#男心
「オメェ、何してくれたの?」
ぼっちで魔界城に戻った我を、待ち構えていたのは魔界最強コンビの片割れ、ザンギだった。
おっしゃっている意味がわからないが、顔と声でマジ切れしているのはわかる。
「なっ、なんのこと……?」
物凄い勢いで、我に詰め寄ってくるザンギに、怯えながら聞いてみる。
「リコッタのことだよ! テニース国から戻ったら、突然『キャバ辞める』とか言いだして、ラインの返事もめちゃくちゃ遅くなったし、俺が何を話しても上の空になったんだよ!」
ちなみにラインとは、スマホ同士で無料メッセージを送り合えるサービスである。
(ははーん。ザンギめ、惚れているリコッタに、つれない態度をとられているな)
勘がよい我は、ザンギのご要望にお応えして、テニース国での顛末を話した。
特に勇者の『リコッタのことを大事に思ってる』あたりは、勇者のカッコよさが伝わるよう、臨場感たっぷりにお伝えした。
「へえぇ、勇者アルスね……」
手の平に拳を叩きつけると、ザンギは鬼の形相で呟いた。
メラメラと怒りに満ちた目と、笑っている口元のアンバランスさが非常に恐ろしい。
しかし、これはチャンスかもしれない。
「あっ、あのさ、我とともに、憎っくき勇者を成敗しない? 山奥村のカストでは色々あって失敗しちゃったけど、今度こそ亡き者にしようよ」
「おおよ! ぶっ殺してやる!」
「じゃあ、明日、ミーティングしよう」
拳を合わせるグータッチで交渉が成立した。
リコッタを盗られた恨みから、今度こそザンギは本気で勇者を殺しにかかるだろう。
ひょんなことから強力な味方を手に入れた。
「あとちょっとだ……」
部屋に戻ると、今までの疲れがドッと襲ってきた。
しかし、眠る前に最後の仕事が残っている。
明日のザンギとのミーティングのために勇者のインスタをチェックするのだ。
画面をタップすると、#勇者の盾、#継承のハッシュタグとともに勇者、テニース国王、大臣の三人がガッチリ握手している写真が上がっていた。
現在、ものすごい勢いでいいねやフォロワー数が増えている。
寝る前に不快なものを見るものべきではない。
そう判断し、速やかに画面を閉じた。
ふん、いまのうちにせいぜい、英雄を気取るがよい。




