第23話 苦味美味しい珈琲モドキ?
拠点には、レシアムが念入りに隠れ蓑みたいな結界を施してくれて。
そのあとに、三人で山の中を歩いていく。ただ、セルシスの格好が騎士服ほどでなくても、きれいめの軽装なのが目立つのよねぇ?
「セルシス、替えの服とかあるの?」
「無くはないが……汚いか?」
「逆よ。きれい過ぎて、山の中で目立たない?」
「というと、君みたいにシンプルがいいのか?」
地味め、というのは聞かないでおくわよ?
たしかに、私の今着ている服はお手製でも町娘って感じだもの。シンプルイズベスト。シャツとズボンも手づくりよ? 前世は家政部ってサークル活動してたから、型紙のパターンさえ整えれば自分で作れるくらいの手芸マニアだったの。
毛糸については、材料がないから作れなかったのよね……ニット製品とか大好きだけど。
それはさておき、魔法を使って着替えてくれたセルシスはマント以外もかなりシンプルな装いになったわ。防具とかは、そのままだったけど。
『ほら、あそこ』
話しながら歩いていると、レシアムが目的地に到着だと教えてくれた。シェルンの実のように木に成っているモノかと思ったら……つる草の方に前足を向けていた。ところどころ、青梅のように固そうな実があったわ。
「これが、飲み物になるものなの?」
『うん。マリンかセルシス。コップ貸してくれるかな?』
「割ると、すぐに汁が出てくるのか?」
『意外とやわらかいんだ』
セルシスがコップを持ち、レシアムが爪を実に刺すと、ぷっ、と、なにかが沁み出してきたわ。
黒い液体。
だけど、嫌な臭いはしなくて……むしろ、嗅ぎ慣れたような、懐かしい香りがしてきたの。
皮からコップに伝っていく液体の色は、茶色がかった黒い液体。溜まっていくと、その正体に私は心が躍りそうになったわ!!
「コーヒーね!」
「芳しい香りだが、そういう飲み物か?」
「ええ。そのままでもいいし、乳と合わせるとまろやかになるの」
『へぇ? そんな飲み方なんだ』
ひとつ分がコップに溜まったら、セルシスが改めて香りをたしかめていたけど……慣れない匂いだからか、顔をしかめたわ。
「香ばしいが、強い臭いだな……」
「それがコーヒー独特の匂いなの。……レシアム、もう一個いーい? ブラックでいいから飲んでみたいわ」
『いいよ~』
同じようにしてコップに溜めていく。間近で香るコーヒーのいい匂いに、はやくはやくと思ってしまうのは仕方がない。転生して、五年ぶりの嗜好品よ? お酒は前世じゃあんまり嗜んでいなかったけど、コーヒーは別。
あったかいのもだけど、冷たいのも格別だし。牛乳やシロップとかでアレンジしてもいい。
異世界初のコーヒーモドキでも、どんな味がするのか……溜めきったら、まずは匂いを確認。アイスコーヒーくらい、濃い匂いね? 慣れてないとたしかに渋い顔になるかも。
「いただきまーす」
「待て、アルマリン。毒味もなしに」
「あら? あなただって、私が先に食べているの知ってて色々食べてきたでしょう?」
「……そうだな。そうだった」
今更、お城のように毒味役無しで、お腹も壊したりしてないから問題ないもん。噂どーのこーのの、死に至る心配も、精霊様であるレシアム先生の保証付きだから大丈夫だし?
なので、改めていただきますをしてから、ふたりでコップを傾けてみた。
私は馴染み深いブラックコーヒーの味に美味しくてごくごくしてたけど、セルシスの方は……思いっきり、咳き込んでいたわ。
「……大丈夫?」
「げほっ。……これは、薬か?」
「嗜好品のひとつに近いわ。……苦いのダメだったかしら?」
「……君は、平気か?」
「前世じゃこれくらい、普通の飲み物として売ってたりしてたわ。自分で紅茶のように淹れたりもしてたし」
『ぼくにもちょーだい~?』
「……飲みかけでよければ」
『わーい。……まあ、たしかに。ちょっとびっくりする苦さだね?』
男性二人にはあんまりお気に召さない飲み物だと発覚。
だけど、これを砂糖かミルクポーションのようなもので味付けすれば飲めそうね?
でも、糖分摂取のやり過ぎになるだろうから……あんまりしたくない。
とりあえず、このルルクの果実は私専用の嗜好品に決定したので……お茶になるものを探すのに、もう少し山の中を探索することになったわ。セルシスのがないのは可哀想だもの?
次回はまた明日〜




