【】さくらみこ☆中卒【】
城塞高地で武器を研ぐ星街の元に、オトモガルクに跨った戌亥が息急き切って駆けつけた。
「星街い!!速報や」
「またこの展開!?」
「さくらみこが中卒ってバレとる。その件で公安にパクられた」
「さくらが……!?」
あまりの衝撃に、星街は百鬼本家の武器庫から押収したDX日輪刀を取り落としてしまう。
「仮に……。仮に中卒だとして、中卒がVtuberになっちゃいけない道理はねえだろ!!」(至言)
「落ち着け星街、同じ零期生のさくらがパクられて動転するんは理解る。けどな、これは現存するVtuberたちの宿命やねん」
「宿命?」
「せや。まず、ホロライブとにじさんじに所属するライバーの配信を初めて見た業界初心者は、ほぼ間違いなくこう思うねん。Vtuberって……。意外と人間味があるんやなあ、ってな」
「な、なるほどお〜?↑↑」
「Vtuberを推す理由も、普段の活動の頑張りや人間性、単純に一人のクリエイター、表現者としての能力の高さ、出身や好きなアニメが近いから、などなど……。よりVtuber自身の中身に迫ったものが多くなっとる。要するに、親分が創始したこの業界やけど、親分みたいなスタイルを最後まで貫いたんも、また親分しかおらへんねん」
「た、確かに……」
「それでな……。あんたには角巻とのセッションに並行して、零點伍期生討伐に協力してくれる輩どもを捜しに行って欲しいねん」
「なんか、すいちゃんのやること多くない!?」
「しゃあないやろ。現状、他に頼める輩がおらんねん。歌唱力、知名度、頭の回転速度、活動歴の長さ……。せやけど、まだ零點伍期生を一網打尽にするには実力が足りひん。助っ人が必要や。零期生より先史に君臨する……。ホロライブ過負荷一期生の存在がな」
「ホロライブ……。過負荷一期生!?なにそれ、すいちゃん初耳い〜!!↑↑」
「星街やあずきちよりも先に、ホロライブ的な活動をしとった五人の先輩たちや。気いつけや?平均年齢が八十を超えとるし、政界や経済界への顔も広いから、一つ下手を打つだけで物理的な意味で私らの首が飛びかねへん。謁見の際は失礼のないようにするんやで」
「うう……。やだやだ、ますますきな臭くなってきたじゃん?」
「ぼさっとしとったら、ホロメン全員黒服にパクられるで?赤井の妊娠も懸かっとる……。ここが踏ん張りどころや、星街」
「百鬼本家から奪取した、織田信姫の愛刀……。DX日輪刀」
「触った感じはどうや?実戦でもいけそうか?」
「うん。まだ武士街を宿した状態で握ってないけど、感覚は悪くないね」
「僥倖や。一旦戌亥分家に戻って、大爺様から過負荷一期生の居場所を……」
途端、首元を押さえ、苦しみ出す星街。
「あ"……。がっ……!?」
「なんやこれ……。サスケはんの呪印みたいなモンが浮かんどる」
「なんなの……!?すいちゃん、落ちてるキノコとか拾い食いしてないよ!?」
「あかん……。これ、劫血やられや!!」
「劫血やられ!?」
「あんた、直近で夜空メル・ゼナと戦ったんはいつや!?」
「つ、ついさっき……」
「そこで攻撃を喰らったんやな……。ええか?落ち着いて聞け、星街。いまのあんたは、大量の火畜から生命エネルギーを吸い取られてる状態にある」
「大量の火畜から……!?」
「逆に言えば、この瞬間、葛葉は大量の星詠みから生命エネルギーを吸い取られとんねん。火畜と星詠み……。この二大勢力が潰し合いを続ければ、最悪の場合、Vtuber業界そのものが崩壊することもありうる!!」
「そんな……。じゃあどうすりゃいいってのさ!!」
「待っとれ……。いいんちょはん!?いま、あの阿呆はどこに……」
慌てて連絡を取ろうとする戌亥のスマホが、突如として異様な挙動を見せる。
『外部への救難信号を確認。Wi-Fi環境を強制シャットダウンします』
「!?」
「ちょ、なにその機械音声」
「やられた……。私のスマホ、既に公安にハックされとる」
「はあ!?じゃあ……。すいちゃんはこのまま、大量の星詠みを吸い取られ続けるしかないってことお〜!?↑↑」
「落ち着け……。いま考えとる。落ち着け……。焦ったら仕舞いや、肝心な時こそ冷静に……」
刹那、百鬼本家に貯蔵されていたDX日輪刀が眩い輝きを放ち始める。
「なんや!?」
「これは、まさか……!!」
『諦めないのが、俺の魔法だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』(内蔵ボイス)
そして……。
その日以降、城塞高地にハンターが現れることはなかったという。




