美しい華には棘があります。 2
―――ローザリアスト女学園
貴族のご令嬢が大半を占める学園。
「忘れ物はないですね。」
「…ルシカがお母さんみたい。」
「俺は母ではなく婚約者です。」
私が学園を卒業するまで、とりあえず「婚約」という形に収まった。
まぁ、いずれは結婚するんだろうけど。
でも、前よりも嫌じゃないかな。
それよりも、今日から楽しみにしていた学園生活が始まるのだ。
リオナさんに話は聞けなかったけど、自分で体験して感じたらとっても新鮮だよね!
「いってきます。」
「くれぐれも、自分の生活について話してはいけませんよ。」
「わかってます。」
「いってらっしゃい。」
どうして、話しちゃいけないんだろう?
―――…
いいですか?
サラが王都で生活していたこと、俺と生活していること、「薔薇姫」であること、その相手が俺であることを第三者に言ってはいけませんよ。
なんて、意味不明なことを云いつけられた。
いけないことなのかなぁ…
馬車に揺られること約30分。
色とりどりの薔薇が咲き誇り、格式の高さを感じさせられる校風。
「ここが、私がこれから通う学園。」
「サラ様、いってらっしゃいませ。」
「はい、いってきます!」
広大な敷地に、豪華なのに落ち着いた雰囲気の校舎、庭園にはいくつか東屋もある。
まずは、理事長室に行かないと!
誰か、生徒はいないのかなぁ…
「御機嫌よう。見慣れない顔だけれど、貴女転入生ですの?」
「はい。今日からここに通うんですど、理事長室がわからないんです。教えてもらえますか?」
「…貴女、どこのお家の方?」
「え?」
「その言葉づかい、貴族の令嬢にあるまじき言葉づかいですわ!嫌ですわ、汚れて今います。貴女とお話しすることはありませんわ。」
何?この人…
ムカつくんだけど…
「それでは。」
「…」
「ふん。挨拶もできませんのね。」
そういって颯爽と立ち去っていく、どこぞのご令嬢。
私、この学園でやっていけるんでしょうか。
さ迷うこと1時間、っようやくたどり着きましたよ、理事長室に。
コンコン
「どなた?」
「今日から転入するサラ・ルノアールです。」
「どうぞ、お入りになって。」
「失礼します。」
理事長は私と同じ銀髪だった。
瞳は深い紫色。
どこか懐かしい感じがする。
「はじめまして、私はマリア・ルノアール、貴女の祖母です。」
「…私の、おばあ様?」
ルシカもウェラ伯爵も知っていたの?
両親の姓を教えてもらって、その名前で転入手続きをした。
ふわりと、優しい香りが私を包み、優しい腕が、私を抱きしめる。
「信じられません。あの娘たちの子が生き残っていたなんて。もう一度貴女に会いたかったわ。」
「…おばあ様。」
たくさんの話をした。
おばあ様は、ルシカとウェラ伯爵から話を聞いていたようで、何度も涙ぐんでいた。
「サラの名前は偽名を使いましょう。」
「偽名?どうして?」
「自分の身を守るためです。ルノワールでは、私の血縁者とすぐにわかってしまいます。そうですね、シアンデルにしましょう。」
今日からの学園内での私の名前は「サラ・シアンデル」になりました。
身を守るためって、この学園は危険がたくさんあるのかな???
学園生活、スタート♪
祖母が登場。波乱の学園生活スタートしました。