解放する
物理的に、エドワード陛下と離れるため、何をすべきか考えた私は、まず、お父様に手紙を書くことにした。
しばらく公の場で一言二言交わすだけの関係になってしまった、私と家族。
今の私に貴族としての利用価値があるかは、微妙なところだけれど。
あとは、家族の情を信じるしかない。
これで無理そうなら、いっそ、私個人の資産を持って、マーサたちと一緒に旅に出ようかしら。
イーディスの美味しい料理でレストランを経営するのも楽しそうよね。
「……ふふ」
「リュゼリア様?」
未来を想像し、急に笑い出した私に、マーサが不思議そうな顔をした。
「いえ、何でもないわ。それよりも、手紙の件、お願いね」
「はい。かならずロイグ公爵閣下にお届けできるよう、手配しますね」
「ありがとう」
夕食は、自室で摂ったし、お風呂にももう入った。
ひとまず、今日は寝ようかしら。
そう思っていたときだった。
「……王妃殿下」
神妙な顔をして、メイカがやってきた。
「どうしたの?」
「その……エドワード陛下がお見えです」
!?
なんですって……。
あんなにはっきり、きっぱり言ったのに、まだ伝わらなかったのかしら。
「今日は、もう遅いから明日にしてもらえないか、交渉してくれる?」
「それが『重要』な話だから、どうしても今夜話したいと」
重要、な話ね。
少しは私の想いが伝わった上での話だったらいいけれど……。
国政の話、は重鎮たちと話すだろうし、絶対私的な話であることは確実。
その上で、重要、ということは。
頭の中で、ある一つの可能性が浮かぶ。
もし、そうだったら。
……いえ、とりあえず、話を聞いてみないことには、判断ができないわね。
「……わかったわ。お通ししてちょうだい」
「かしこまりました」
メイカが深く腰を折って、礼をする。
その姿を見送ってから、はぁ、と深く息をついた。
見苦しくない程度に、支度を整え、エドワード陛下と対面する。
「ごきげんよう、陛下」
「……あぁ」
エドワード陛下は、何か書類を持っていた。
「今日、君に言われたこと……、私なりに考えた」
「!」
良かった。ちゃんと考えてくれたのね。
「ありがとうございます」
「……それで」
エドワード陛下は、すっと、書類を、机の上に置いた。
「……これは」
その書類を見る。
今の私が一番望んでいたものだった。
「君を、解放する」
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