人を轢いてしまった!
私、熱海 茜は宝くじを当てた。
夏のジャンボ宝くじ、5億円と冬のジャンボ宝くじ10億円。ラッキー続きで死ぬんじゃないかと思った。
晴れて全財産が15億円になったので、嫌ではなかったが、そこまで居心地がよかったわけでもない職場をすんなり辞め、田舎に引っ越していくことにした。
「すまんな。車出してもらってよ」
「いんだよぉ。それにしても思い切ったなぁ。宝くじ当選して田舎に引っ越していくって……。うちんとこなーんにもないど?」
「いいんだよ。眞峰町にはお前がいる。それだけでいい」
「茜……!」
友人の西浦 推華の住む眞峰町という町に引っ越すことにした。
推華は高校時代からの親友で、いつも野菜やお米などを送ってもらっているし、たまに遊びに行く。
眞峰町は何度も足を運んでいるし、いい具合に人もいるので私の理想郷とそっくりな場所であった。
荷物をワゴン車に積んで、眞峰町へ出発していく。
家は推華の家に転がり込む形になってしまったが。推華はいいよぉと快く受け入れてくれたが、推華が結婚するとかそういったことになったら出ていかないとな。
車を走らせて数時間が経過した。
「そろそろうちが見えてくるど~。降りる準備だけはしておけな~」
「あぁ」
缶コーヒーを飲み干し、降りる準備を整えようとした時だった。
「わわっ!?」
急ブレーキがかかり、前に思いっきり押し出されたかと思った次の瞬間、ドガッ!というあまり聞きたくもないような音が目の前から聞こえてきた。
推華はハンドルを握りしめたまま、茫然としていた。私はシートベルトを外し、車から降りて前のほうに行くと、女性が血だまりの中に倒れていた。
「ど、どどど、どうするべ!? オラ人間轢いちまった!」
「落ち着け! 逃げたりしたらそれこそだめだぞ! まずは救急車だ! あと警察……」
と、ノエカがスマホで救急車を呼ぼうとしたときだった。
その血だまりに倒れていた女性がむくっと起き上がった。
「「えっ!?」」
思わず驚きの声が出てしまう。
「あら、ここはどこかしら……」
「な、なんで起き上がれてるんだ!?」
「ん? あなたたちここでどうしたの? 体が妙に痛いわね……。”ヒール”」
頭から血が出ている女性。
ヒールと唱えたその瞬間、傷が見る見るうちに塞がっていっていたのだった。その光景を見て唖然とする私たち。
「ところであなた方ここはどこかしら」
「え、えと……眞峰町っていう町っスけど……」
「聞いたことないわね……。どこの国?」
「日本……」
「どこよそこ」
な、なんだこの人。
「だ、大丈夫だか? オラこの車でアンタ轢いちまったけんど……」
「……車? なにそれ」
「えっ、知らないんか!?」
「……なにその四角い箱!?」
「そ、そんなに驚くもんか?」
「と、とりあえず救急車と警察を……」
「そんなのはどうでもいいからこの箱を教えて頂戴! なにこれ! なにこれ!」
と、車を見てものすごくはしゃいでいる様子だった。
「じゃ、じゃあ乗ってみるか? 助手席に……」
「乗れるの!? 乗りたい!」
そういって、車を初体験する女性。
「馬がなくても走るのね!」
「馬車っていつの時代だよ……」
「変な板までついてるし! なんかすごいところに飛ばされちゃったわ!」
「カーナビでそこまではしゃげるのすげえな」
ものすごくはしゃいでいる様子だった。
「怪我は大丈夫だか?」
「えぇ。回復魔法で治したもの。得意なの、回復魔法」
「……回復魔法?」
「え、知らない?」
「……魔法って存在してんの?」
「えっ!?」
さっきの傷が見る見るうちに回復していく現象……。あれがそうなのだろうか。
「……おかしいわね。なんか違和感が」
「……なぁ、もしかしてあんた異世界ってところから来たのか?」




