#ザンギ、#ミーティング
「よう!」
ミーティングのために、城の会議室にザンギを呼び出したところ、呼んでもいないストロガノフもついてきた。
いっつもふたりでつるんでる。
まるで、ツインズのような仲良しさんだ。
「さっさと茶だせよ。あ、菓子もな。俺、甘い物苦手だからしょっぱい系」
ストロガノフはイスにドカッと腰掛けると、ふてぶてしい態度で我に要求する。
仕方ないので、深夜アニメを観賞しながら食べようとしていた、コーラとポテトチップスを差し出した。
「のり塩じゃん。コンソメねぇのかよ」
我はのり塩派だ。文句を言うなら食べなくてよい。
わがままを言うストロガノフをスルーして、ザンギと打ち合わせを開始した。
蚊帳の外となったストロガノフは、おとなしくポテトチップスを食べながら、週刊少年ジャジャンプを読んでいる。
「勇者のインスタで確認したところ、鎧と盾が揃ったので、今度は剣を探すらしい。でも、手がかりがまったくないらしく、大賢者と呼ばれるじいさんのところに話を聞きに行くみたいだ」
ザンギに勇者たちの動向を説明する。
ちなみに大賢者はかなりの変わり物らしく、深い森の中にある、ドワーフたちが作ったカラクリ屋敷にひとりで住み、日夜、世界の謎や神々のことを研究しているそう。
「じゃあ、大賢者の屋敷の前で、勇者が来るのを待ってればいいんじゃね?」
「そうだけど……、討伐計画とか立てたほうがよくない?」
「いらねーよ。正々堂々とタイマン勝負すりゃいんだよ!」
いかにも正統派ヤンキーらしい回答だ。
確かに、我は今まで策を凝らしすぎて、失敗していたのかもしれないな。
それに、勇者の性格上、ザンギが正々堂々と決闘を申し込めば、受けて立つだろう。
勇者が負ければ、神官もトルテちゃんも撤退するはずだ。
ザンギの男気に心打たれた我は、今回は『我は物陰から、ザンギと勇者の一騎打ちを見守る』という正攻法でいくことにした。
「で? 肝心の勇者は、いつ到着するんだよ」
「ええと、三日後かな」
「よっしゃ、まだ時間あるな。それまでに腕を磨くわ」
ザンギは拳を手の平に叩きつけた。なんと頼もしい。
ザンギよ、思う存分、仕上げるがよい。
「つーかさ……、女を盗られたからって、相手の男ボコるとかダサくね? やめろよ」
今まで黙って話を聞いていたストロガノフが、突然口を挟んだ。
「うっ……るせーよ! オメェには関係ねーだろーが!」
痛いところをつかれたザンギは、語尾を荒げると、顔を真っ赤にして、ストロガノフの前にあるテーブルを蹴り上げた。
テーブルは真っ二つに折れ、飛び散ったコーラとポテトチップスがストロガノフにかかる。
「あっぶねーな! なにするんだよ‼」
ストロガノフがザンギに詰め寄り、胸ぐらを掴んだ。
「オメェは黙ってろって言ってんだよ!」
ザンギがストロガノフの頬を殴ったことをきっかけに、壮絶な殴り合いが始まった。
仲裁など、絶っっ対にできない迫力と形相。
怯えた我は子猫のように、部屋の隅で体を震わせながら傍観していた。
「勝手にしろ。俺は一切関わらないからな」
ストロガノフが言い捨てて、会議室を出ていった。
「くっそ!」
怒りをぶつけるように、ザンギが壁をズドンと殴る。
壁はパラパラと音を立て、大きな穴が開いていた。
ザンギは、怒りを現したような、青い炎を体から立ち上らせると、扉を足で乱暴に開き、会議室を後にした。
壁の損害賠償は請求していいものだろうか。




