episode11・・・エリトリアの現状
「大丈夫?」
そう言って男の人は優しそうに笑って手を差し出してくれた。その人は金髪碧眼で、道を歩けば10人が10人振り返るほどのイケメンだった。
そんなイケメンに手を差し出してもらったらドキドキするのが普通の女の子なんだろうけど、私はそんな気持ちにはなれなかった。
―――――――――――怖い。
今私の中の感情はそれだけしかなかった。なぜだかは分からない。だけど今までの人生の中で一番怖い。
「どうしたの?」
その声ではっ、と我に返った。目の前にはその男の人がいた。心配そうにこっちを見ていた。
「あ、えっと、大丈夫です。助けていただき、ありがとうございます」
私は怖がっているのを悟られないように平静を装った。なんとなく、この人には弱みを見せてはいけない気がした。
「そう、なら良かった。それじゃあね」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
気付いたら呼びとめていた。この恐怖から早く逃れたいのに。
「何?」
「えっと、お名前は……?」
これだけはどうしても聞かなきゃいけない気がした。聞かなかったらこの後後悔しそうだったから。
「ああ、名前ね。僕の名前はランス、ランス・フォゼリンガム・パーカーだよ、アヤナさん?」
ランス・フォゼリンガム・パーカー、か……って、え?
「あの!どうしてわた……あれ?」
気がついたらランスさんはいなくなっていた。さっきまでそこにいたのに…………。それに、どうして私の名前を知ってたんだろう……。
「お~い!綾奈~!大丈夫か~!?」
おっと、守が呼んでる、行かなくちゃ。このことは後で考えよ。
「綾奈!ごめんな、俺がふがいなくて……」
「綾奈さん!大丈夫でしたか!?怪我とかしてませんか!?」
守のところに戻るなり、二人に心配されまくった。そこまで心配することないのに……。
「だ~いじょうぶだよ!私、そこまで弱くないから!」
「うっ」
「そうですか?でも守さんが負けた相手だし……」
「守なんか関係ないよ~、女の子一人に助けられる奴なんて、ね」
「うっうっ」
言葉にとげを入れまくる。だってあんな怖い思いしたのこいつのせいだし。
「ご、ごめんなさい……」
あ、守泣いた。こりゃマジ泣きだな。仕方ない。
「いいよ、守。これからは私が守ってあげるから」
グガーン!と、守の中で音が鳴った気がした。でも気のせいだ。多分。
「そうそう、あの人たちどうなったの?」
愕然とする守を尻目にアリシアに聞いてみる。もともと、あの人たちを助けるためにあんなことしたんだからお礼の一つでも言ってもらいたい。
「ああ、あの人たちなら怪我を治して家に帰しました。とてもお礼を言ってましたよ」
私へのお礼は無しかい。
「それで、あの人たちから気になることを聞いたんですけど……」
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「……ふ~ん、なるほどね」
アリシアから聞いた話は要約するとこうだった。
最近、ここの領主が死に、新しく領主になった奴が税を今までの倍以上とるようになり、払えない奴は金で雇ったゴロツキ共で脅すという最低なことをしているということだった。
…………なんというか胸糞悪い話ね。だからこんなに活気がなかったんだ。
「で、どうしましょうか」
「もちろん!助けるに決まってるさ!」
さっき復活した守が例のごとく言い放った。そして私も例のごとくため息をつく。
「あんたねぇ、助けるのはいいけど、どうやって助けるつもり?あんた、下っ端にも負けちゃうじゃない」
「そこを何とかしてくれるのが綾奈だろ?」
「はぁ?」
「頼りにしてるぜ?」
「………………はぁ~」
本日、何回目かのため息をつく。
かんっぜんに私任せかい、まったく……そこまで言われちゃ、なんとかしないわけにはいかないわね。
なんだかんだ言って綾奈は守に甘いよなぁ。
綾「はぁ!?」
だってなんだかんだ言って守のこといつも助けてんじゃん。
綾「あれは一応幼馴染だから……」
はいはい、ツンデレツンデレ。さて次回、作戦会議。お楽しみに~♪
綾「私はツンデレじゃなぁ~いっ!!」