表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非公開  作者:
PR
10/42

10


 電車に乗って約30分。

 都心にある映画館に到着した俺たち。

 プランはなにも聞いていなかったが、さすがにここまでくれば分かる。

「んー」

 週末とあって家族連れも多く行き交う場所で、連れてきた張本人は<上映中>と書かれたポスターを目の前に唸っていた。

「なに悩んでいるんだ? 観たい映画があったからここに来たんだろう」

 と言えば

「なにを言っているのよ! デートと言えば、映画が定番じゃない!」

 間を置かずして返事をするものの、ユリの視線は・・・


「ねぇ、ママっ! わたし、まほーせんしプリチアになるんだ」

「そうねぇ。そうしたら、ママのこと、助けてくれる?」

「うん。ぜったいたすけてあげるねっ」


 今、幼児向けアニメとして話題になっている『魔法戦士プリチア』がある。アニメなどに興味がない俺でも分かるほど、社会的な現象になっていると言っても過言ではないと思う。

 さきほどの親子の会話に反応しつつも、再び、ポスターに目を戻して、唸りが深くなるユリ。


「別に俺は”プリチア”でもいいけど」

 助け舟を出したつもりだったが

「良ちゃん。違うってば。そりゃー正直…観たいけど…わたしが悩んでるのはコレとコレ」

 勘違いしないでよね!と言わんばかりに、指刺されたポスターは、今話題になっている『パーフェクトショーマン』いわゆるミュージカル映画に、『キロクを止めるな!』と言う、口コミで単館から全国区に広がったギャグ映画?らしい。

 あまり映画に詳しくないし興味もないので、大まかなあらすじどころかテレビや人づてで聞いたぐらいでの、薄い情報しか持っていない俺の認識がずれている可能性はあるが、そんな俺でも知っているのだから、どちらもすごい作品なんだろう。


「どっちでもいいけど?」

「でしょうねぇ。自主的に観てないっぽいもん」

 ため息まじりに言われたことは当たっていた。

「よく分かったな。でも、人に誘われれば観るぞ?」

 そうそう、だから、今もここにいるじゃないか。

 文句っぽいこともこぼした記憶もないし、嫌な気持ちにもなっていないので、なにを観るんだろうーぐらいに思っているぐらいだ。だから、そんなことはあるはずはないが。

「むむぅ。先行きが大変そうだわ」

 難しそうな顔をして言われたのが何故なのかは分からない。

 先行きって、なんの先行きなのか。きっと、今、聞いたところで、教えてくれるとも思えないので、心の隅に疑問はしまった。


「とりあえず、今まで、きっと観たことがないであろうミュージカル作品にしましょう!」

 頭をひとつ捻って、思案したあと、やっと作品が決まった。

 ちなみに、ミュージカル作品ははじめてである。

 ユリは我が道を行くようにも見えがちだけど、意外と人を見ているのかもしれない。


『お客様、学生さんですか?学生証をお願いします』

「はい」

『確認いたしました』

 その場で観る映画を決めた俺たちは、窓口でチケットを購入している。

 しかし、俺の学生証を確認した後も、店員さんは、何か言いたげな視線をもって、その先に進まない。そして、意を決したように口を開くと、控えめに

『・・・・あの、もうお一方の、身分証明書等は?』

 あ。忘れていた。もはや俺にとっては見慣れてしまったユリの童顔。

「あっ、とー、実は…」

 こう見えても大人なんですよー。と言いかけて、口をつぐんだ。

 いや、待てよ。もしかしたら、この童顔を生かして観てたりするのかもしれない。

 ユリの様子をみてから判断しようと思っていると

「私は一般でお願いします」

 怒ることもなく、照れることもなく、歴然と答えていた。

『…かしこまりました。では、お会計はーーーー』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ