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サクラのキセツ 陽  作者: 斎藤桜
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助け合う

 そこまで叫ぶと、咲希は和輝の手を振り払う。そして壁の方を向き、部屋の端に座り込んでしまった。そんな少女の姿、和輝が見ていられる筈もない。

「俺だって、俺だって誰にも悲しんで欲しくないよ。勿論、咲希ちゃんにもさ」

 頼って欲しい。はっきりそう言っても、咲希は否定した。だから遠回しに、和輝はもう一度そう言った。咲希に駆け寄って和輝は、優しく肩に手を置いた。彼女の震えを止めるように、優しさで肩を包む。

 それでも和輝は悲しかった。和輝が悲しんでいたから、咲希の悲しみも癒えなかった。お互いに想い合っているけれど、二人とも不器用で。擦れ違い、二人して悲しんでしまっていた。

「父上と私の話だ、お前には関係ない」

 低い声で、まず咲希はそう言う。それは、死を意識しない平和からやっていた和輝だから。怯えさせないようにと、優しさで言った言葉である。

「一葉の話だっけ? そっちなら教えてやる。城に私がいると思い込んで、豚が自ら出向いたそうだ。それも、驚くほどの大軍を引き連れて……」

 本当は仲間になったばかりの奴に教える内容ではない。それでも和輝を悲しませたくなくて、どうしても和輝を信じたくて。いつの間にか咲希は喋ってしまっていた。

 絶対に和輝の方を向いたりはしなかった。見つめているのが壁だからこそ、咲希も話し易かったのだろう。

「豚本人が見ているとなれば、楓雅も本気で殺しに来るだろう。深雪が少しでも時間を稼ぎ、一人でも多くを逃げさせてやれればいいが」

 咲希は兵や民、皆に逃げて貰いたいと願っていた。当然、大切な深雪を失うのは嫌だ。そして優秀な深雪も、楓雅が相手だと敵わないことも知っている。

 それでも咲希は、誰を見捨てることも許さなかった。自分を信じてくれる、全ての人に逃げて貰いたいと願っていた。

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