ハナの記録④ 寝癖と鳥の声
今日は朝から、ハロとハハにじっと見られてた。
「どうしたの?」と聞くと、
「ハナだったんだ!」と帰ってきた。
ルームメイトの顔を忘れるとはなにごとだ!
そう思ったけれど、どうやら今日の私は髪がピョンと跳ねているらしい。
なるほど、生まれて初めての寝癖だ。
でも、それだけで私って分からなかったの…?
ちょっとショックを受けたりしながら、鏡に向かった。
確かに元気よくピョンと跳ねている。
髪をチョイチョイと触ってみたり、濡らしてみたりしたけど、どうにも頑固である。
最終的には、跳ねてる部分を持って指で加熱してみたりしたけど、今日の私の髪はどうしても上を向きたいらしい。
仕方なくそのまま作業場に向かうと、案の定、主任の目を引いてしまった。
主任の視線は明らかに頭上に向いていたので、先手を打つ。
「個性です」
「個性は寝て起きたら増えているものではない」
なるほど、そうなのか…
でも、
「でも、余計なことを考えてしまう個性も、急に出てきましたよ?」
「………」
これまた余計なことを口走ったなと目を細めて覗き見ると、なぜだか主任は複雑な表情をしていた。
結局、それ以上はなにも言われず解放された。
つまり、私の寝癖も個性ということで落ち着いたのかな…?
持ち場に向かうまでも、いつもより私に視線が向いている気がする。
みんなに見られるのはちょっと恥ずかしいから、ピョンと跳ねてるのは早めに落ち着いてほしい。
でも、個性が減っちゃうと思うと残念な気もしてくる。
……
お昼の休憩時間には、「休みの日は何をするか」で盛り上がった。
昔は休憩時間も休みの日もなかったけど、4年ほど前からこうなった。
ロコ先輩は休みの日に鳥の声を聴いたそうだ。
鳥はピーピー、チュンチュンという声を出すらしい。
施設の共用スペースにある端末にそのデータが入っているという話を聞いて、みんなで行くことになった。
ロコ先輩が端末を操作すると、「リラックスBGM01〜鳥の声と川のせせらぎ〜」と表示され、音が流れ始めた。
なんでそうするかは分からないけど、みんななんとなく目を閉じて聴き入っていた。
確かにピーピー、チュンチュンと聴こえる。
これが鳥の声……どことなくミミ先輩の声に似ている。
あと多分、それ以外の音が川のせせらぎなのだろう。
川は知識として知ってるけれど、せせらぎとはなんだろうか?
確か「せせら笑う」という言葉があったはず。
つまり、川の笑い声。だと思う。
そんなことを考えていると、ロナさんが「ミミ先輩の声に似てる!」とはしゃいでいた。
そういえば鳥は飛べるらしいけど、ミミ先輩もフヨフヨと浮かぶことができる。
となると、ミミ先輩は天使ではなく鳥だったのかもしれない。
またミミ先輩人気が加速しそうだ。




