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初依頼 終

依頼が始まってから数ヶ月が経過した。そして今日がこの依頼最後の日だ。


「いやー『剣帝』様のご指導で我が軍の兵士がたいへん強くなりました。団長のジルまで見て頂いて本当に感謝しきれません。なんならこのまま専属教官として働いて頂いても良いのですが、、、」

「ああ。すまないがそれは断らせて頂く。俺は冒険者。色々なことをしたいんだ。また指導の依頼なら受けてやるから、それで許してくれ。」

「め、滅相もございません。不躾な質問、失礼しました。」

「いや、大丈夫だ。」


団長のジルは毎日来た。最近では『剣帝』と打ち合える回数も少し増えていたが、結局地面を転がされていた。


「よしお前達、今日が最後の指導だ!気合い入れて素振りと模擬戦をするぞ!」

「「「はっ!!!」」」


いつものメニューをこなしていく。まだまだ剣技が甘い奴がいるのでそれを修正していく。


「もっとこう、重心を落とすんだ。それで剣をしっかり握りつつ、手首は柔らかく。力が入り過ぎないように。」

「は、はい。」


ふむ。まだまだだな。こいつは初めから下手くそだったが、結局最後まで及第点を与えられるレベルまでは上手くならなかったか。


よし、そろそろ素振りも終わりだな。次が最後の模擬戦だ。


「素振り終了だ。次は模擬戦。いつものようにシンとやれよ。」

「「「はっ!!!」」」

「団長は俺とだ。」

「はっ!」


すっかりジルの教官になったな『剣帝』。まあ、あれだけボコボコにしてればそうもなるのか。


さてと、最後ぐらい俺に勝つ奴は現れるんですかねぇ。











【Side 団長ジル】

今日こそは『剣帝』に勝ちたい。いや、勝つ気で来た。私が地面を転がった回数は数え切れないが、その数だけ強くなった。今日がその成果を発揮する時!


「来いよ。」

「はっ!はあああああ!」


私の身体能力はとても高い。以前はこれが頼もしかったが、今では扱いずらいだけのスキルだと思っている。速すぎて自分でも上手く認識が出来ないからだ。それ故に私が出した解答は、、、


ガンギンガンッ!


移動速度だけ少しスピードを落とすことだった。ただでさえ高速で戦闘している最中に高速で移動すると逆に隙になってしまう。それで何度もやられた。だから自分が制御出来るだけの速さで下がったり詰めたりすることで、対応されることは増えるが、逆に自分も対応出来るようになったのだ。


一撃二撃三撃。高速で身体を動かし、剣を振るっていく。もっとだ。もっと私は速くなれる。もっと速く。速くッ!


「はあああああ!!!」


『剣帝』は難なく防ぎ、更には攻撃までしてくる。いつものことだが、何だか理不尽に思えてくる。私は一生懸命に剣を振るっているのに、きっとこいつは余裕の表情で戦っているんだ。許せん。許せん。


「うぉぉぉぉぉぉ!!!」


上段からの一撃。防がれる。弾かれた隙に横薙ぎの攻撃。私は剣の反動に逆らわず後ろに飛んで攻撃を躱した。


「中々良くなったじゃないか団長さんよ。」

「はぁはぁ。ありがとう、ございます。」

「よし、今日はこの辺にしておこう。この後お前はシンと戦え。それで自分の成長を確かめてみろ。」

「はっ」







【Side シン】

残念ながら俺に勝てる兵士はいなかった。だが、皆ある程度は成長していて、段々と善戦出来るようにはなっていたのだが。


「シン!最後に団長と戦ってくれないか?」

「ああ。やってやろう。」


ついに来たか。初日は勝てたが、今日はどちらが勝つのだろう。頭脳の予測ではジルが優勢のようだが果たして。


やる前に兵士達に演説でもしておこう。


「皆、今日まで良く頑張った。最後は俺とジル団長の勝負で決着を付けようと思う。その前に。誰か鑑定を持ってる奴はいるか。俺を鑑定してみてくれ。」

「はっ。では私がやらさせて頂きます。」


オリハルコンスライムを鑑定させ、更に偽装することで嘘の鑑定結果を表示させる。


「なっ!」

「おい、どうだったんだ?シンさん、どんなすげぇスキルを持っているだ?」

「ない、、、。」

「えっ?何だ?何だったんだ?」

「だから無いんだ!シンさんは何も、剣術系スキルも、ましてや身体能力強化系スキルもない!この人は、、、魔法型だ!」

「「「な、何だって!?!?」」」


名前 シン

種族 人

年齢 178歳


スキル

賢者

魔力増大

不老


まあ、俺がその辺にいる一般人に毛が生えた程度の身体能力であり、更に剣術系スキルを持っていないのも事実だ。まあ、実際はスキルなど何も持っていないのだが。


「そうだ。俺はお前達よりもスキルで劣っている。だが、鍛錬すればここまで強くなれるというのが証明されたということでもあるのだ。言わば俺はお前達の終着点。俺の戦い、しかとその目に焼き付けておけ。」

「「「お、おおおおおお!!!」」」


「さて、始めるとしようか。」

「シン。まさかお前程の者が剣術系スキルを持っていないとはな。だがしかし。本気で勝ちに行かせて貰うぞ。」

「ああ。望むところだ。」


シンとジルの戦いが今始まる、、、。











「試合開始!」


「はあああああ!」

ジルが突っ込んでくる。相変わらず速い、が、何とか攻撃を受けきっていく。


ギィン!スっスっギィン!


受け流し、躱して躱して、受け流す。俺が攻撃をするタイミングはない。ジルに隙はあるのだが、俺にスピードが足りないためだ。


「シンさん、スキルもなくジル団長の前に立っているのかよ、、、。有り得ねぇ。」

「ああ。まさに『人外』。人の身でありながら人間を超えてやがる。」


ちっ、やはり剣だけで勝つのは不可能か。仕方ない。魔法を使おう。


選択したのは風魔法。小さな突風を発生させるだけの魔法だが目に当てれば効果がある。


ジルが振りかぶる。その瞬間に魔法を発動。思わずジルは目を瞑ってしまった。ジルは剣を振り抜くが当たらない。前に踏み込みつつジルの攻撃を躱したシンはジルの腹に剣を当てる。


ズドンッ!


「グッ……」


ジルは衝撃で下を向いた。その隙を逃すシンではない。斜め上から頭を狙った攻撃、、、


が、何とかジルの剣が間に合った。明らかにジルの体勢は悪いが身体能力がその差を覆す。シンは押し切れず、ジルは転がって体勢を立て直した。


「はあ、はあ、はあ。」

「……………。」


魔障壁でジルの剣を止めることも出来たが、これは模擬戦。あえてそれはしなかった。今ジルの剣が間に合う可能性は五分程。であるならばジルが防げるならジルの成長が分かるし、防げないならそれまでであったということだ。


戦いはしばらく続いた。たまにジルがピンチに陥るがその度にジルは何とか切り抜けていた。だが、それももう終わりのようだ。


「ぐっ、」


ジルの足に一撃が入る。膝をついたジルは咄嗟に剣で頭上を守ろうとするが、シンは剣を振り下ろさず、下段から蹴りを放った。


ドンッ


完全にジルが倒れ込む。それでもまだ剣で頭を守ろうとするが、流石にシンの剣が頭を突いた。


ガツン


「そこまで!勝者シン!」

「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

「シンさん勝っちまったよ!」

「ああ!ほとんど剣だけで戦ってたな!」

「「「シーン!シーン!シーン!シーン!」」」


「くっ。また負けてしまった。」

「いや、ジルはよくやったよ。俺に魔法を使わせたんだからな。誇っていい。」

「そんなの誇れんよ。シンは剣術系のスキルも身体能力強化系スキルも持ってないらしいじゃないか。どちらも最高に近いものを持ってる私が負けるなど、恥でしかない。いや、シンの努力を褒め称えるべきであるのか。まあ、どちらにしても負けは負け。対戦ありがとうございました。」

「ああ。ありがとうございました。また強くなったら相手してやるよ。」

「ああ。」


俺はジルに手を貸して起き上がらせる。と、その瞬間、兵士達が拍手をした。


「いい戦いだったな!」

「ああ、すげぇ戦いだった。」

「団長!次は勝ってくださいよ!」

「負けっぱなしは柄じゃねぇですからね!」

「俺たちの仇、いつか取ってください!」


「、、、ああ。任せておけ。」


「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

「「「団長!団長!団長!団長!」」」



こうして『王国騎士団への指導』は幕を閉じたのだった。

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