逃げる場所さえなくったって
あまりにも不思議だった為、頭のいい咲希もそんな聞き方をしてしまう。和輝も不思議そうに眺めていた。
「何って、機械です。これで掘り進めて行って、下から盗むのです」
しかし戦は当然のように答えた。戦のその言葉に咲希と和輝は、不可能を感じていた。
「まあ、見ていて下さいよ」
二人の反応なんて関係ない。戦にはかなりの自信があった。
「いや、いい。遠慮しておくよ。成功したら教えてくれ」
また失敗だろうな、咲希は諦め掛けていた。溜め息を吐き、和輝を連れて地下から脱出をした。
「で、咲希ちゃん。どうするつもりなの? 俺はよく分かんないんだけどさ、殺されたりしないよね?」
今まで和輝は、戦争と言うものに実感も何もなかった。ただ今になりやっと、不安や恐怖と言うものが生まれてきたのだった。平和の中で暮らしていたからこそ、和輝の心は恐怖で溢れてしまっていた。
「そんな保証は出来ん。だが、私も頑張るよ。お前が殺されたら、嫌だからな」
和輝の顔も見ずに、咲希はそんなことを言った。その姿を和輝はカッコいいと感じ、改めて惚れ直した。当の咲希は不機嫌そうに唇を尖らせ、さっさと城に戻って行った。
「姫様、汚れてしまわれて。どうなさったのです?」
戻って来た咲希を見ると、一葉が心配そうに言った。また咲希が戦って来たのではないかと考えたのだ。
「そんなことはどうでもいい。私と変態は、ポンコツ共の対処をする」
しかし一葉の心配なんて、咲希にとっては関係なかった。迷惑を掛けたくない、その思いが迷惑となっていることにも気付いていなかったのだ。まだ……。
「駄目です! 姫様はまた、戦いに出られるおつもりですか? あんなに危険な目にあったというのに。今度こそ、何かあったらどうするのですか!?」
心配して怒鳴り出す一葉に、咲希は軽蔑するような冷たい眼差しを向けた。子供扱いされていることの悔しさ、戦いたいという想いも彼女の中にあったからだ。
「黙れ、城にいたら私が安全だとでも言うのか? な訳ないだろ。ポンコツの対処って言うのは、楓雅から逃げたようなもの。心配などするな、それよりも奴の相手を頑張ってくれ」
そんな咲希の言葉は、心配させまいと言う心遣いでもあったのだ。ただ、咲希は不器用だからこの言い方になってしまう。そして、その想いは一葉に届いていなかった。
「えっちょ、咲希ちゃん!?」
咲希と和輝は、立ち尽くす一葉の奥へと走り去っていった。




