【】(☞三☞ ఠ ਉ ఠ))☞三☞☆ ┏( .-. ┏ ) ┓【】
谷郷を狙う池崎の一撃を退けたのはローランドだった。すぐさま池崎は空中姿勢を保持、圧倒的な柔軟性で林先生の隣に着地する。
「ういい……?」
「ほう、流石ですね。小細工無視、物理特化に強化した池崎の攻撃を看破するとは」
冷静に状況を俯瞰する林先生をよそに、ローランドは戦況を保つ為の采配を谷郷に提示する。
「池崎と修は俺が引き受ける。谷郷、お前は筒香に集中しろ」
「ローランド……。いけるか?二対一だが……」
「筒香は福留とも因縁がある。奴のマークが甘くなれば、宿で休息を取っている福留にも危害が及びかねない。違うか?」
「それもそうだな……」
谷郷はローランドから距離を取り、筒香とのワンオンワンを誘う。
「谷郷さん……。俺との一騎討ちなら勝機があるとでもお思いで?」
「いいや、そこまで楽観視してはいないさ。俺とお前と、福留と……。三人で過ごした里での日々。福留の弟子の中で、筒香、お前が最も優秀だったことは誰の目にも明らかだった」
途端、筒香は皮肉な笑みを浮かべ、渇いた笑い声をあげる。
「なにがおかしい」
「弟子、ねえ……。福留さんが育てた戦士の中で、あの人を師匠と仰いでいる能天気はもう存在しないんですよ。勿論、俺を含めね」
「筒香……。お前は、福留が何故あんな凶行に至ったのか、その理由を既に察している筈だ。それが致し方ないものだったことも……」
「そんな都合のいい弁明など聞きたくないんですよ。そもそも、宝物庫から不死殺しの霊薬を盗んだのは谷郷、貴方じゃないですか。それがどんな心境の変化なのか……」
「俺も、一度はこの世界に帰ってきた福留を手に掛けようとした……。だが、復讐の連鎖からはなにも生まれない。俺たち同士で争っている暇はもう残されていないんだよ。タイムリミットに間に合わせる為には、福留は勿論、筒香、お前の力だって……」
「ごちゃごちゃうるせえなあ!!」
怒号と共に、筒香は手首に嵌めた巨大な枷から金属バットを錬成した。あの日、福留との約束を果たしてホームランを打ったものと全く同じデザインである。
「お前、やはりあの時の思い出が残って……」
「ええ、忘れなどしませんよ。愚かだった俺は、軽率に福留さんを信じ切っていた。だから、その思い出の品で貴方を抹殺するんです。それが罪の雪ぎ方というもの」
「それは違う!!血は流さなくとも、俺たちは赦し合える筈なんだ……」
「もういいです。ここはお喋りをする場所じゃない……。己の命が危機に瀕して初めて、人間の本性が現れる。殺された貴方が、それでも俺を赦そうと思えるか……。見物ですね」
「筒香……!!」
一方、修と池崎を同時に相手取るローランドは泰然としている。本来であれば、池崎の強襲を免れることはあらゆる生物にとって困難を極める筈だ。
「どうした?二人がかりでもこんなものか……」
「ういいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「池崎、そう興奮しないでください。次の手は用意してありますから」
「ういい?」
怪訝そうな池崎をよそに、修はなにやら不敵な笑みを浮かべている。
「【俺】と【俺以外】を峻別することにより、【俺以外】からの影響を一切排除する……。差し詰、概念操作系の能力といったところでしょうか。厄介極まりない。稀勢の里も随分とトリッキーな駒を採用したものです……」
「この世には二種類の人間しかいない……。俺か、俺以外か。そして……。勝者と、敗北者だ」
刹那、音速を超えるローランドの右脚が修の脇腹を捉えかけるが、それは戦闘狂として鍛えられた池崎によって難なく防がれてしまう。
「ういい!!」
「ちっ……。前線の武闘派と後衛のブレーン。王道とはいえ、厄介だな……」
「ローランドさん。僕は考えたんですよ……。【俺以外】からの影響を一切受け付けない貴方は、ある意味で最強の防御力を有していると言える。実際、特殊な能力の持ち主でなければ池崎に対抗することはほぼ不可能でしょう。では、そんなチート級の逸材を如何にして撃破するのか……。難問を解く際には、ひたすら試行錯誤が必要です。考え続けること……。知識だけではなく、状況把握能力と問題解決力。僕が常日頃から生徒に求めているものですが……。講師である僕自身がそれを発揮できないとなれば面目丸潰れですよね」
「回りくどいな。要は、俺を打破する為に池崎以外の弾を用意しているということだろう?」
「ご名答」
瞬間、池崎が穿った天井の大穴からもう一人のゲストが飛び入り参加した。ここは地下闘技場。ルールがないのがルールである。
「本日限り、大特価!!」
「お前は……。ビューティーこくぶ?」
流石のローランドでも名前と顔くらいは知っていた。裏社会の人間ならまず知らないとモグリとされる暗殺のプロ……。それがビューティーこくぶその人だ。
「ローランドさん。なぜ、こくぶが有能な暗殺者であるか理解りますか?」
「さあな……。どうせ、【俺以外】の人間が【俺】に傷をつけることはできない。それがたとえこくぶであっても、な」
「ふむ……。天上天下、唯我独尊。傲岸不遜の極致。貴方は噂通りな男のようだ、ローランド。それでこそ僕が用意したプランが発揮されるというもの。こくぶ」
「承知致しました!!」
某社長に酷似したテンションのまま、こくぶの体組織はみるみるうちに変質していく。暗殺のプロ……。即ち、変装のプロ。ローランドが概念操作系ならば……。
「こくぶの能力は、コピー。ローランドさん、【俺以外】の影響を受けないそのスペック……。下手すれば、この世界で最強の人類は貴方かも知れない。だがしかし。【俺】がもう一人いたとすれば……?」
「ういい!?」
「俺がもう一人……?」
そう、こくぶは完全にローランドへと変身を果たした。見た目だけではない。身につけたステータスさえもコピーしてしまえる点がこくぶがこくぶたる所以である。
「やれ、こくぶ」
「お電話、お待ちしております!!」
理論上、ローランドの能力を看破するにはこれしかない。だが……。こくぶが【俺】になったということは、ローランド側からしてもこくぶは【俺】なのだ。つまり……。
「俺の攻撃が……。こくぶ。お前にも通じるということ」
完璧な能力など存在しない。ローランドの力すら穴があるとすれば、その穴を突こうとする修の戦略にもまた穴がある。勝敗を分けるとすれば……。
「それは【矜持】さ、修。小手先の手練手管に頼るお前に、本当の【俺】が敗けるとは思えんな」
「ふん……。抜かせ。勝てばいいのだよ、勝てば!!」
「ういいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「本日なんと、送料無料!!」
【俺】同士のぶつかり合い。ローランドは世界に二人も要らない……!!




