第四話 剣勝負
学校側から支援された剣を腰にさす。
「明日から、3日間は桃月学園が誇る。人工ユグドラシルに潜ってもらう。今回の目的は互いの事を知りチームを組む事だ。別に他の組と組んでも構わない。3階層までならギリ、ソロで攻略できる難易度だ。チームを組んだ者達は6階層には向かわないでくれよ。まだ君達には荷が重いし、今お前達が持っている武器じゃ倒せないしね」
人工ユグドラシル。人間が作り上げた本物のユグドラシルより難易度が低いと練習用と言われている。
死ぬ事はほぼないが、年に2〜3人は命を落としていると記事に書かれていた。例え本来より難易度が低くとも死ぬ可能性はあるので気を緩めない事だ。
「だが、安心しろ。最初の週は我々ら教員が人工ユグドラシル中の君達の行動を監視している。何か起きた時はすぐに対処する様に目を光らせておくよ」
美羅は色々と生徒達に説明をしてから今日の授業は終わる。
そして明日を迎えて人工ユグドラシルに向かった。何故周りから視線が気になる。
「あはは、まぁそうだよね」
零夜の両隣にいるのは風華と凛だった。2人はあり得ないほどに美少女でそんな2人とハーレムをしている零夜を見た男子生徒達は殺意を飛ばされていた。
事の発展は風華が零夜をチームに誘った事が始まりだった。その時は特に何も考えずに承諾したが、その後に剣バカと思われる凛も同じチームに入りたいと言う事でこの3人でチームを組む事になった。
「それで、一条さんはなんで俺を誘ったんだ?」
「風華で良いですよ。チームなんですから、そんな堅苦しい呼び方は禁止です」
「そうか。なら俺も零夜で良いよ」
「はい。零夜さん」
「ズルい!あたしも凛って呼んで良いから、あたしも零夜と風華って呼んでいい?」
「ふふ、勿論です」
「俺も構わないぞ...それで、なんで2人は俺をチームに誘ったんだ?」
誘ったより凛は自分からチームに入ってきたが、知り合ったばかりの自分となぜチームを組みたがるのか疑問を抱いていた。
「あたしは、少し零夜の事が気になったから?」
「え?」
凛は首を傾げながら、零夜の顔を覗き込む様な体勢をする。そんな可愛いらしい凛に、思わず胸がドキリと音をたてた。
「あたしと同じ歳なのに、天下五大流派の全てを中ノ段まで極めているって聞いて、戦ってみたいの」
「え?あ、あー。なるほどね。なら、今やっとく?」
ちょうど動ける場所にいるし、それに自分が今どこまで通用するのか気になっている。すぐに零夜と戦える事にパァッと満面な笑みを浮かべる。
「よし、やろう!今やろう!」
「なら、私が2人の審判をやります」
俺と凛は向かい合わせになり、その間に風華が立つ。審判は風華がやり。風華が手をあげる。
お互い剣を紐で巻きつけて、鞘から抜けない様にした。
「それでは模擬戦、開始です!」
模擬戦の始まりを告げた。
双方剣を交える。
「動かないなら、先にあたしから行くよ」
凛は連撃の剣技を零夜に打ってくるが零夜はそれを全て弾き返す。30秒くらい打たれ続けていたが一度お互い距離を取った。
零夜は凛の攻撃を全て弾き返した、剣を握っている手を見ると震えていると気付いた。
...まじかよ。なんて破壊力だ。守るだけで精一杯だったぞ。
「そう簡単に倒せないか。ならギアあげるよ」
超スピードで間合いをつめて、先程より早い連撃を繰り広げる。
「鬼丸琉弐ノ番鬼狩り」
「?!」
上から下へ円を描くような斬撃を放つ。
だが、そのスピードは零夜が知っている本来のスピードより速く驚くのだった。
零夜は瞬時に剣を横にして防御をする。だが、あまりの威力や2人の鞘が砕け割った。
「え?!」
零夜は受け止めた剣を、手首を返して受け流す。
体勢を崩した凛の首に刃を向ける。
「今、完全に決まったと思って気を緩めただろ?まぁ、俺が光世琉を取得してなかったら今のは決まってたかも知れないな」
「あはは、こりゃ勝てないや。降参だよ」
「そこまで!」
風華が終わりの宣言を言い放つと、零夜は戦闘体勢を解除する。
「弐ノ番を使えるって事は下ノ段以上か?」
「うん、一応これでも中ノ段までは取得してる。この歳で中ノ段を取得してる事にチヤホヤされてたけど、五つの流派を中ノ段まで取得している零夜を見た時は上には上がいるんだなって思った。こりゃ、勝てないや。なんかあたしの夢の世界最強の剣帝の夢が馬鹿馬鹿しく思ってきた」
「まぁ、確かに勝てないな。このまま修行しても俺に勝てないよ」
「むむっ、そんなハッキリと言われると、なんかムカつくな」
凛は不機嫌そうに頬を膨らませるのだった。
「別に絶対とは言ってないだろ?鬼丸琉を極めても凛は俺に勝てない。だって、その流派合わないだろ?」
「え?」
図星なのか、凛は目を大きく見開いて驚くのだった。
「凛の癖や戦い方的に童子琉が良いと思うぞ」
「童子琉...」
「もし、童子琉を習いたいのなら初段なら教えられるぞ。凛の夢の剣帝を本気で目指すなら、俺は童子琉を覚えた方がいい。凛にはその可能性があるって確信してるからな。どうだ?呼吸法なら教えられるぞ?」
「お願いします」
「おう!」
「いや、2人の戦いは素晴らしかったです。感激いたしました」
2人の模擬戦を見た風華はパチパチと拍手をした。
「零夜さん、凛さん。改めてお願いします。私とチームを組んでください」
風華は深く頭を下げるのだった。
「そういえば風華は何故俺を誘ったんだ?」
「そうですね。それは勘です」
「勘?」
「はい。零夜さんを見てビビッと来たのです。零夜さんとなら私の野望を叶えてくれると」
「野望って?」
「ユグドラシル全制覇です。それが私の野望です」
ユグドラシル全制覇。
それは誰もが夢を語る夢の話。180年間誰もが攻略できなかったユグドラシルを60年前の黄金の世代で一つ制覇した話は風華にとって大好きな話なのだ。
「60年前の記事を見て私もユグドラシルを攻略してみたいのです。私は歴史が好きで、ユグドラシルを攻略して桃太郎さんやガロンさんの様に勇者と呼ばれたい。それが私が目指す道です。零夜さんとなら私の夢を叶えられる駆け足になると直感ですが、そう思いました」
風華の本気の瞳を見て、零夜と凛はウンと頷き、風華と手を取る。
「ユグドラシル全制覇。なかなか面白そうじゃないか。良いよ。風華が勇者になる瞬間を見てみたくなった」
そして凛は2人の手の上から、そっと自分の手を置く。
「勇者。良い響きだね。夢がデカいとワクワクするもんね。あたしは必ず剣帝になる。剣帝の仲間として勇者になって貰わないとね!」
「凛さん、零夜さん...」
自分の夢を馬鹿にされなかった事は初めてなのか、嬉しそうに涙を流すのだった。
「2人に出会えて本当に良かったです」
その野望は剣帝と勇者...




