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9/42

9デート


 なぜ、俺とユリがデートすることになったのか?

 そのことをいまいち理解できぬまま、週末を迎えてしまった。


 そして、何気に服装(おしゃれ)を気にしている俺。

 

 いやいや、待て待て。

 相手はご近所のお姉さんだったユリだぞ。

 何をいまさら。何を意識するんだって話だよな。


「・・・・」


 鏡に映る自分の顔に緩みがみえる。


 いやいや。ユリと俺に何か展開が起きるとでも!?

 なにを期待しているんだ。しっかりしろ、俺!

「はぁ」

 こうしてもいても(らち)があかない。

 朝起きてから、こうして姿見(かがみ)の前に立っていたところで、時間が待ってくれるわけでもなく、ユリが待ってくれるわけでもなく…

「良ちゃん、もう家出るよー! 起きてるー?!」

 扉のすぐ近くから声がする。このまま返事をしないままでいると部屋に侵入してきそうな勢いである。

「待てっ!起きてる!今、出るから!!」

「早くー!」

「はいはい」

「”はい”は、1回でしょー!!!」


 再び、自分の顔をみて、引き締める。


「ユリ、お待たせ」

 扉を開けると、ユリのご不満な顔の登場である。

「良ちゃん、女子を待たせるなんて、ダメだぞ!

 今回は私だけだから、いーけど。本命の彼女とかだったらケンカの原因になっちゃうんだからね。

 女の子っていうのは、意外と面倒くさい生き物なのよ。

 気にしてない、なんて言うけれど、だいたいは気にしているから!!」


 はい、身をもって、そのことを理解しています。


 とは言えないので、心の中で言葉を吐きながら

「ごめんってば」

「まぁ、初回だからこの辺にしとくわ。次はないからね!」

 次があるんですか!?なんて驚きつつも、顔の表情を変えない俺を褒めてほしい。

「とにかく、さぁ、お出かけっととと、失礼。デートに行きましょう!」

「・・・デートとかって、ノリで言ったろう」

 言葉を訂正したところから指摘をすると

「うっ。まぁまぁ。デートの方がテンション上がるでしょう?」

「ユリ相手に?」

「くぅー!生意気な子になって、お姉さん悲しいわ」

 どうみても最初に悔しそうな叫びをあげてから、そんな言葉を吐かれたところで。

 それに完璧なる棒読みである。三文芝居もいいところだ。

「まぁまぁ。これから楽しいことが待っている!はず?だから、気を取り直して、ね?」

 俺にあまり効果がなかったため、方向転換して、今度はあやすように甘い声をころころと鳴らす。

 若干、ユリの言葉に不安を覚えつつも、こんなことで無駄に意地みたいなもの張ったところで何にもならないので、諦め半分。

 上目遣いになりつつ少し不安顔のユリをみて、しょうがないなぁと苦笑が漏れてしまう。

「そうだな」

 これではどっちが大人だか分からない。

「ふふっ。よかった」

 でも、それは嫌な感じではない。どちらかというと好きな感じかもしれないとも思う。

「さぁ!出発よー!!」

「はいはい」

「だから、はいは」

「「一回」」

「だろ」


 ひとつ、間が空いて、同時に笑った。

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