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まさかのユリの思いつきによる行動により、こんなことになるとは思ってもみなかった。ユリとの生活は、予想がつかないことばかりだ。
「ごほん。大変、申し訳ありません。他のお客様にご迷惑になるので、こちらの通路での待機はご遠慮いただいております」
そうお店のお姉さんに言われて、慌てて移動した俺たち。
「ここであったのもご縁だし、お茶でもしません?
良ちゃんの大学生活の話とか聞かせて欲しいなぁーって」
とユリが提案すれば、あゆかはここぞとばかりに「もちろん、何でもお話ししましょう!」と意気込んでくるし、宇汐は「よろこんでー」となり、俺に拒否する手段は残っていなかった。
とりあえず、近くにあったコーヒーチェーン店”スターフロント”に入った。
「改めまして、ユリって言いますー。良ちゃんと一緒に住んでますって知っているか…
んーと、年上扱いとかあんまりされてなこなかったから、ユリって気軽に呼び捨てしちゃってねぇ。敬語もなしの方法で♪」
席に着いたこともあり、少し落ち着きを取り戻したのか、年上らしくというか幼い頃のお姉さんらしさが出て、その場を仕切るユリ。
「えっと、じゃあ、ユリ…。いや、無理、呼び捨てになんかできないですよー
なるべくフランクに話すので、それで許してくださいー」
「俺も同じくですー」
二人とも白旗のごとく、手を上げていた。
「うー。まぁ、そうよねぇ。どうせなら、久しぶりの大学生気分味わいたかったのにぃ」
ユリは少し渋い顔をしたけれど、状況が状況なだけに諦めたようだった。
そのあと、大学生活のあれこれを聞かれて、今まで、ぼやかしていた部分を主にあゆかに暴露された。また、日々の些細なこと、授業中に寝てたとか、当てられて驚いて缶コーヒーをこぼしたとかなどを言われてしまって、少し気恥ずかしい部分もあったし、それを聞いてて楽しいのだろうか?とも思ったけど、
「そうなの?ふふっ」
ころころとユリが笑っていたので、まぁ、いいか。
「ふー。もう、楽しくて、色々聞いてばっかりでごめんねぇ」
「いえいえ」
主に喋っているのはユリとあゆかだ。俺と宇汐は、たまに話を振られて「あぁ」だの「そう」だのと短い言葉を入れるぐらいの存在である。母や叔母などでも見てきたし、噂にも聞いていたが、女子って本当にオシャベリが好きなんだと実感する時間でもあった。
「さらに、突っ込んで聞いちゃうんだけど」
「はい。どぞどぞー」
「あゆかちゃんと、宇汐くんは付き合ってたり?」
「え、付き合ってません」
間髪入れずに、否定するあゆか。
「ぐっ、ゲホッ」
まさか、そこで自分の名前が出てくると思っていなかった宇汐は流れ弾に当たったように急にむせ出した。
「じゃ、じゃあ…むしろぉ、良ちゃんとお付き合いとか、してるっていうことはー」
それがユリの、今までの会話の本題でもあったんだろうとすぐに察せた。
なんせ、引きづられるように人気のない所に連れて行かれた俺にガッツポーズをしてきたユリだ。
「いやいや」
「ないない」
あゆかと俺の否定した声が同時に出て、お互いになんとも微妙な顔をすることになった。
「えー! 息が合ってそうなのに。ちぇっ」
それはそれはとても残念そうに言語化した舌打ちをされた。




