育成シュミレーションしてみましょうか②
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授業も訓練も毎週あるわけではなく協会や町の用事などで潰れる時もある。
協会の主な収入が寄付であるため街の清掃事業や魔物の発生などで大人達が居なくなってしまう事があり、そんな時は子守役の少年少女が面倒を見る事になる。
今日も近所の森で大量発生した猪が魔物化したボアの討伐に向かった。
数人の冒険者が同行するし神父も何度も討伐に行ったことがあるため危惧するほどのことでもないらしく、孤児院の年長組を数人連れていった。
今回のメンバーから外された俺の子守係の少年がふて腐れていたので親孝行ならぬ兄孝行することにした。
「ダン兄ちゃん。剣教えて」
「ん?どうした珍しいな。いつもは俺が誘っても魔法の勉強ばっかしなのに。何だ兄ちゃんが寂しくなっちゃったか!しょーがねえな。いっちょ兄ちゃんが手ほどきしてやるよ!」
ダン兄ちゃんは徐々に機嫌を取り戻し、言いきる頃には木刀片手に部屋を飛び出していった。
ちなみにユーリ姉ちゃんは同い年の女の子とその妹とぬいぐるみを作るそうだ。
娯楽が少ないこの世界では娯楽を生み出すこともまた娯楽になるらしく楽しそうに糸やら綿やらを選んでいる。
「何してんだ!早くやろうぜ!」
ダン兄ちゃんが木刀を鳴らしながら急かしてくるのでそろそろ行くとしようか。
さてさて、ダン兄ちゃんがさっき言ったとおり俺はあまりダン兄ちゃんとの稽古が好きじゃない。
魔法が新鮮で興味がそそられやすいのもあるがそれよりも重要な問題がある。
それは…
「ダン…にいちゃん…もうやめよう」
「何言ってんだ。まだ、半分も終わってねえぞ!」
「16歳の訓練メニューを6歳に耐えきれるわけないって」
「根性が足りんのだ!」
これだよ、これ。
スポコン精神の根性論主義者なんだよ。
ハーフマラソンに近い距離をで走り切り、体重の三分の一の程の重さの鉄剣で型を習い、休憩もそこそこに体術を用いた武稽古などこれでもかというほどの詰め込まれた。
地面に倒れこむ俺を傍目にダン兄ちゃんは鉄剣を2本頭上に抱えスクワットしていた。
相変わらずの体力バカだこの兄ちゃん。
俺と同じメニューをこなしながらも疲労を感じさせない。
そこまでは師範と同じなのだがダン兄ちゃんは師範と違い、限界というものを理解していない。
自分に出来ることは他人にも出来ると思っている。
正直制止役のユーリが居なかったら俺は重傷を負っている可能性もあっただろう。
このままじゃ俺は…いや、俺以外かもしれないが取り返しのつかない重大な事故がおきる
その前にダン兄ちゃんには敗北を知ってもらう
「ダン兄ちゃん。勝負しよう」
「おっ!やっとやる気になったな」
「普通に勝負してもつまらないから負けた方が言う事を聞くってことで」
「そういうことは俺に一度でも勝ってから言うんだな