第117話 私たちのスローライフは
最終回です
繋がりが変わっても、過ごし方は大きくは変わらない。
そんなスローライフがあってもいいと思う。私は、そう感じたの。
「うっわ……目立つ奴らだな?」
「どこの貴族? にしては、顔出し堂々としているけど」
ざわざわとした外野の声が聞こえるが気にしていない。
私とセルシスは、堂々と冒険者ギルドの門をくぐったの!
「すみません。冒険者登録二名お願いしたいんですけど」
「は、はい」
受付の女性をも圧倒させてしまうあたり、やっぱりこの外見は周囲には相当刺激を与えちゃうらしい。ぽわ~と、一目惚れしそうな勢いとか。
セルシスはともかくとして、『私』もまた成長して美少女度がぐーんと上がったんだもの。外見年齢はだいたい二十歳くらいね?
「おいおい。綺麗どころが来る場所じゃねぇんだぞ? 城とかに行って騎士とかに志願した方がいいんじゃねぇか?」
と、受付のお姉さんが復活するまでに、野次馬からやっかみを買ったのはセルシス。彼もちょこっとだけ成長したけど五歳くらいプラスされた感じね? でもでも! 彼女としては外見が認められていることにはミーハー魂が疼くわ!! は、さておき。
「別に志願するつもりはない。こちらに用件があるから来たまでだ」
「あ゛?」
「俺たちは冒険者になるために来ただけだ。外面だけで勝手に決めつけないでくれ」
「なにぉ……あいででで!!?」
掴みかかってきたのを、軽く避けて逆に背負い投げするんだから。私の彼氏は世界一強いのね!
「そこまでにしておいたら? このあと相手すると面倒でしょう?」
「……そうだな。それは面倒だ」
野次馬たちもセルシスの腕前にぽっかーんとしちゃって、それ以上つっかかってくることはなかった。手続きも無事完了して、『偽名』を使っているけど私とセルシスのふたり分の冒険者カードが出来上がった。ランクは最低だけど、採取依頼とかは出来るんじゃないかなってすぐに買い取りをお願いしたら。
「……あらら。もう、ランクFがD??」
「……あの山の幸だからな」
グルーミンの山で取れた果実とかを適当に納品して買い取りもしてもらったら、そこそこの金額になったし、ランクも上がった。どうやら、レシアムと出会ったあのお山は何気に凄い狩り場だったと改めて実感した。
その会話も聞いていた野次馬たちに振り返れば、すぐに冷や汗だーだーな表情になったのが面白かったけど……やっぱり、拠点は当分あのお山がいいわね? セルシスとは市場とかで買い物をして、冷やかしをしたあとには拠点に帰ることにした。
「人里って、こんな感じなのね?」
「……君の以前いたところとは違うのか?」
「賑やかのレベルが違う感じかしら? 建物とか」
恋人繋ぎをしながら街を出歩く私たちは……どう見ても、美男美女カップルにしか見えない。セルシスの美貌に当てられて変なナンパとかされないようによ。私もだけど。
「……街に住む気はないか?」
「うーん。これといって魅力が少ないのよね? もともと、アウトドア派だし」
「そうだな。俺もあの家がいい」
「ふふ。ここ数年でたくさん改良したものね?」
セルシスと付き合うようになって、皆と過ごしてたった三年だけど。
小屋も建て直したし、お互いに【宝石族】の覚醒も何回か起きた。そのおかげで、外見の成長も一気に変わった。キス以上のことは……まあ、それなりに。セルシスも実年齢が十五歳にはなったから、応えてあげたの。こっちは一桁だけど、別に被害者じゃないわよ。合意の上でだもの。
は、さておき。
念願だった身分証明書はゲット出来たし、市場で軽く冷やかししながら買い物もしたから満足。街を出てしばらくしてから、レシアムとの合流場所まで無事に戻れたわ。
『おかえり~。大丈夫だった?』
「ただいま~。セルシスの勇姿が見れたのー。あとで教えてあげる~」
「大したことでは……」
『へぇ? それは楽しみだね? 市場とかどうだった?』
「色々食材はあったけど。やっぱりグルーミンの方が種類豊富ね?」
『たくさん探してきたもんね~?』
これからちょくちょくこの街以外にも顔出しすることは増えて来ても。もう【宝石族】の姫としてではなくて、亜人のふりをしたひとりの冒険者として活動していくことは決めていた。それが外見と精神の不釣り合いが安定するこの見た目まで育つのに、色々時間をかけてきたけど……そこに、セルシスがいるから安心はしているの。
私の唯一の相手で、頼れる最高の仲間でもあるから。
「ザクロさんとチロルちゃんは、まだ狩りに行っているの?」
『そうらしいよ~? マリンのカレーが食べてみたいって』
「あーね?」
「あれは……また食べたい」
たまたま、カレーパウダーに似た収穫物を見つけたから作れただけなんだけど。街にはお米もちゃんとあったから、今日のメニューは念願のカレーライス。前はパンと組み合わせただけだけど、それでもだいぶ美味しかった。
皆、夢中になるのも仕方ないわね?
「じゃ、帰ったらふたりも手伝ってね?」
「もちろんだ」
『美味しいご飯は活力の源~』
「ええ」
活動場所は増えても、私たちのスローライフは誰にも邪魔されない。そのために、これから長い時間生きていくのだから。
【終】
応援ありがとうございましたー




