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【】三└(┐卍^o^)卍☆ (^o^ ∋ )卍三【】

 不帰の樹海で怪鳥との激戦を演じた谷郷一行だったが、福留が右肩に猛毒を受けてしまった。王都の宿に戻り、星野源捜索作戦を一時中断せざるを得ない。


「くっ……。のんびりしている時間はないというに」


「動くな福留。手当てが雑になる」


 意外にも丁寧な稀勢の里の施術を受け、一先ず福留は致命傷を免れたようだ。怪鳥討伐に最も乗り気だった谷郷は当然の如く意気消沈。


「くそっ、俺のせいだ……。ここで主力の福留を欠く訳にはいかねえってのに」


「あの、愚痴を言ってる暇があったら次善策を考えて貰っていいですか?」


「ひろゆきの言う通りだ。谷郷、福留は吾輩とひろゆきが面倒を見ておく。お前は王都の地下闘技場で例の噂を確かめてきてくれないか」


 例の噂。神殿の宝物庫に保管されていた筈の神器たちが何者かに盗まれ、地下闘技場で売りに出されているという話だ。当然、憲兵たちの目を盗んだ非合法な取引が裏で行われていたに違いないだろう。


「待て……。谷郷を一人で向かわせる気か?」


「落ち着け福留。吾輩もそこまで錯乱してはいない。議会の要人に頼み、直ぐに連絡が取れる手練れたちを数人集めておいた」


「直ぐに連絡が取れるって……。それって、それだけ暇で依頼遂行能力が低い冒険者ってことじゃ」


「細かいことを気にしている場合か!!病人はさっさと寝ろ」


 福留はまだ思案顔だったが、今回の作戦の失敗を責任に感じている谷郷は元から単独で地下闘技場に向かうつもりだった。


「議長、その数人の助っ人というのは」


「現地に既に向かわせてある。谷郷、お前のリーダーシップを発揮する時だ」


「俺の、リーダーシップ……」


 ふと、谷郷の脳裏に向こうの世界に残してきたホロメンたちの顔がよぎる。俺は、確かなリーダーシップを発揮できる社長だっただろうか……。


 そんな不安を察した福留は、そっと谷郷の肩に温かくて大きな手を乗せる。


「大丈夫だ。お前は、俺が唯一認めた谷郷なんだからな。YAGOOの森を彷徨う野良YAGOOから、理性を持った谷郷に進化できる個体はほんの一握りだと聞いている。お前はただの谷郷じゃない。世界最強の谷郷なんだ。胸を張って、進め。全力を出し切れ!!」


「福留……!!」


 他でもない、最大の好敵手からの最高の助言を受け、谷郷は凛とした表情で宿を出発した。


 そして、それを物陰から見張る何者か。


「ええ……。谷郷は一人で向かっています。ですが油断は大敵……。我々も最大の準備で迎え撃ちましょう」

































「さあ!!血湧き肉躍る、漢たちの祭典が今宵も開幕だあああああああああああああああああああああああああ!!」


 支配人の掛け声と共に、四方八方から天地を揺るがすような鬨の声が轟く。初見さんなら間違いなくチビる光景である。


「実況は私、平岩!!なんと今回の優勝賞品は不死殺しの霊薬でございます!!宝物庫で大事に保管されている筈の逸品なんですが、何故ここにあるんでしょうね〜。なんて、細けえ御託はいいんだよ!!人間の本分、本能!!それは悪!!暴力が全てのこの世界でこそ、その人の持つ本性が暴かれるというもの。さて、今夜は一体どんなゲストが丸裸にされてしまうのかあ〜!?」


 平岩アナの煽りと共に、真紅のカーテンが持ち上がって谷郷となにやらイカした風貌のシティボーイがリングに上がる。間違いない、ローランドである。


「谷郷、俺より前を歩くな」


「じゃあもっと早く歩いてくれませんかねえ!!」


 一方、紺碧のカーテンの向こう側からは聞き覚えのある「あの声」が届いてきた。なにやら妙な説得力、そして学識を感じさせる語り口調である。


「谷郷とローランド……。相手としては不足なしでしょうね」


 林先生は小型の黒板をリングに設置し、即席の授業スペースを拵えてしまった。


「これは受験生もよく間違えるんですが、僕たちと貴方方、今夜血祭りにあげられるのはどちらでしょう?」


「決まっている。お前と、谷郷だ」


「ローランドさん!?俺は味方ですよ!?」


「残念です……。答えは簡単、ここで死ぬのは貴方方ですよ。何故かって?理由も簡単、戦う相手が僕だからです」


 それから、林先生は観衆からの期待に応えて「例の台詞」を高らかに披露してみせた。


「いつ殺るか?いまでしょ!!」


 一気に沸き返るオーディエンス。一向にどこ吹く風のローランドは兎も角、谷郷の頭には一つの疑問がこびりついて離れない。


「待て……。林修、お前は一人で俺たち二人を相手取るつもりなのか?」


「いいえ?それはルール上できません。僕としては一対二でも構わないのですが……。どうやら、谷郷さん。貴方とどうしても一戦交えたいという方がいらっしゃるようで」


「俺と?」


「まったく……。その癖、本番に遅刻とは社会人になってからが思いやられますね」


 林先生の嘆息に呼応するように、紺碧のカーテンの奥からもう一人の戦士が姿を現した。


「お前は……。筒香!!」


「お久しぶりですね、谷郷さん。福留さんがお世話になっているようで……」


 ただならぬ因縁が漂うリングに、平岩アナの軽快な実況が響き渡る。


「さあ!!今宵の役者は出揃ったようですねえ〜。血で血を洗う「聖戦」の火蓋が、いままさに切り落とされたああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 一気に湧き上がる観客たち。牽制し合うツーオンツー。王都の日常風景が繰り広げられていく……。


 そう、誰もが思っていた。


 「奴」が現れるまでは……。


「ういいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


 爆音と共に会場の天井を突き破り、「池崎」は谷郷の首元に踊りかかった。

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