未来の夫
「ねえ咲希ちゃん、一葉さんが危ないってどうゆうことなのさ。その手紙お父さんからなんでしょ、なんて書いてあったのさ」
真面目な咲希の表情を見て、やっと和輝にも緊張感と言うものが生まれる。和輝にとって、一葉は大切にしたい女性。危険から救うことは出来なくても、状況くらいは知りたかった。
「俺は未来の夫として、それを知る権利がある筈だ」
お願いしても咲希に教える気配がないので、再び緊張感を捨てる。いつも通りの変態を装い、いつも通りの咲希に戻って貰おうとする。そうして教えて貰おうとしていたのだ。
しかし、和輝のそんな考えに引っ掛かる咲希ではない。甘くて警戒心の低い咲希だけど、決して馬鹿ではない。相手が誰であっても、秘密を漏らすことはないのである。
「うるさいな、お前が誰の未来の夫だってんだよ。この大切な手紙の内容、お前なんかに教える訳ないだろ。まだお前の正体は分からないままだし、間諜と言う可能性も十分ある」
そこまで言って、一旦咲希は口を止める。和輝の悲しそうな表情が目に入り、そうするしかなかった。落ち着いて息を整えて、続きを言う。
「いくら、信頼し合ってるって言ったってさ。わざわざ一人で読めって言われてる手紙を、頼まれたからって公開したりしないだろ?」
悲しませない為に、咲希なりのフォローの言葉だった。信頼はしている、そう言う意味の言葉であった。それでも和輝は、咲希の言葉が素直に悲しかった。




