はイガサ、ここの守護者だ」
「守護者?」
「この神殿の神王を務めている」
「ますます意味が分からないわ、そんなことより早く地上に帰して。みんなが待ってるの」
「それは叶わない望みだ」
「どうして?」
「お主は禁忌をおかした、今はドラゴンの姿だが以前人間の姿になったことがあるだろう」
「確かにあるけど、どうしてそれが禁忌なの? 他のドラゴンだって魔石で人間の姿に変わる者もいるはず」
「それは一生そのままの姿を望んでのこと。お主のような人間とドラゴンを交互に変わることはドラゴンとしての本質を失い我々の歴史から汚れの意味も通す」
「そんな」
「中途半端なドラゴンはこの世に存在してはならぬのだ」
「そんなの誰が決めたの?」
アイはイガサを睨みつける。
「ドラゴンだって自分がどう生きるか決める自由があるでしょ?」
その後イガサは沈黙となる。
何か言いたげなそんな表情だ。
「……そう言うと思っていた」
「え?」
「だからこそ、お主をここへ連れてきたのだ」
「私を?」
「お主は日本で生きるべき存在なのだ」
アイの表情が変わった。
「日本で生きるべきって、どういう意味なの?」
イガサは答えず、神殿の奥へ視線を向けた。
「それを知りたくば、我について来い」
アイに背中を向けイガサは歩き出した。
そんな中、アイはカリマたちの無事を願うばかりであった。
今回はイガサの登場です。
さて、アイのことなのですが以前に人間になったことを書いたことあるんですよね。
そのへんは十三話を見ていただけたら人間になったことあるんだなって分かるかと思います。
それでは。




