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恋心に苦しむ王妃は、異国の薬師王太子に求愛される【WEB版】  作者: 夕立悠理
一章

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考えてない

 解放する。

 そう言われてさまざまな思い出が、私の中を駆け巡った。


 エドワード陛下と出会ったこと。

 中庭で手を繋ぎながら散策したこと。

 王妃教育に耐えられそうにない、とこぼした愚痴を黙って聞いてくれたこと。


 ——でも、全ては過去のこと。

 過去になってしまったこと。


 私は、ペンを持ち上げ、そこに署名をしようとしたときだった。


「ちょっとまった!!!」

「なりません、ロイズ様!!!」


 聞き覚えのある声と、マーサと思わしき声に、手を止め、振り返る。


「王妃殿下、緊急事態とはいえ、御部屋に無断で入ったこと、大変申し訳ございません」


 振り向くと、エドワード陛下の側近……ロイズ殿が、滝のような汗を流しながら、平伏していた。


「緊急事態……? どうしたの、ロイズ殿」

「実は、書類整理をしていたところ、ある書類が、行方不明になっていることがわかりまして」


 私は、机の書類に視線を落とした。

「それは議会での承認を得なければ、決して使えない書類なのですが、重要な書類なので防犯の観点より、城中を探しております」

「……そういうこと」


 確かに、この書類——王と王妃の離婚届は、議会の承認がないと使えない。


 持ってきたということは、承認済みかと思ったのだけれど……。


「エドワード陛下」


 私がその名を呼ぶと、今まで黙っていたエドワード陛下はびくり、と体を揺らした。

 まるで、叱責を恐れる子供みたいだわ。


 怒りはしないけれど。

「ロイズ殿、陛下はお疲れのようよ。部屋までお連れしてくれる? それから、お探しの書類はこれかしら」


 私は立ち上がり、平伏したままだったロイズを立たせ、書類を渡す。


「はっ! 王妃殿下には、大変ご無礼を……」

「いいわ。あなたに免じて今回は許します」


「……リュゼ——」

「マーサ、お客様のおかえりよ。間違えて大事な書類が部屋に入らないように、きちんと、お見送りしてちょうだい」


 すがるような瞳で、エドワード陛下が私の名前を呼びかけたけれど、それを遮るようにマーサに指示を出す。


「……はぁ」


 残された私はため息をついた。

 承認を得ていない書類を持ってきたということは、エドワード陛下は、きっと、私を試そうとしたのだ。私が、彼に縋るかどうか。


「——私なりに考えた、ね」


 まさか、こんなに何一つ私のことを考えてくれてないとは思わなかった。


 結局、エドワード陛下は自分やアイリが一番大事で、私のことは本当にどうでもいいのね。


 落ち込みかけた気分を、頬を軽く叩いて、吹き飛ばす。

 そうよ、別に誰かに溺愛されなくてもいい。

 私が私を溺愛すれば、それでいいのだから。


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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恋心に苦しむ王妃は、異国の薬師王太子に求愛される
お読みいただき有難うございます!
運命は、手に入れられなかったけれど
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― 新着の感想 ―
[一言] エドワードはどうでもいいけど、正直アイリ(多分薬師も)の思惑通りに事が進むのは心底気に入らないので、王妃様には是非独り自由に生きる幸せを掴んでほしい あ、マーサは一緒にいてもいいかw
[一言] エドワード君はアイリの掌の上…(笑)
[良い点] 『愛と恋』のフィルターが外れた、リュゼリアの見解がドンピシャですね 間違いなくエドワードは何にも考えてないし、自身のプライド+アイリのラジコンですね [一言] ロイズが間に合ったか…惜しい…
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