第1話 旧世界より①
長くて、長くて、果てしなくて――それでも、短いと錯覚を起こす。
まるで、夜空に一線を浮かべ咲く花火のような……そんな、儚い夢を見ていた。
△▼△▼△
「――きて」
一つ。
視界に一筋の光が差し込み、未だ完全に覚醒しない朧気な俺の耳が、脳が。
少女の声を認識する。
「起きて」
二つ。
今度は、完全に少女が発した言葉を認識した。
しかし、体は思うように起き上がらない。
「んも~!!起きてってば!!」
「アベシッッッッ――!?!?」
少女の肩にかけていたであろうスクールバッグが、何の因果か俺の無防備な腹にクリーンヒットする。
それを受けて一気に覚醒へと至った俺の体は、思わず飛び起きる。
「痛い!?何やってくれちゃってんの日葵ちゃん!!?暴力反対だよ道徳学び直した方が良いよ!!」
身を固め目に涙を浮かべながら、俺は目覚ましにしてはやけに暴力的な方法で起こしやがった凶悪な親友――一ノ瀬日葵なる少女に向かって必死に道徳を学び直すことをお勧めする。
「あっごめん!!私ってばうっかり……」
「うっかりって言葉で包むには流石に無理があるよ!!可愛い~ってなるんじゃなくて怖ッッってなるよ!!」
……とはいえ、悲しいかな、この日葵という少女はハッキリ言って滅茶苦茶美少女である為、人によっては「そんな所も可愛い!!」等という思考停止してんのかとでも疑ってしまう言葉で許容しちゃう奴も出るだろう。
どれ程美少女なんだい貴様と問われれば、すれ違った誰もが思わず振り返ってしまうであろう程に限りなく完璧な幼さが残る風貌と、雲のように白くふわっとした肩まで伸びた長髪に、どの宝石よりも煌めき輝く透き通った青色の瞳を持っている…………と、ここまで言えば彼女がどれだけ勝ち組なのかというのが伝わるだろう。
あ、だけど唯一。
そんな彼女にも一つだけ欠点がある。
それは…………胸が小さ――。
「フンッッッ!!!」
刹那、日葵の強烈な握り拳が、俺の腹に目掛けて繰り出された。
それは――俺程度の人間では避けようのない、そんな一撃。
「ヒデブッッッ――!!」
その時、人類は思い出した。
彼女の“異能力”が――知心と呼ばれる他者の心を読む事の出来る力だったと。
「な、何が欠点ですか!!最ッ低だよ天くん!!」
彼女が、俺の名前――天道天護の天の部分だけを取っただけの単純なあだ名を用いて俺に言う。
「そ、そうだ、ね。むしろ、それの方が好みって人、も――」
「フンッッッ!!!」
更に一発。
彼女から飛んできた拳により、俺は怒らせてはいけない人間と言う存在が居るという事を思い知るのだった。




