第一話 桃月学園はようこそ
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—————今から遠い遠い昔、1番最初に覚醒者となった偉人がこう言った。
「諦めるな!諦めない限り人類は負けたなど認めない。例え今勝てなくとも、人類の底知れぬ進化は、いつかあいつらに牙が届き得るだろう...人間を舐めるなよ」
鬼どもが地球をあと一歩の所で殲滅する所まで行ったのだ。だが、たった1人の人間の手によって絶望の中に光の希望が見えてきた。
最初の覚醒者は桃太郎と名乗った。桃太郎は1人で勝てないと分かり、3人の覚醒者と共に地上にいる鬼を殲滅する。
次々と覚醒者は誕生して、平和を取り戻す為に鬼を滅する覚醒者達の精鋭を作った。才能を持った覚醒者が多数いた事に、後にその時代を黄金の第一世代と呼ぶ様になる。
鬼に負けない覚醒者を絶やさない為に、『魔滅師』を早期育成する機関が各国に建てた。
それから長い年月が流れ、覚醒者ばかりが集まる日本最大教育機関『桃月学園』から物語は始まる.....
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俺は今門を潜ろうとする。
桜が舞い散り、晴れ晴れと澄みわたる空に、二つの旗が揚々とはためく。その2つの旗はこれから入学する我ら桃月学園の象徴と言え、桜のイラストの後ろに刀がバッテンするかの様に刻まれてあった。
それは勇敢な魔滅師を目指す少年少女にとって憧れの象徴だった。
日本中の子供達が集まり、一年生だけでその数300人はいる。グランドに新入生達が並んでいた。
その中に、俺こと神楽沙 零夜がいた。後ろを刈り上げた白銀の短髪に鋭い目つきの中は黒い瞳、左頬から額、そして首にかけて大きな火傷の跡がある。 左耳には2つの金のリングピアスをつけていた。
「早く終わんねぇかな」
長々と話す教職員に、俺は退屈そうに立っていた。
「ふぁ〜」
あまりにも退屈な話に、思わずあくびをしてしまう。
早く終わってくれないかなと考えていたら、話が終わったのかと奥から入れ替わるように腰まで伸びている髪と髭。丸メガネをかけていた、どうやらあの老人がこの桃月学園の学園だと次の一言目で実感する。
「入学おめでとう。若人よ」
「?!!」
その老人が一言発しただけで、新入生達の場の空間は圧するかように膨れ上がる。老人から溢れ出る闘魂量から押しつぶされそうだった。
「おっと、すまないのじゃ。ワシながらおとろいてしまったようじゃな。闘魂を抑えるのに精一杯じゃ」
老人は先程の圧力が嘘かの様に鮮やかな顔を浮かべる。俺はまさかここまで化け物だったのかと思わずニヤっと笑ってしまう。
「長々しい話に退屈しておるじゃろう。安心せい、ワシの話はすぐに終わらせる。最近腰が痛く立ち話は苦労しておるのじゃ。ほっほっほっ...さぁて、知っておる者は多いじゃろうが、自己紹介をさせて貰うのじゃ。ワシは桃月学園の学園長でもある、大仏 宗一郎じゃ、以後よろしく」
宗一郎は自分の髭を撫でながら自己紹介をする。
「えぇ、近年鬼は力をつけ増加の一途をたどっていることは知っているじゃろう」
学園長の言うとおり、最近のニュースでは鬼が街を暴れている事件が増えているばかりだ。それに、地震や台風などと言った災害も増えている。
科学者達は、200年前に起きた災害が再び到来する予兆じゃないかと仮説をたてている。
「200年前みたいにもう一度鬼に支配された絶望を君達の家族や友人に味わせたいか?」
その言葉に息を呑むものがいた。
何故だろうか、宗一郎の声音は話す相手を心地よくさせるのだった。
「君たちは何の為に覚醒者となったのじゃ。この日本を...地球を守る為だ。鬼なんかに屈してはならぬのじゃ。名誉ある魔滅師になる為に、ワシら教員は才能の原石でもあるお主達を鍛えさせる。あの200年前の大災害を再び起こさぬように。ワシ達は...いや、全日本国民が、君達のような有望な若者を求めているのじゃ.....改めて、我ら桃月学園にようこそ!」
「「「「「おおおおっ!!」」」」
学園長の激励を受けて、新入生は湧き上がる。
覚醒者はそれは神から授けられる、特別な脳力である。生まれてくる赤ん坊は稀に、闘魂と言う特別な力が込められているオーラを纏って生まれてくる。
鍛えればその者の個性に応じて、彼ら一人一人には特別な能力が扱えられる。世界の魔滅師教育機関は覚醒者達を競わせて、最強の魔滅師を選別させる、弱肉強食の世界だった。強ければ幸福、弱ければ不幸になる世界だった。
やっと長い入学式が終わり、新入生達は指定のクラスに向かうのだった。俺は一年A組に向かった。この学園は実力主義な学園で有名でAからFまで存在している。試験の結果で振り分けられていてAが優秀生でAに近い組につれいい成績を残している。
「...」
「...だろうな。やはり、A組だったか」
そこにいたのは物凄く顔見知りの男だった。
男は俺の顔を見て、また同じクラスだと笑っていた。
「北斗、B組以下だった時はバカにしようと考えてたのにな」
「この僕がA組になれないとでも?」
空条 北斗。右側の髪の毛は前髪以外すべて後ろのマンバンヘアーで両耳には真珠の耳飾りをつけている。そして隠す様に右目には眼帯をつけていた。小学生から一緒にいる事から、意気投合して親友と呼べる仲であった。
「まぁ、零夜。改めてこの一年間よろしくね」
桃月学園は他の高校と違って、四年制までとなっている。だが、特別に成績が良いほど稀に飛び級が認められ、過去にたった一年で卒業した生徒がいると噂されていた。
2人がそうして話していると、A組の担当教師が入ってきて教卓の前に立つ。生徒達は自分の席に座るのだった。
「顔合わせは済んだか?」
赤茶のポニテの女性だった。
「私の名前は秋元 美羅だ。正式なクラスの自己紹介は明日に済ませる。今日は資料を渡して、自分達の寮に案内するのがメインだ。以上!これから女生徒は女子寮に男生徒は男子寮に向かってくれ。寮が分からない者は、今渡した資料の地図を辿ってくれ」
それだけ言って美羅は廊下に向かった。説明の仕方からどこかめんどくさがりだと分かる。生徒達は立ち上がり教室を後にするのだった。
「北斗行こうぜ」
「なぁ、零夜はチームを組む相手は決めてあるか?」
「チーム?あー、そういえばそんなのあるな」
魔滅師は6人のチームを組んで鬼を滅する事が多い。何故6人かと言うと、黄金の世代である覚醒者が人間が最も活動しやすく連携が取れるのは人数は6人と言われていた。その時代から6人で活動する事が多くなっていく。
「お前以外に知り合いなんていねぇから、誰とも組む相手は居ないぞ?また俺らで組むか?」
「いや、今回は前と同じじゃつまらないだろ?高校からは敵同士になってみないか?」
「また、何で?まぁ、俺は別に良いけど。何か理由はあるんだろ?」
「特に深い意味はないさ。前みたいに手を組んで頂点を取るのは容易い。別にこの学園のレベルが低いとは思っていないが、君とならすぐに頂点が取れそうだ」
「ふーん、そうか」
北斗が言いたい事が察した事に、零夜はニヤリと笑う。
「確かに北斗と組んだら、お前の頭脳でてっぺんなんぞ簡単だよな」
「うん、そうだね。君の戦闘技術があれば学園の頂点なんて夢でもない」
「俺らが2人でいたら成長もしないし」
「つまらない」
「ワクワクするねぇ。良いぜ、お前の最強のチームと俺の最強のチーム。どっちが先に頂点を取れるか勝負だ」
「ああ、背中を任せる親友での関係は悪くはないが、君とライバルとして共に競争する関係も悪くはない」
「親友じゃなく悪友の間違いじゃねぇか?」
「それは良い意味での悪友なのかい?」
「どうだろうね」
いつも相棒の様に隣に立っていた親友が、ライバルとして対面する事は初めてだった。
2人が別々の道に進む事で、神楽沙零夜の人生は一変させる出会いが待っていた。その事は今の零夜には知る由もなかった。
2人は相棒からライバルに?!