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もうどこにも逃げられない
「咲希ちゃん、どうしたのさ」
あまりに冷たい態度を取った咲希が、和輝には不思議でならなかった。和輝は素直だから、素直になれない不器用な咲希の気持ちが分からなかった。
「どうもしないよ。いいから、早く行こう」
優しく、とても優しく咲希は和輝に言う。咲希が城で準備をしようとした時、再び大きな爆破音が響き渡った。
「何事だ!?」「今度は何?」
二人が驚いているうちに、城は炎で包まれていっていた。いや正確には、煙が湧き上がり人々は炎に包まれているように感じた。
「ん? この煙、ごほごほ? おい変態、息を吸わないように脱出するぞ」
その煙を吸った咲希は咽てしまう。しかし咲希は冷静に? その場でジャンプをし始めた。すると再び地面が開いた。
「咲希様、今度は何の御用ですか?」
そしてそこからはやはり、戦がひょっこり顔を出した。二度目ではあるが、和輝は再び驚いてしまう。
「逃げさせてくれ」
穴に飛び降りながら、咲希はそう頼む。
「はい、勿論宜しいですよ」




