嵐の前の静けさ
「姫様、日良殿は何をお考えなのでしょう。私には理解できません」
日良が去って行くとすぐ、一葉は咲希に聞いた。こう見えて咲希は、頭が良いのだ。だから一葉は結構疑問などを咲希に問い掛けたりする。
「まあ、時期に分かるだろう。とりあえず今は、あいつのことは心配しなくても大丈夫だ。今回は悪戯、そう考えるのが妥当じゃないかな」
その言葉は間違いじゃなかった。しかし深雪は、咲希にもっと楽しんで欲しかったんだ。その思いとは裏腹に、咲希は疲れた顔してトボトボ歩いて行った。
「咲希、ちゃん? どうゆうことなんだよ」
心配に思い、和輝が咲希を追い掛けて行った。一葉は寂しそうに、深雪は悲しそうに俯いた。
「変態のくせに私の名を呼ぶんじゃない。どうゆうことだっていいだろ? 全く、五月蝿い奴だな」
こう言っていても、咲希は話し掛けて貰えたことを喜んでいた。
「俺にも何かやることはありますか? 疲れてるなら、肩でも揉みましょうか?」
しかし素直な和輝は、その言葉に咲希は元気がないと感じた。だから、懸命に話し掛けていた。咲希が返事をしないので、遂には咲希の部屋にまで着いて行く。
「お前な、何で着いてくんだよ。変態!」
話し掛けて貰うことは嬉しかった。しかし、部屋にまで着いて来るのは嬉しくなかった。普通に鬱陶しいと感じ、咲希は睨み付けていた。
「その変態と言うのは、漢って意味ですね」
咲希の気持ちなど知らず、和輝はそんなことを言っている。笑顔にしよう、そう思い必死なのであった。




