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 どこか古めかしさを残す街に現れた近代的な建築物。

 深夜にも関わらず、周囲は(こう)々とライトが輝いていているのに、人の気配がまったく感じられず、しんとしている。それは一層、冷たさを感じさせるには十分であった。


 こんなにも温もりを感じる光に溢れているのに、すごく寒くて、寂しい。

 色々な考えた結果ここにいると思ったけど、正直、直感に近いところもある…本当にここにいるのだろうか?


 ここは最近、駅前開発によってできた他大学の分校キャンパス。

 通りからすぐに目に入るのは壁一面のガラス張りになっており、中の様子がよく見える。その中にカフェテリアのスペースもみえ、日中は多くの学生が集まっていることがすぐに想像がつく、けれど、この時間はまるで人そのものが忽然(こつぜん)と消えてしまったように見えて…現実に存在しているのだけど、明かりで区切られた別世界のようにも感じた。

 そのことがさらに自分の足を進めてきた結論を、自信を、揺らし、削っていく。

「ちっ・・・」

 思わず舌打ちをする。

 次から次へと浮かぶ悪い考えを頭から追い出すように、頭を左右に振りかぶった。


 ここがダメなら、違うところを探すだけだ。

 探す前から、なにヘタレってんだよ!



ーーーありがとぅ、良ちゃん

ーーー1つを1人で食べるより、1つを2人で半分こした方が、美味しい気持ちも半分こできてイイよね。

ーーーそうそれっ!それが楽しいの!っていうか、嬉しい!の方が濃いかなぁ


 振り払ってできた脳内スペースに湧き上がるように出てきたユリの記憶は再会してからが多いけど、それだけじゃない。


ーーーそ、それ以上っち、近づいちゃダメだかっらっ

ーーーヴゥ…ワンワンッ

ーーーりょ、りょうちゃんをっいじめるなんてダメっ


 唸る大型犬と幼い頃の俺との間に立ちふさがったユリは小さくて大きかった。

 でもよく見ると震えていて、声なんかは今にも泣き出しそうなくらいに裏返っていた。


「ふっ」


 詰めていた息が溢れたのか、笑いが漏れたのか、どっちが先かなんて、どっちの感情が先かもわからない。

 でも、これだけは言える、笑えるなら…俺のスペースに余裕はまだある。

「 ・・・臆病で強がりな、手のかかるお姉さんを迎えに行かなきゃな」

 本人に言ったら、顔を赤くしながら否定しそうだ。自然と口元が緩む。

 そのまま、大きく深呼吸をしてみると、肩の強張りが抜けていくのを感じた。


 この場についてから、固まったように動いていなかった足は、踏み出せば、なんてことない。軽かった。

 建物内に入ることは難しいが、建物周辺などの敷地に立ち入ることは簡単なキャンパスではあった。それは、キャンパス自体、ある程度密集はしているけれど、住民も利用できる施設を併設している地域密着型とも言える作りである。そのため、建物と建物の間の小道に制限はなく、キャンパスと統一した作りでキャンパス内を歩いているように見えて、実のところ、街中にある路地のようになっている。

 だから、こうして、深夜にも関わらず、明るくそして、立ち入りがしやすい場所なんだ。

 また、最近できたこともあり、近代的で整備されていて、街中の存在としては不思議に思えど、不気味さは感じない。


 そう。ここは”明るくて”、”綺麗”で”不気味でもない”場所。

 お金などの持ち合わせがない人間でも立ち入ることのできる場所。


 徒歩圏内で、これほど、臆病な人間に優しい場所はないだろう。


 ユリはきっと、ここにいる。・・・はずだ。


 入り口から建物の裏へと通り抜け、外周の小道を進む足を早める。

 立ち入ることができる場所をくまなく足を進めて、確認するけれど、見当たらない。

 

 ドクドクと胸を打つ音がやけに耳につく。


 ここにはいないのか?

 でも、ここ以外になると、かなり薄暗い路地を歩いて移動しなければならない。

 果たして、歩いていくだろうか?

 勢いで行ってしまった可能性も捨てきれないし、遠くに行っているのならば、移動範囲を広げなくてはいけない。が、この生活圏外になってしまうと目星もつけられない。

 ・・・そうなれば、自宅で待つほかないかもしれない。


 この明るい場所で、最も可能性の低い場所が最後残った。

 施設と施設の隙間にある移動用か、休憩スペースか、中2階のような場所に繋がる階段に近く。

 この場所の中では薄暗く不安に感じてしまうけれど、駅前や広場などに比べれば明るい。


 一抹(いちまつ)の望みをかけながら階段を登り、その場所に立つ。

 街灯などが足元に広がっているが、この場所はその漏れた灯りで、ほのかな明るさを感じるのみ。

 肉眼でなんとか見えるけれど座椅子のような石が点在しているだけで…見当たらない。


 どこにいるんだよっ。


 立ち入ることのできない建物の前まできて、折り返す。

「っ」

 右手を前髪から後ろへと髪を荒く搔き上げながら、視界を覆う。

 自ずと足は止まる。


「ユリのバーカ」


 やりきれない気持ちから出た言葉は、子供(ガキ)すぎて、笑えない。


「…!」


 変な音が聞こえた。

 手を外して、その気配をたどり目線を向けると、座椅子があるだけ?

 違和感が拭えず、近づいてみると、座椅子だと思っていた一つの影と目が合った。


「りょ、りょーちゃんのいじわるっ」


 一度会った目線をウロウロと彷徨いさせつつ放ったユリの言葉に、思わず笑ってしまったのは許してほしい。

 ・・・別に、安心したとか、気が抜けたとかじゃない、、、はずだ。

人生はじめてぐらいの勢いで、謎の高熱(悪名名高いインフル)にやられてました。

体調快復に2週間以上費やしてしまい、マスクとか予防だけではどうにもならないことを身をもって痛感しました。

寒い日々が続きますが、なるべく体調に気をつけていきましょう。

これから巻き返すつもりで更新目指します。

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